第9話 The Small tears

自分の恥ずかしさに顔から火が出そうになる。まさか、俺を護衛するためだったとは。でも待てよ。


「おい、護衛って言ったよな。じゃあ何で勝手に帰ろうとしてんだよ!俺を一人にしたら危険じゃねえか。俺は今、命を狙われてんだろ!」


「まあ、そうなんだけどネ。実は、私の宇宙船に秘密兵器を忘れてきてさ。ちょっと目を離すくらいなら大丈夫だと思うし、取りに行こうかなと思ってただけだヨ」


 秘密兵器か。確かに俺の命がかかっているのだから秘密兵器でも何でもあったほうがありがたい。“重力解除装置”なんてものを持っていたほどだから、その秘密兵器とやらは余程のものと見た。


「なるほどよくわかった。じゃ、早速その秘密兵器を取りに行こうぜ!」


「まさか、私の宇宙船までついてくる気?」


「当たり前だろ?」


 こちとら未来がちょっと目を離した隙に殺されてしまう、なんてこと容易に想像できる。まだまだ若いのだ。高校生で人生が終わりなんてまっぴらごめんだ。


「はあー。あのね、普通は女子の家に行くことは当たり前のことじゃないの。いきなり女子の家に押しかけようなんて、何考えてんの?そんなんだから高校生にもなって彼女の一人もいないんだよぉ」


「は?今、俺に彼女がいないのは関係ないだろ!しかもお前は宇宙人で性別なんてあるのか?それにお前の場合は家じゃなくて宇宙船だろうが!」


「確かに私は宇宙人だけどぉ、今は赤宙未来っていう女の子なんだよぉ。」


 そういって人を小ばかにするような顔をしてみせる宇宙人に対し、命が狙われているという緊張感でとどめていた怒りが漏れ出す。


「あー、お前さ。前から思ってたんだけどその話し方鬱陶しいからやめろ。なんで語尾を伸ばすんだ!」


「んー。そこまで言うなら別にいいよ。ただ交換条件がある」


「何だ、言ってみろ。こっちは命が掛かってるんだ。本来ならこんな不毛な会話してる暇はないんだよ!」


「君の言うこと聞くわけだから私の言うことも聞いてもらわないとね。ま、それに関してはおいおい決めるとして、君は先に帰ってて」


 非常に不服だが仕方がない。下手なことを言って刺激する方がまずいと思うくらいには冷静になってきた。相手は宇宙人なのだ。何をするかわかったものではない。


「わかった。それでいいよ。でも俺の命が狙われているんだってことはしっかり頭に入れといてくれよ」


「はいはい。わかってるわよ」


 明らかに今のやり取りで空気が悪くなった。やはり、宇宙人と分かり合うことはできないのだろうか。


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