第5話 She Is Secretive

「んー、どこから説明するかなぁ。まず、君は宇宙ってどのくらいの大きさがあると思う?」


「は、宇宙ってどのくらいとか、一言で言えるものじゃないだろ。今でも膨張してるって話だし」


「そう。宇宙は広大だわ。あなたの想像の一千万倍はネ。そんな、広いって言葉では足りないほど広獏とした宇宙なわけだけど、それだけ広いと当然のことながら生物もそれだけ多く生息してる。つまり、君から見た私がそうであるように、また私から見た君がそうであるように、宇宙には自分たちの星以外の生物がいるというわけなの」


まるで先生が生徒に新しい知識を授けるように、優しい口調で説明は続く。


「待ってくれ、俺の想像の一千万倍かどうかは別として、宇宙がめちゃくちゃでかいってのはわかる。でもな、宇宙には色んな生物がいますなんていきなり言われて納得できるはずないだろっ」


「納得するも何も、現に私がここにいるじゃないか。私こそ君にとっての宇宙人なのサ」


「宇宙人って言われても納得できないね。大体、お前はどこからどう見ても人間じゃないか。宇宙人はみな人間と同じ形をしているのか」


「この姿は本当の姿じゃないヨ。おかしなことを言うなぁ。そんなの当たり前じゃないか。地球はまだ他の星の生命と公にコンタクトを取ったことはないんだろう。確かに個人で他の星の連中と接触したやつはいるかもしれない。君みたいにネ。でも普通はそんなことはしない。宇宙人の存在が知られたらどうなると思う。ほぼ確実にパニックになるだろうね。それだけじゃない、その宇宙人の科学技術を巡って争いになるだろう。だから私みたいな宇宙人はその星の生物に擬態してるってわけ。もしかして、私の本当の姿が気になってたりして」


「気にならないわけないだろ。正体不明のやつと喋ってるなんて気味が悪い」


「たぶん私の本当の姿を見たら気絶すると思うなぁ。運が悪ければ気絶じゃなくて、ショック死するかもよ。それでも見たいの」


「そんなこと言われると俄然見たくなってきた。お前が般若みたいな顔してても俺は大丈夫だ」


もちろん怖い思いもある。しかし、目の前に人間に擬態している宇宙人だと名乗るやつがいて、正体を明かしてくれるというのに見過ごすことはとうていできない。結局のところ人間は好奇心には勝てないのだ。


「全部見せたら本当に死んじゃうかもしれないから、腕だけネ。私としても君に死なれるわけにはいかないの。じゃあいくよ」


そう言って腕を出した。それは透き通るように白い肌だった。


「すごく白い腕してるんだな。まるで透き通っているような……。いや、ほんとに透き通ってないか。おい、これは確実に透き通ってきてるぞ」




白い腕は透明となり、最後には完全に消えた。

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