第4話 Confronting the Classroom
時間は4時半を周った。昨日、前田の映像が作り物である証拠を探しに廃工場に忍び込んだ。しかし、作り物である証拠どころか、本物の宇宙人だと言い張る謎の少女に出会ってしまった。一夜明けてゆっくり考えてみると、やっぱり嘘なのではないかと思えてくる。埃で一面の床に地下室まで通った足跡がなかったのは、あの部屋へと至る別の道があったのかもしれない。あの部屋自体隠されていたのだ。他にも隠された通路があったって不思議じゃない。目の前でいきなり消えたのだって……。どういう仕掛けか今はわからないが調べれば何かわかるはずだ。あのときは、色々混乱してあの部屋をしっかり調べることが出来なかった。今日調べれば何かわかるかもしれないと言いたいところだが。
「あのさ、聞いてるのか。お前に言ってるんだぞ。あの廃工場に入った生徒なんて本校始まって初めてのことだ。本当になんてことをしてくれたんだ。この、学校の恥さらしが」
あの自称宇宙人が勝手に帰ったというか消えた直後に警官が現れて見つかってしまったのだ。もちろん学校に連絡がいかないはずがない。朝一番のホームルームで放課後に残るように言われてしまった無視して帰ろうかと思ったが、さらに面倒なことになりたくないため大人しく従うことにした。
「本当になんでこんなことしたんだ。どうせ大した理由じゃないんだろう」
「実は私の飼っていた猫が逃げ出してしまいまして、もしかして廃工場に迷いこんだかもと思い入りました」
「すぐそうやって嘘をつく。どうせ、工場から何か金目のものを盗もうとしたんだろう。さっさと白状したらどうなんだ、なあ黙ってないでなんとか言ったらどうなんだ」
UFOの映像が偽物だってことを暴きに行ってました、なんて本当のこと言えるわけがない。言ったところで証拠が無いし、証拠があったからといって取り合ってくれるとは思えないが。
「確かに立ち入り禁止だったのに勝手に入ったことは反省してます。でも本当のことなんです。信じてください」
「ここまでくるといっそ清々しいね。こんな若い時から噓を重ねたら、この先ろくな人間にならないぞ。あぁ、もう手遅れか」
大人はいつもこうだ。子供だからと聞く耳すら持たない。
「しっつれいしまぁーすぅ」
先生と俺の二人しかいないはずの空間に突如として聞き覚えのある声がする。ノックもなく突然入ってきた女は髪が赤いことを除けば自称宇宙人にそっくりだった。
「君は誰なんだ。今は取り込み中だ。出ていけ」
先生は見知らぬ人物の乱入に大きな声で対抗する。なかなか俺がいたずらで工場に入ったと自白しないのでイライラしていたところだった。そんな中にこいつは入ってきたのだ。矛先がそちらに向くのは当然のことだった。だが、こいつはいったい誰なのか。話し方や見た目からあの自称宇宙人と無関係とは到底思えない。
「人の話を聞こうともせずにぃーいきなり出ていけっていうのは酷いと思うんだけどなぁー。私はそいつが猫を探してたってことを伝えにきたわけで。ま、言うよりこれ見た方が早いかなぁ」
そう言って一枚の写真を取り出した。その写真には『猫探してます』という貼り紙を持った俺が鮮明に映っていた。しかも日付は昨日になっている。おかしい。この写真は絶対におかしい。俺が猫を探していると言ったのは咄嗟の?で俺は猫を飼ってなどいない。だからこんな写真は存在するはずがない。第一、写真の右下に書かれている日付と時間は廃工場の中にいるはずだ。漠然としていたのは俺だけではなく先生も同じなようだった。
「よく見せろっ」
先生は写真を半ば強引に奪い取り、まじまじと見つめた。
「……確かに写真に写っているのは君のようだね。猫を探していたのは本当だったとしても、お前がしたことは社会のルールに反することだ。どんな理由であったにせよ、お前がやった行為はこの学校を貶める行為だ。お前は許されないことをしたという自覚を忘れるなっ。これ持ってさっさと行け。俺の前に二度と顔出すなっ」
最後にまた怒鳴られ、そのまま先生に反省文の用紙を握らされて部屋を後にする。まるで狐につままれたような感じで先生の話しが全く頭に入ってこなかった。
「おい、お前ちょっと待ってくれよ。助けてくれたのはありがたいけどさ、俺は猫なんて探してないんだ。その写真はいったいなんだよ」
「あれー、昨日は猫を探してたって言ってたのになぁ」
昨日、俺が猫を探してたと噓を付いた人物はひとりしかいない。やはり髪の色は違うがこいつは廃工場にいたやつで間違いない。
「お前、昨日の自称宇宙人だな。一体どういうことかちゃんと説明しやがれ。」
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