『小説 君の膵臓をたべたい 住野よる』

ネタバレを含む


いやあ、いい小説だった。

久しぶりに本を読んで泣いた。

あまりに有名すぎるのと、恋愛ものという不慣れなジャンルのため、敬遠していたが読んで良かった。


今までも恋愛小説は、何冊か読んだことがあるが、自分が読んできた本の中では少ない方だった。


それは、読んでみてもあまりピンと来ないというか、つまらないわけではないが、他のジャンルの小説と比べるとそこまで面白く感じなかったためだと思う。


誤解を恐れずに言うと、そんな自分でも、この小説は面白かった。

面白いという表現は適切でない感じがするが、とにかく素直に感動した。

異性に対する純粋な好意、愛情は、美しい。


読む前は、「恋愛ストーリーでヒロインが病気なんて定番でベタな設定だなあ、それでこんなに売れるのか?」と、昨今の出版業界の需要にたいして、ちょっと意地悪な気持ちになってしまっていたのですが、読んでみて自分のその浅はかな気持ちは完全に払拭されました。


この設定こそが、恋愛の儚さを最大限に引き出し、かつ美しく結実させている。

定番の設定を十二分にフル活用した素晴らしい小説でした。



仲直りのくだりでは、真心のこもった純粋なやりとりに胸が熱くなり、通り魔に桜良が刺されたところでは「なんで桜良にそんなことするんだ! せめて病気で寿命が来るまで仲良くさせてあげろよ!! せっかく分かり合えて来ているのに! 何てことするんだ!!」

と、住野さんに対する憤りを覚えた物ですが、ここまでのめりこんだ作品は、今までそうあるものではありませんでした。

記憶をさかのぼるかぎり、もしかしたら初めてかもしれません。


本当に、主人公と一体になって、喜んだり悲しんだり、最後の勇気を振り絞った友達づくりの壁を乗り越えたり、この世界を、登場人物たちと一緒に生きているような素晴らしい読書体験をさせていただきました。住野さんありがとう!

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