『小説 一人称単数 村上春樹』

 小説を読んでここまで笑ったことはないと思います。チャーミングな村上さんの一面に触れることができました。


 野球に対する愛と熱さと、スワローズを愛するがゆえの苦悩や葛藤を、コミカルな切り口で熱く語ってくれます。


 全体的には村上節がさく裂していて、筆致の魔力が存分に村上ワールドへと誘ってくれます。

 そして、短編の一編一編を読むにつけ感じたのは、やっぱり筆致力の凄さでした。村上さんが書いたら、小学生の日記ですら一つの小説になってしまうのではないか。


 普段すれ違う赤の他人や、代わり映えのない風景の中にこそ、本当の物語が潜んでいる。と感じさせてくれる内容でした。

 きっと彼らにも、人生のドラマがあり、秘密にしているドラマがあり、歴史があって今そこにいる。

 読み終わって、少し人間というものを好きになったような気がします。


 そこら辺を歩いている、何の変哲もない普通の人々の日常生活の深淵に流れる心象風景をすくいだし、一つの物語として輝かせる力を私も欲しい!




筆致 ひっち

・書画や文章の書きぶり。筆のおもむき。筆つき。


趣 おもむき

1 味わい。面白み。

2 自然にそう感じられる有様。感じ。


筆つき

・筆を使う様子。また、書かれたものの様子。かきぶり。

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