ダイレクトメッセージ

依奈

彼との連絡が途絶えてから。


 彼とはあの日から連絡を絶った。その頃の私は泣いてばかりいた。


 連絡先を交換しようと言ったのは彼のほうだったけど、あの時は浮かれていたのかもしれない。いいや、浮かれていた。


 でも、嬉しかった。何よりも私のことをこんなに見てくれるなんて、思いもよらなかった。


 先輩後輩の仲だったのに、男女の関係のようになっていた。そういえば、気の迷いだったのかもしれない。連絡を取るようになってからは、お互いの距離が以前より近くなっていた。そんな風に思えてきたのだった。


 そんな矢先、Instogrimに彼女にしか見えない女がツーショットで喫茶店でピースサインをしながら映る写真を偶然にも見つけてしまった。


 その時、私は浮気してると思った。だって、私のことを振り向いてくれてると思ってたから。


 なのに‥‥。さいてー


 私は彼にこう言った。

「私とあのInstogrimの女の子、どっちが好きなの?」と。そしたら、「バレちゃった?インストの檸檬れもんは付き合ってる彼女で、お前は友達として好き」だって。


 信じられなかった。


 「バレちゃった?」じゃないよ。酷いよ、羅鵡らむ君。


 私は彼の事が好きだったのに‥‥。


 そういえば、“好き”だなんて話、全然してこなかった。でも、私の相談にも乗ってくれた。一緒に悩んでもくれた。励ましてくれた。その瞬間、救われたと思った。既読スルーなんてことも無かった。私はそんな彼の事が好きだった。


 だけど、これだけは言わせてほしい。「好きにさせないでよ。この気持ちを返して。あんなに悩み聞いてくれたじゃない。安易に連絡先交換しようなんて言わないで。だって、あなたは優しいから、キスでもしたいって思ってしまうから。なんなら抱き締めてほしい、こんな醜い私を。」


 泣いている私を抱き締めてくれる人なんていなかった。私のほうから連絡先を削除した。永遠に。悩んだ末の決断だった。


 大泣きする私を毛布はそっと優しく包み込んでくれた。そう、涙は拭わずに。

 


 そして、彼との連絡を絶ちきって1年。今、私は幸せです。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

ダイレクトメッセージ 依奈 @sss_469m

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ