第14話

「だーもう!また呼び出されたんだけど!あたし何も悪いことしてないのに!!!」


 入れ替わるようにハルヒがやって来た。


「あれ?生徒会の人じゃん。じゃああの生徒会長も近くにいるわけ?それに何よこのパイプいすの数は、お客さんでも来てたの?」


 喜緑さんに気付くとピリピリしだして辺りをぐるっと見回す動作をした。


「いえ、今日は喜緑さんだけですよ。何でも各部室にある備品の確認をしているそうです。そうですね?」


 よくこいつはこうもペラペラと真顔で嘘が吐けるもんだ。古泉の問いかけに喜緑さんは微笑のまま頷いた。


「ふんっ、いかにもあの生徒会長が考え付きそうなことね。どうせいちゃもんつけてここを奪うつもりなんだわ。ここはSOS団発祥の地として未来永劫保存されるんだから」


 ここを明治の文豪の家みたいな扱いにするつもりか。朝比奈さんのコスプレ衣装は本人のために隠しておいた方がよさそうだ。


「あ!みくるちゃん寝てるの?えっちぃことし放題ね」


 穢れを知らない天使のような寝顔の朝比奈さんにとんでもないことを言うハルヒ。俺がハルヒの狼藉を止めようとしていると、


「ではみなさん。今日はこの辺りでお開きとしましょう」


 古泉が唐突にそう宣言した。それを合図にするように、喜緑さんが会釈をして部室を出て行った。ハルヒは少し面食らったようだったが、時計を見てしかたないわねと言って置いたばかりの鞄を再び手に取った。


「ほらみくるちゃん早く起きなさい、起きないと置いてくわよ!夜の学校は怖いわよ、ダイダラボッチが出るの!」


 ハルヒにゆすられて目を覚ました朝比奈さんは目をパッチリと開けて「あれ?あれ?」と困惑していたが、とりあえず全員で帰ることになった。


「おい、こんなんでよかったのか?」


 俺は古泉に小声で耳打ちする。ハルヒは前方で朝比奈さんと喋っているので聞こえることはないだろう。


「涼宮さんが戻ってきてしまったのではやむをえません。あなたのクラスメイトとやらが来なければもう少し話が深まったのでしょうけどね」


 俺は聞こうか迷って少し黙った。だが古泉がそれを察したようで


「彼女はあなたと同じく一般人ですよ。普通の両親の元で生まれ、育ち、たまたま涼宮さんのクラスに編入された、何の変哲もない。そのはずです」


 と、俺の疑問に答えた。が、古泉にしては少し歯切れが悪い言い方だった。俺がそのことを聞こうとすると、肩をトントンと叩かれた。振り返ってみるが誰もいない。おかしいなと思っていると、脇腹を何か尖がったものがツンツンと当たったことに気が付き、俺は一気に血の気が引いた。

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