第13話
その場にいた全員が長門のように沈黙していた。そんな中で、一番に口を開いたのはやはり古泉だ。
「なるほど」
なるほど、と古泉はもう一度呟いた。
「それで、一体どなたなのでしょう?その『涼宮さん達に力を与えたもの』というのは」
「あー、その前にちょっといい?」
あまり興味がなさそうな声で朝倉が横やりを入れた。ヤスミは口を塞いで黙り、古泉は露骨に嫌そうな顔をした。
「あー、はいはい。話の腰を折ってごめんなさいね~。いいわよもう」
機嫌を損ねたようにブーたれる朝倉涼子。かつての真面目な委員長だったころの面影はない。
「せっかくわたしのデータベースにない存在がもうすぐここに来るって教えてあげようとおもったのに」
ギョッとしたのは俺だけではなく古泉も同じようだった。古泉はすぐに長門の名を呼び、それで伝わったようで長門が何か唱えると橘、朝比奈さん(大)、ヤスミ、朝倉の姿が消えた。
「え、あたしも?」
さっきまで朝倉がいたあたりから不服そうな声が聞こえてきた。姿を見えなくしただけで、消えたわけではないらしい。
コンコン
部室のドアがノックされた。
「どうぞ、お入りください」
ガチャっとドアが開き、知っている顔が目に入ってきた。
「やあキョン。ここがハルヒちゃんの作った同好会のアジトかい?へぇ、良い趣味してるね。しかしなんだ、肝心のハルヒちゃんがいないじゃないか」
「初めまして。どちら様でしょうか?」
古泉が外用の柔和な笑顔で、しかし警戒心は隠さず招かれざる客に尋ねた。
「初めまして古泉一樹君。僕はそこにいるキョンのクラスメイトだよ。昨日からだけどね」
ケラケラと笑って見せた転校生は、そう言って部室の中を素早く見回し、ヤスミのいたハルヒの席の辺りをじぃっと見つめた。
「初めまして、そうおっしゃる割に、貴女は僕のことをすでに知っているようですね」
言われてみればそうだ。確かに古泉が名乗る前から知っていたな。
「僕はキミのことなんて知らないよ。僕はこの部室にいるキョン以外の男が古泉君だけだということを聞いてただけだよ」
どこかでSOS団について聞いたのだろう。入部希望ならここじゃなくてミステリ研究部をお勧めするぜ。
「参考にするよ。さて、しかしハルヒちゃんがいないんじゃ無駄足だったな。またの機会にするよ」
「おや、お茶も出さず申し訳ありません。ところで、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
入り口のドアにもたれかかり、帰ろうと言っていた転校生に古泉が声をかけた。
「なぜあなたはさきほどからこの席を眺め続けているのですか?」
古泉はそう言ってハルヒの席、つまりヤスミがいたあたりの場所を指さした。
「なぜかって?それはね、そこにいるのを想像していたからさ。明日来たときこそ、ハルヒちゃんに連絡先を教えてもらえるようにね」
そう言ってニヤッと、女子に使う言葉ではないかもしれないがまさしくそんな感じで笑って、部室から出て行った。
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