第12話

「さて、お待たせいたしました」


 古泉たちの話が終わり、ようやくヤスミに発言権が戻った。ヤスミはほっとしたような、そうでもないような、複雑な顔をしていた。そしてとつとつと話し始めた。助けてほしいと。



「私がこの世界に来たのは4年ほど前になります。あの、朝比奈先輩には本当にご迷惑をおかけしてしまってごめんなさい。それに古泉先輩たちにはそれ以降も大変な目にあわせてしまっていて…。長門先輩達がやってきたのも私が来たちょっとあとでした」


「古泉先輩も含めて先輩たち皆さんが勘違いしていることがあるんです。涼宮先輩が力を得て自然に時間平面に壁ができたわけではないのです。涼宮先輩が、初めて私の力を使って願ったことが、朝比奈先輩たちですら拒むほどの強力な壁を作り出すことだったのです」


「初めてだったので、力加減ができなかったから物凄く膨大な力になってしまいました。それこそ、遠い宇宙にいた長門先輩たちが気付くぐらいの規模の」


「でも、そうまでして出来上がった壁は、壊れてしまいました。きっかけはあの時、今年の春、キョン先輩が涼宮先輩を助けに飛び出していかれた、その後の時です」


「古泉先輩が持っている力が、時間を超えて作用してしまいました。普段なら閉じられた世界で完結するのですが、この場所は時間も空間もねじ曲がり混ざり合っていましたから」


「もしかしたら、何も起こらないかもって思っていたんです。だって、今まで何も起こらなかったのですから。けれど、違ったんです。何もしないことに飽きて、動き出したみたい」


 ちょっと待ってくれ。ヤスミは一体何の話をしているんだ。朝比奈さんを悩ませていた時間の歪みが『壁』だったっていうのはまだいい。飽きて動き出したってなんだ、まるで生き物じゃないか。


「そうです、キョン先輩。涼宮先輩はあの人を、涼宮先輩達二人に自分の力を貸し付けた存在を、自分たちに干渉しないように封じ込めていたのです」

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