第10話

 わかりました、朝比奈さん(大)はそう言って話し始めた。


「3年前、いえ、4年前ですね。涼宮さんが作り出した時間の歪み。その歪みによってもたらされていた次元断層に破損痕が見つかりました」


「いえ、残念ながらそれ以上過去に遡ることはできませんでした。何者かによって寸分違わず修復されているようです」


「破損の原因ですが、まだ分かっていません。彼に施したものは自力で脱出できないはずなので、彼が破壊したとは考えにくいですね」


「私達が考えているのは二つ。一つは、次元断層に影響を及ぼす規模の何かが発生して、彼もその余波を受けて動けるようになった。断層の傷は涼宮さんの無意識が勝手に直した」


「もう一つは、次元断層が破壊されたときに、その場にいた何者かがその痕を修復した。そして彼を見つけてTPDDを修復してこの時間軸に再び干渉できるようにした」


 朝比奈さんが話し終えると、古泉は全体を代表するように「なるほど」とだけ答えた。


「ちなみに朝比奈さん。あなたご自身はどちらが真実だと考えますか?」


「察している事をあえて聞くのはあまり趣味がよくないわよ。それがよほど親しい関係だとしても」


 朝比奈さんの皮肉を笑顔で受け流し、古泉は長門達に疑問点がないか尋ねた。長門は「ない」と一言。


「というか、そもそもあなたのせいじゃない。あなたが部室ではしゃいだせいで、4年前にまで影響あったのよ?まあ情報が観測しやすくてありがたかったけど」


 大人しくしていた朝倉がしれっととんでもないことを言った。古泉は少し驚いた顔をして、


「おや、そのようなことがあったのですか。言っていただければお詫びいたしましたのに。どれほどの情報が、どの期間あったのでしょうか?」


「どの期間ってあなた、そう何度も何度も爆破してるの?あの後大変だったんだから。ついこの前だって別の情報爆発があっ、むぐ」


 饒舌に喋る朝倉の口を、喜緑さんが片手で塞いだ。なるほど、どうやら俺が思っているほど、SOS団の外での同盟はうまくいっているわけではないらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る