第201話☆ ゴーレムと魔宝石
以前(第162話☆ 謎の美女とグレーテル)で紹介した『スカイバット』の羽根の長さ訂正しました。
間違って別ダンジョンストーリーで出した、室内工事用の短いタイプで描いてました(汗)
こんなんじゃ中距離以上は飛べん。普通のハンググライダーの5分の3程度――6メートルくらいにしました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「今更だが、気分は悪くないか?」
上からヨエルが訊いてきた。
「少し気の風当りがきついけど大丈夫です」
まるで火の粉の舞う煙幕の中を通って行くような体感なのだが、自分の
「なら良かった。どのみち今は我慢してもらうしかないけどな」
俺たちは今、白いブロックで構成された峡谷のような世界を飛んでいた。
ヨエルが操るスカイバットに吊るされ、まさに救助ヘリに助けられた遭難者よろしく宙をゆく。
生きている者はおらず、辺りから漂ってくるのは憎しみと敵意に満ちたオーラ、
そしてトラップが放つ陰湿な殺意である。
時折、蠕動なのか、それともかのアーロンとかいう怨霊の唸り声なのか。
低く《オ"オ"オォォォォ~~~~ン"ン"ン》……という、地鳴りのような音が響いてくる。
唯一良い点を言えば、魔素が濃いので魔力切れを起こしづらいところだろう。
それでもギーレン近くの森に比べれば、とても爽やかとは言い難く、弱い者なら灰煙のごとく息苦しさを感じるだろう。
そんな禍々しい風をビュウビュウと受けながら、時折モノトーンを帯びた動く死人たちが目に入る。
本来なら極度の緊張と恐怖で吐き気を催しそうな状況なのだが、この時の俺はなんとか落ち着きを保つことが出来ていた。
いつもならヤバい時は必ず俺1人だったし、目の前の敵から身を守ることに本当に精一杯だった。
しかし今は頼もしい味方がいる。
アマゾンの奥地でガイドがいるかいないかで、気持ちに雲泥の差が出るのと同じだ。
それに彼を『死の運命』から回避させたい。
そんな使命感が俺の気を奮い立たさせていた
だから程よく緊張を保ちながら、まわりを観察することが出来た。
何本も打ち立てられた、ジェンガ状の柱の間をさらに蛇行しながら飛行する。
たまに柱の向こうから幽霊が過ぎて行くが、こちらにやって来ることはなく、そのまま霞み消えていく。
4層と違ってこちらのは、首無し以外に酷い姿の者がいない。
それに襲って来ようとはせずに、遠巻きにこちらを眺めているようだった。
また、彼らに重力という法則が当てはまらないはずなのだが、生きている頃の癖なのだろうか。
壁の出っ張りはもとより、その側面や階段裏に横や逆さになりながら、両足をつけたり座っている者もいる。
まるでエッシャーの巨大な絵画(『相対性』)の中に迷い込んだような錯覚を起こさせる。
『(ずい分と落ち着いたもんだな。さっきはあんなにビビッてたのに)』
奴からのテレパシーだ。
姿は見えないが、どこかで俺たちの事を見ているに違いない。
毎度毎度腹の立つことだ。
『(もう慣れた――とは言わないが、いま怖がっているヒマはないんだ。
第一、敵から目を逸らしちゃいけないんだろ)』
『(いいぞ、その意気だ。その強気が、お前自身の盾になるぞ)』
奴の声に少しだけ、嬉しそうなトーンが加わった。
『(おかげで幽霊共が寄って来なくなっただろ?
上の層の奴らは、わざと怖がらせるためにあんな姿で現れるんだからな)』
さっきのは舐められてたのか。
人も動物も死人も、みんな弱い奴(=俺)には容赦ねえな。
やっぱり強く見せるのは必要だ。
実際、最初が総天然色で、しかも思い切り惨いのを見てしまった後なので、モノクロで見る普通に近い姿の彼らは、怖さがだいぶ半減して感じられた。
薬の作用もまだ残っていたし、神経が限界を越えてぶっ飛び、一時的に麻痺していたのだろう。
だから地球に戻ってだいぶ経った頃、絵里子さんとお化け屋敷に入ることになった時、物凄く冷や汗をかく羽目になった。
なまじ中途半端な方が逆に想像力をかき立て、必要以上に怖ろしく感じてしまうことがある。
彼女は軽くイチャつきたかっただけなのだが、俺はこの時の恐怖感が無防備な頭に甦り、地獄にでも赴く思いとなった。
それは一種のパニック障害だったのかもしれない。
もうこの時の俺は、生まれたての小鹿同然、全身にバイブレーションがかかってしまった。
そんな震えを微塵たりとも悟られない為に、最大級に
おかげで彼女が腕に抱きついて来た感触を、まったく味わうことが出来なかった。
後にも先にもこの恐怖が強く出たのは、この時だけだったが、よりによって大事なデートの思い出がボロボロになった。
なのにバカ野郎な奴は、また慣らしが必要だとかぬかしやがった。
守護神じゃなくて、本当は疫病神なのじゃないだろうか。
「しっかり掴まれっ。ハンターがいるぞ」
ヨエルの声であたりを見回した。
この空間では触手があまり伸ばせない。もう目で探すしかないのだ。
斜め左上前方の桟橋のように突き出た階段に、黒い影が動いていた。
その辺りは壁が特に波打ち、幅が狭くなっている。
だが地続きではないのだから、これくらい離れていれば大丈夫なのでは。
と、そいつは階段の端まで移動してきたと思ったら、いきなりマントのように広がった。
そのまま勢いに任せて空中に躍り出ると、巨大な黒いムササビのごとくこちらに向かって滑空してきた。
こちらは俺がぶる下がっているし、あちこちに散らばる罠のせいで真っ直ぐに飛べず、時速はおそらく30キロにも満たない程度。
しかし進行方向から向かって来られて、あっという間に距離が詰まった。
飛んでくるとは思ってもいなかった俺の攻撃は僅かに出遅れた。
ブワァンッ! と、突然のエアポケット急降下。
内蔵がせり上がる不快感に思わず身が固くなり、一瞬だけハンターから視線が外れる。
すぐさま顔を上げるとヨエルもスカイバットも無事。目の隅を黒い影が落ちていくのが見えた。
ギリギリまで寄せつけておいて、風を使い一気に降下して相手を避けたのだ。
はあぁ~~、敵が目に入ったら注視してるだけじゃなく、何がなんでも
あり得ないだろうは、あり得るのだ。
こんなんじゃ師匠を助けるなんて出来るわけがない。
俺はまた気を引き締め直した。
ふと今度は、遠くで『ぉお~い、お~ぃぃ……』と呼ぶ声がする。
振り返っても、柱や壁のブロックが邪魔してわからない。
するとヨエルが
「気にするな。亡霊どもが呼んでいるだけだ」と言う。
そう聞いてすぐに耳を塞いだが、幸い追っては来なかったようで、すぐに聞こえなくなった。
実は声の主は、1層から落ちてきた兵士以外の者たちだった。
俺たちが遠く飛んで行くのを見て、助けを求めて呼ばわって来たのだ。
もちろんヨエルにはそれが生者と分かっていた。
けれど、彼は平然と嘘をついた。
俺が余計な動揺をすることを知っていたからだ。
だからわざと遠回りして、その姿に気付かせないように配慮していた。
関わると面倒が一番の理由だろうが、先程の
まずは自分や近しい人を守る為に切り捨てるしかない。
それは理屈で分かっていても、俺にはまだ覚悟が足りなかった。
後に聞いた話だが、こういう惨事の時には
その場合、彼らは助ける前に、後で相手が報酬でゴネないように、担保として身分証などを取り上げるのが常だった。
これは万一、無事に助け出せなくても遺族に売る事が出来るからだ。
人の弱みにつけこむアコギな商売にも思えるが、ハンターは
しかも命がけの仕事なのだ。薬や準備も必要だ。
バットマンのような財閥でもない限り、慈善事業ではやっていけないのだ。
それに金で命が助かるなら逆に有難いことだろう。
偽善だって、結果的に人命が救われるならそれでいい。
少しして、またヨエルが何か発見したようで、小さく声を上げた。
急に速度を落とし、ゆっくりと右の壁へ回り込むように進む。
「あれは……」
「デカいだろ。アーロンが来るまでは、アレが元々のこの5層の主だったんだ。
いや、今も番人ではあるのかな」
まだかなりの距離はあったが、その姿は柱と柱の間からはみ出すほど大きかった。
頭はおそらく奈良の大仏様の3倍以上あるだろう。
それが載る肩はさらに広く逞しく、プロ野球のグラウンド並の大きさだ。
表面はブロック状ではないが、まわりの石壁同様、石灰に似た白にややくすんだ灰色が混ざる岩肌で出来ている。
なのに柱や壁を避けることなくぶつかると、まるでスライムのように体にめり込ませ、背中から抜けるように出していく。
石を同化させて、自分の体を通過させていったのだ。
そうした
胸から下は薄暗い闇の底に消えていて、さながら黒い湖面を渡る人の姿にも見える。
あの『妖精の泉』のゴーレムたちより断然デカい。
まさしく
こいつはハンターと同じく、このダンジョンの一部から出来た魔物だった。
ただ、ハンターほど躍起になって捕食行動をするわけでもなく、この深層をウロウロと動きまわっているだけらしい。
それはアーロンが来るまでは、ここまで狂暴な場所ではなかった名残りなのだ。
そんな動く山を柱越しに横に見ながら追い越すと、大きく前に回りこんだ。
その大きな顔には鼻は無く、3つの大きな穴があった。
上の左右に並んだ2つの洞穴は歪なアーモンド状で、下の大きめな穴に比べて深く暗い虚ろを感じさせた。
「よし、出口が見つかった。あれが4層への通路だ」
「え、ええっ、まさかあそこですかっ?!」
小山のような巨大ゴーレムの口、それがどうやら上へ繋がる穴だった。
なんてトンデモナイとこにあるんだ。
もう嫌がらせとしか思えない。
本当はどこか他にも通路はあるのだが、近くにはまず罠が存在する。
ゴーレムの口だろうと、どこも変りはなかった。
「兄ちゃん、あの中へ転移出来るか?」
「……すいません。抵抗が強くてちょっと無理です」
おそらく別空間になるせいだろう。上の目の洞と違って分厚い圧力を感じる。
始めに練習で入った『パレプセト』なら外に転移する事も出来たのに、同じダンジョンとはいえ大違いの手応えだ。
一口にダンジョンと言ってもこのように性質は千差万別。
まず難易度からして違うのだから当たり前のことだった。
しかもここはトラップだらけの人喰いダンジョン。
実に入りやすく、そして出にくいだ。
「そうか。でも別にやりようはある。
それについてるぞ、肩のところを見てみろよ」
そう言ってゴーレムの右側に回った。
何故かゴーレムの右肩の後ろ辺りに、亡霊たちが10体近く集まっていた。
彼らはへばりついたり、まわりをグルグル回ったり、または何故か他の者を押し合いどかそうとしていた。
まるで大きな魚の傷口を突っつく小魚みたいだ。
「視えるか? あそこに『魔宝石』があるぞ」
「そうなんですか? 俺には遠くてわかりませんけど」
じゃあもうちょっと寄ってみようと、拒否する間もなく近づかれてしまった。
何故にわざわざ危険な真似をする?
まさかと思うが……。
3,40メートルくらい手前で速度を落とすと、そのまま巨人の歩みに速さを合わせた。
「これくらいなら感じ取れるか?」
高さと距離をなるべく保ちながら、ヨエルが訊ねて来た。
そう言われて目を細めるように、探知の触手を伸ばしてみる。
ああ、確かに。
白い丸みを帯びた岩肌に、パールのような艶めく石が露出している。
それは人体の一部の形をしていた。
人の頭だ。
元はベーシス系の男性らしき顔。
やや長めの頭髪が、強い風に煽られ乱れた瞬間さながらのまま固まっていた。
顔は左頬にパンチを喰らったみたいに右側に歪み、両目の眼球は飛び出さんばかりだ。
そんな
亡霊たちはその魔宝石に纏わりついていたのだ。
「死んでも欲に駆られて、ああやって宝から離れられないんだ。
哀れだよなあ。
おかげでこうして見つけやすいとも言えるが」
師匠がこの状況で普通に説明してくる。
死んでもな財宝に固執し、こうして自らをこの地に縛り付けている哀しい囚われ人たち。
でも彼らを決して愚かなどとは思えない。
人は欲に弱い者だし、最後の想いが強く影響したりするのだから。
ところでまさか、こんな時にお勉強の続きじゃないですよね。
今度はずっとこの右側を、つかず離れずに飛行しているのだが。
「兄ちゃん、アレを『土』魔法で取ること出来るか?」
「はあぃぃぃ~っ?!」
こんな時にも行き掛けの駄賃ですか!?
そんなに魔宝石って魅力的なモノなんですかっ。
美女の体ならともかく、ひょっとこにも似た苦痛の表情なんですけど。
いや、芸術的にはそれも価値ありなのか?
「勘違いするな。宝が欲しくて言ってるんじゃないぞ。
あれは宝石と名がつくが、本来は魔石の一種。しかも高品質のな。
ここからの脱出に使えるかもしれないんだぞ」
彼の話によると、こうしたダンジョンには各層に、緊急脱出用スポットが設けてあるのだそうだ。
そこには転移魔法陣が設置されていて、行先はまずそのダンジョンの転移ポートなどに固定されているものの、逆に言えば確実に安全地帯に行けるようになっている。
ただし、装置だけであって、それを動かすエネルギーは自前である。
「あれだけあれば、深層からでも俺たち2人くらい十分跳べるはずだ。
設置位置は
ちなみにこの5層自体には設置されていないらしい。
本当ならここにこそ作るべきなのだろうが、アーロンの存在がそれを妨げていた。
かの怨霊が何かの拍子に、地上に転移してくる恐れがあるからだ。
あの莫大な恨みのエネルギーなら、出来ないとも限らないのだ。
「……なんとか出来そうですけど、まずまわりのゴーストが邪魔で……」
そうなのだ。
さっきからその魔宝石に纏わりつく亡霊たちの気に妨害されているのだ。
ゴーレム自身の魔力抵抗は全体的には強いのだが、小さな範囲なら削れそうな手応えを感じた。
しかも魔法石は他の構成部分とは異質で、何と言うか、おできというよりも魚の目のような感じだろうか。
魔石なので魔力の通りもいい。
だが問題は触手を伸ばすと、どう間をすり抜けようとしても蠢く奴らにぶつかってしまうのだ。
そうすると否応にも、彼らの冷たく悪寒のする澱んだ意識を感じざる得なくなる。
おまけに先程から、仲間うちでも奪い合っている剣呑な様子。
そこへ俺が伸ばした触手に更に敵意を抱いて、まるで横入りを咎めるように邪魔をして来るのだ。
むろん俺も強気で押し込んでいるのだが、相手も負けじと気で押し返してくる。
当然ダイレクトに力勝負となるのだが、多勢に無勢でこちらが負けていた。
あちらの積年の欲望はなかなか手強かった。
もう隙間からコソコソと、探知で盗み視るくらいしか出来ない。
実は魔法の手法には色々あって、まさしく連続で重ねがけする術や、精霊の力を借りるなど様々な方法があるのだが、俺はどちらかというとこの念力的なやり方しかまだ出来なかった。
どのみちパワーで負けていては同じなのだが。
すると上の方から急に殺気が膨れ上がって来るのを感じた。
ヨエルが鋭い敵意を増幅させ、一気に矢の嵐のようにモノクロの者達に撃ち放った。
亡霊たちが衝撃に驚いて体を反り返らせる。
声にならない悲鳴が聞こえる。
自分に撃ち込まれたわけでないが、頭上でガトリング砲をぶっ放されたみたいに、俺にまで衝撃の余波が来た。
うう、痛そう。
しかし顔を歪ませながらも、1人もその場を動かない。
体を縮こませながら逆にますますしがみつく。
更に2回撃ち込んだが、やはり誰も離れようとはしない。
そんな流れ弾が当たったのか、巨人が大きな左手を闇から持ち上げると、ポリポリと肩を掻いた。
濃い霧のような亡霊の体を、その大きな指がすり抜ける。
「しつこいな。どうせあの世に持っていかれる訳でもないのに」
ヨエルが舌打ちしながら言う。
「あいつらの気を惹くほどの宝は持ってないし、ここで聖水を使うのもなあ……」
さすがの師匠も、亡霊と直接接触するのは危険だった。
それにいつまでもこんな事をしている訳にもいかない。
しょうがない、ここは諦めるかと、低く呟いた。
「待ってください。宝って、代わりになりそうな物があれば、彼らは離れることもあるんですか?」
宝という言葉に思い出したことがあった。
「ああ、魔宝石並みに凄いお宝でも見せれば喰いついてくるかもしれないが……」
「だったら、これは? これなら代わりになりませんか」
俺は空中からペンダントを取り出して見せた。
その先には、赤い宝石が埋め込まれた金色の大判コインが下がっている。
以前ヴァリアスが要らないと渡してきた『*古代ラティウム金貨』だ。
(*『第153話☆ 接待とダンジョン逸話』参照)
情報屋の所長が恐れ多くて受け取れないと辞退したくらい、相当な価値がある代物。
そして海賊の船長が死んでもなお、後生大事に首に下げていたほどに人の心を掴んで離さない至宝。
これならあの亡霊たちにもイケるんじゃないのか。
「おお、流石というか、凄い物持ってるな。それなら十分だ」
師匠も感嘆の声を漏らす。
「じゃあこれで誘き寄せます」
俺はペンダント越しに亡霊たちを見ながら気を送った。
ピクリと1人が肩越しにこちらを振り返る。
また1人2人と、キョロキョロと顔を動かした者たちが、ピタリとこっちに視線を向けて来た。
いいぞ、この金貨の感じを伝えた気に勘付いてくれた。
「お~い、こっちの水はあ~まいぞぉ」
大声を出せないので小声ではあるが、誘惑の呪文を唱えてみる。
蛍じゃないけどのってくれ。
更にペンダントをグルグル振り回すと、キラキラと反射する黄金と深紅の輝きに全員がガン見してきた。
「これはここじゃ絶対手に入らない、一品モノだぞぉ~」
本当はこの世にまだいくつか現存するかもしれないが、ここで同じ物が生み出される事はないだろう。
何しろ古代文明の遺産というプレミア付きなのだから。
すると俺のそんな声が聞こえたのか、一気に亡霊たちが濁った瞳をギラつかせて一斉にぶっ飛んできた。
ギャーッ 怖いっ!
仕掛けといてなんだが、まとめて来られるとやっぱ怖い。
しかも先程まではおちょくりモードだったのかもしれないが、今度は獲物を狙う
殺気の度合いが全然違う。
師匠がまた殺気を放つのと、俺が遠くにペンダントをぶん投げたのは同時だった。
モノクロの塊りが凄い勢いで方向転換する。
「おっと」
煌めく光にヨエルが風の触手を伸ばしてキャッチする。
「イイですっ! もう要らないです、師匠っ。
彼らにやっちゃって下さい」
「え、だってアレ、大した代物じゃないのか」
あんなブツを見せてしまったのだ。
また取り返したら、どこまで纏わりついてくるかわかったものじゃない。
それに元々は亡霊が持っていた物だ。
彼らに渡すほうが良いのかもしれない。
「……わかった。今は宝よりアイテムだな」
風の触手が消えると、空中で止まっていた赤い宝石は再び深淵に落ちていく。
それを追って亡霊たちも、深い闇に消えていった。
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