第152話☆ 祭り裏の光と陰

 すぐに探知したが、いつもと違って沢山の思念が邪魔してくる。

 どこだ。そんなに時間経ってないだろ。それともそんな遠くにもう行かれてしまったのか。

 目視でも探したが、前を行くパレードの山車だしに視界を大きく塞がれて、余計に分からない。


 なんだよ、あのバッグを盗っても何も入ってないぞ。

 しかしただ盗られるのも、腹立たしい。なんとか見つけてやりたい。


「お前は世間知らずのお嬢様か」

 すぐ後ろで声がして振り返ると、果たして奴が立っていた。そして右手にバッグ、左手にだらんと力なく項垂れている男の襟首を掴んでいた。

「オレがいないとすぐに盗人に目をつけられやがって、これじゃ1人で歩かせられないな」

 そのまま奴が手を離すと、男はずるずると壁に寄りかかりながら、地面に座り込んだ。一見すると酔っぱらっているようにも見える。


「何をしたんだ? まさか殺してないだろうな」

 とは言ったが息をしているのはわかる。ただ、護符をつけているせいか、解析がうまく出来ない。

「コイツはお前から盗みを働いたんだぞ。殺しても文句は言わせないぐらいだが、お前が五月蠅いから神経を少し抜いた程度で許してやったんだ」

「だあぁぁ~~~っ! このバカっ、早く治せよ! それじゃ(殺したのと)一緒だろっ」

 まわりの喧騒と俺が少し声を落としたので、まわりの人達には聞こえなかったようだ。俺たちを全く気に留めずに、通り過ぎていく。


「半日だ。半日経ったら治してやる。コイツに免じてそれくらいにしといてやるよ」

 目は半開きだが、口元をだらしなく開けて、涎を垂らしている男の横顔に向かって奴が低く言った。

 男は何の反応も示さない。いや、示せないんだ。


「とにかくお前は不用心過ぎる」

 歩きながら俺からショルダー部分を取ると、すぐにバッグごとを返してきた。もう紐と本体がくっついている。

「アイツはお前のことをあのパン屋からつけてきたんだ。盗む機会を狙いながらな」

「そんなに長いことか」

 途中あちこち寄ったから、30分以上は経っていたと思うが、そんなにつけ狙われていたとは、なんだか気持ち悪い。


「でもなんで、そんな執拗に狙ってきたんだ。パン屋で金を出したせいか?」

 実はパン屋で会計する際に、小銭が足りなくて大きなお金、金貨を出していたのだ。それを見られたのかもしれない。

「違う。それもあるかもしれんが、一番の目的はそのバッグの方だ」

「えっ、これ? これそんなプレミア物なのか?」

 確かにブランド物らしいが、あの古着屋で買った時の値段は金貨よりは安かったはずだが。


「ったく、お前は本当に考えが足りねぇな。そのバッグは収納アイテムのふりさせてるんだろ。収納アイテムは高価な物だといっただろ。金貨1枚ぐらいじゃ買えないんだぞ」

「そんなにするのか。かなり高いとは聞いていたけど……」

 ううむ、今度はバッグから出し入れするのも気をつけなくちゃいけないのか。

「アイツは隠蔽能力を持ってたからな。それで気がつかなかったんだろ。とにかく気をつけろ。

 ここは平和な日本じゃねぇんだからな」

 くそぅ、言い返せねぇ。


「大体何なんだ? そんなに食料ばかり買い込んで。白パンなんかツマミにならないぞ」

 再び歩きながら奴が呆れた事を言ってきた。何でもかんでも酒絡みな男だ。

「違うっ。これはダンジョンに潜る用意に買ったんだ。3日間も潜るんだから、それなりに食料がいるだろ」

「あぁ? そんなもの、向こうで調達すればいいだろ。何も獲物がいないようなとこに行くわけじゃないんだぞ」

「だってこれには、食料の準備は万全にって書いてあったぞ」

 俺は例の小冊子を見せた。


「フンッ!」

 奴が鼻でバカにするように言った。

「それは初心者中の初心者だ。大体、普通に食える獲物がいるような所に行くんだから、現場調達が基本だろ。そういう狩りが出来そうにない奴への注意だ、そりゃ」

「そりゃあ、あんたみたいな奴なら、ナイフ1本で何カ月もイケるかもしれないが、俺なんかキャンプもしたことないんだぞ。万全な用意して何が悪い」

「お前は1人じゃなくてアイツと入るんだぞ。第一、ダンジョンを知るために行くのに、遊びでキャンプしに行くわけじゃないぞ」

「ぬぅ~~~っ 俺は望んで行くわけじゃねぇー」


『フォックス・カンパニー』に戻ると、社員らしい男がまた1人増えていた。

「ああ、お帰りなさいっ」

 チコがパッと破顔して迎えてくれた。やっぱりバックレるかもと、どこか思っていたのかもしれない。

「ああん?」

 その様子に、窓際の席でまた店長が胡散臭そうに顔を上げた。


「店長、あらためてご紹介しやすよ。

 こちらがあの『エオニオニィタ テレス永遠の終わり島』の生き残りのヴァリアスさん、

 で、こっちが助手のソーヤさんです」

 助手じゃねぇって! もう、どうせ俺はこいつのおまけにしかならないのか。


「フーン、あんたがあの戦いの生き残りって訳かい?」

 店長は疑わし気に下から片眉を上げてみせた。

「そうだ。オレの話は少しは役に立ったか?」

 奴がそう言いながらネックゲイターを下げて見せた。

 その顔を見た途端、店長が紙煙草に火をつけようとした手を止めた。


「こ、こりゃあ……」

 やにわに店長は立ち上がると、手を振ってチコを呼び寄せた。

 そのままチコを引っ掴むように応接間の方に連れていくと、小声で話し始めた。


「おぉい、あいつ、本物じゃねぇかっ!」

「ええ、ですからそう言ってるじゃありやせんか」

「だ、だとぉ、違うっ。いや、違わねぇが、本当に傭兵なのか? もっと何かおっかねぇモノじゃねぇのか?!」

 さすがに何か感じるのか、魔王とでもか思うのか。

「おれはアクール人は何人か見た事あるが、あそこまで先祖返りしてるのは見た事ねぇぞ」

「へ、へぇっ」

 チコもさすがにSSだと言えなくて、戸惑った声を出している。


「いいか? アクール人ってのはな、牙の数で強さがわかるんだ。それでもって多重歯の層でも違ってくるんだ。

 それがあいつはハッキリと三重じゃねぇか。この現代にそんな三重の奴なんかいねえぞ。いるのは博物館くらいだ」

「へぇっ、だからあの戦さで生き残りなさったんでは?」

 ウゥんっ! と店長がバリバリと頭を掻いた。


「オレのは三重じゃねぇ。4つ目は寝てるんだ」

 奴が不満そうに言う。

「しっ、今はそういう問題じゃないだろ」

 このオリジナル野郎は変なとこにこだわりを持つ。


「とにかくあんなおっかねぇ奴、よく連れて来れたもんだ。それをお前、この応接間になんざ泊めたのかっ」

「へぇっ、とりあえず宿が見つからなかったもんで……」

「バッカッ! それこそ駆けずり回って探してこいっ。いくら祭り中でも、ずっと泊まってる奴ばかりじゃないだろっ」

「へっ、へぇっ! ですんで、一応心当たりの宿には声をかけてありまさぁ」

 ふんっと、店長は大きく鼻を鳴らすと、応接間からやっと出てきた。


「どうも先程は失礼いたしました。こんな小汚い所にお泊めして大変すみません」

 さっきとは打って変わって、腰が低くなった。

「別に雨風しのげれば構わん。それとも別に宿でも紹介してくれるのか?」

「も、もちろんで! おいっ チコ、お前とっとと、宿探して来いっ!」

「へ、へぇっ!」

 後ろから来たチコが、慌ただしく出ていこうとした。


「いや、そんな、申し訳ないから結構ですよ」

 俺は慌てて断ろうとした。

 すると出ていく前に、ふと角っこの机に置いてあるファクシミリーを見たチコが、その送信紙を持って戻ってきた。


「店長、来ましたっ! 一部屋空いたという連絡が入りやしたよ」


 チコが案内してくれた『青葉の森亭』は、緑色と黄色のレンガに、水色の窓枠が4階まで並ぶ可愛らしい感じの宿だった。

 店長はそんな安宿にと、冷や冷やしていたようだが、俺たちにはこれで十分だ。

 小綺麗な4階の8畳くらいの部屋には、小さいながらもシャワー室とトイレも付いている。ベッドがダブルサイズ1つなのはもうご愛敬だ。

 内壁は丸太のようなロッジ風で、あちこちに観葉植物が置かれていた。

 この部屋にも、赤と緑の大きな葉を広げたベンジャミン似の小さな植木鉢がある。

 なかなかどうして、安いという程じゃないと思う。


「へえ、本当はもっと大きい宿が空いていれば良かったんでやすが、どうも商人や大道芸人たちがまとめて詰めてるようで、なかなか空きが出ないようでやす」

 逆にこうしたやや小さめの宿の方が、観光客が泊まりやすいようで、客の出入ではいりが1日単位であるようである。だからチコは情報屋として顔の広さを生かして、こういう宿にも声をかけておいてくれたようだ。


 宿代を払おうとしたが、チコに頑なに断られて、結局接待を受けることにした。

 夕食は店長がぜひ招待したいという店があるというので、6時に会社に戻ることを約束してチコは戻っていった。


「さて、6時まで時間もあるし、軽く運動しに行くか?」

 奴の言う軽くは絶対に軽くない。

「その運動ってのはどんなんだ? 食欲が無くなるほどじゃないだろうな」

「まあ、(ダンジョンに行く前の)予習ぐらいしといた方がいいだろ。食料以外に他には揃えたのか?」

「いや、食料以外には必要ないだろ、俺には。狩りも今まで通りのやり方なら、道具も要らないし」

「…… ふぅん、まっ いいか。アイツがおいおい教えてくだろうから」

 なんだよ、その含みのある言い方は。


 俺は本当に考え無しだったと思う。もしタイムマシンで一瞬でもこの時に戻れたら、自分に強く警告してやりたかった。

 いくら初心者とはいえ、自分の事しか考えてなかったことを、俺は一生後悔し、忘れないように心に刻むことになるのだ。


 ★★★


 宿で俺たちがこんなやり取りをしていた頃、同じくバレンティアの離れた新市街の大通り、人混みの中を1人の女が歩いていた。

 年の頃は26,7といった見た目か。

 ふんわりとした淡い金髪を軽くまとめ上げ、そのすっとした細いうなじをみせている。

 モデルのような高身長に見えるのは、庶民には珍しいハイヒールの靴を履いているからだ。服も派手ではないものの、その生地は柔らかそうで決して安物ではない。

 そうして顔には目元を隠すように、ボルドー色の半仮面を着けていた。


 女はあちこちで行われている大道芸や、パレードをぶらぶらと眺めていたが、ふとある催し物の前で足を止めた。

 それは1.2mくらいの楕円形の銀色の金属板で、磨き上げられたその表面は鏡のようにまわりを映していた。

 その金属鏡の横で首に大きな蝶ネクタイをした男が、大きな声で客を呼ばわっていた。


「さあさあ、お立合い、覗いてドッキリ、見てびっくりだあ~。昔懐かし思い出の、あの日の姿が甦る。

 これぞ噂の過去見の鏡だぁ、もう一度、あの頃の精悍な自分、一番可憐だった少女時代を思い出したい人はどうぞ鏡に寄っとくれ。

 1回300エルだよー」

 何人もそのまわりを囲んではいるが、ちょっと恥ずかしいのか躊躇している感じが見られる。

 その中から、意を決したらしい70前後の老夫婦が進み出た。


 男に大銅貨3枚を渡すと、2人しておずおずと鏡の前に立った。

 するとやおら鏡の面が曇りだし、一時的に何も見えなくなった。

 が、やがてその霧が晴れてくると、老夫婦の口から感嘆の声が上がった。


 鏡の中には、肩幅の広い逆三角形のがっちりした体をした若い男と、燃えるような豊かな赤毛を軽く後ろで束ねた初々しい顔をした娘が映っていた。

 その姿は前に立っている夫婦と同じ動きをする。


「こりゃあ、おれの若い頃のまんまだ。この頃はブルーバッグブルだって、素手で抑えられたくらいだったんだ」

 今や背中がすっかり丸まった老人が、拳を振るって声を上げた。

「あたしもこの頃は自慢の赤毛だったのよねぇ」

 ふうっと小さな息を吐いた老女は、白髪が増えて色褪せた髪をそっと撫でた。


「お二人とも若い時代に思いが残るかもしれませんが、今はそれもあってのこうして味わい深い御姿になられたんじゃございませんか? 年には年の一番相応しい御姿があります。落差ではございません。

 お二人は今現在が、一番お美しいのではないでしょうか?」

 催し物の男が厳かに、そして少し暗示をかけるように落ち着いたテンポで話しかける。


「うん、まあそうだな。色々あったが、子供や孫にも恵まれたし、こうして伴侶の婆さんも元気だし……」

 老人が薄くなった頭を撫でながら、そっと隣の妻を見た。

 その顔に幸せ皺を深くして老女が笑った。


「どうぞ、この美しい姿を思い出に、これからもお幸せにいらしてください」

 サッと胸の前で手を交差させて、男が軽く頭を下げた。


 老夫婦が立ち去って、まだ興味がありそうな客たちが見守っている中、女が前に出た。

「おお、これは見目麗しいご婦人。今もお美しいですが、幼き穢れなき少女時代をご覧になりますか?」

 よく聞くと、失礼な事を述べているのだが、そんな事に気付いているのか気にしていないのか、女はそのまま微笑むと男に大銅貨を渡した。

「恐れ入りますが、その仮面も外して頂けますか? そのご尊顔をちゃんと映さないと、鏡が正しく過去を映せないもので」

 女は言われたままに、そっと仮面を外した。

 その下からは想像に違わず、美しい切れ長の金色の瞳が現われる。男がほうっと小さく息を吐いた。


 同じように鏡の霧が晴れたあと、中には10歳くらいの少女が立っていた。

 柔らかそうな金髪にパッチリした金色の目に、ピンク色の頬、ヒラヒラのフリルのドレスを着たまさしく美少女がこちらを見つめていた。

 フッと女が口元を微かに上げた。


「さすがは今も昔もお美しいですねぇ」

 男の褒め言葉に、口元を隠すように手をやると、ニッコリ笑ってその場を後にした。


 大通りを何本か横に逸れると、大きな川が目の前に見えてきた。その先には大きな橋が番人付きで渡っている。

 ちょうどパレードが2本ほど先の道を通っているため、人々がそちらに流れていくところだった。

 と、その流れで彼女に軽くぶつかった男がいた。

 男はそのまま謝るどころか、振り向くこともなく、そのまま人混みの波に流れていった。

 下げていたポシェットが無くなっているのに気付いたのは、次の瞬間だった。

 

 しかし、彼女は男の消えた方にチラリと顔を向けただけで、そのまま川の方に歩き出した。

 

 川に突きあたると、橋とは反対方向に川沿いを歩いていく。

 しばらくすると倉庫街のようで、酒蔵や倉庫、工房の姿が多くなってきた。

 さすがにこちらは比較的、人通りは少ないようで、歩いているのは職人風の男がポツポツとたまに見えるだけだ。

 

 ふと、彼女は立ち止まると、辺りに人の気配が無くなった瞬間、ある工房の裏庭にスッと入っていった。

 木戸を閉めてしまうと、2m以上あるレンガ塀と伸びた木に囲まれて、外からは見えないようになっている。

 そこはある鉄工所裏のようだが、この祭りの期間中は炉の火を落として休みになっている。

 もちろん職人たちも工房にはいない。


 だが、そこに先客がいた。


あねさん、あんまり無茶せんでください」

 ぞろりとした感じで大きなゴリラのような影が動いた。

「あっしらもあんな人混みじゃ、気付かれないように動くのもひと苦労なんですからね」

「フフッ そんな素人じゃあるまいし。私がワザと掏られたのが気に入らないのかい?」

 そういう彼女の前に、黒い大きな影が横の茂みに手を伸ばすと、ずるりと1人の男の頭を掴んで引っ張り出した。

 それは先程、彼女からポシェットを掏り取った男だった。こめかみにクッキリと凹みが現われている。

 男は地面に乱暴に落とされても、もう微動だにしなかった。


あねさんはただでさえ、目立つんですから、少しは控えて頂きたい。こっちは冷や冷やしっぱなしで、心の臓に良くありません」

 そう言いながら彼女にアイボリー色のポシェットを渡した。

「そんなか弱い胸してないだろう、お前は。でもわかったわ。少しは自重しないとね。

 少しこの祭りのムードに当てられたのかもしれないし」

 壁越しに聞こえてくる子供たちの歓声や、遠くで高く鳴る花火のようなクラッカー音を聞くように、彼女は耳の辺りの髪を軽くかき上げた。


「それに先程は『過去見』の鏡なぞに、わざわざその御姿を晒されて。

 我らは肝を潰しそうでございましたよ、嬢様」

 2本の樹の陰から、もう1人の影がゆらりと出てきた。

「馬鹿ね、あんなの本物の訳ないじゃない」

 彼女は魅惑的な口元を持ち上げた。


「あれはただの鏡よ。あの男が光魔法で像を映しているだけ。

 あの男が相手の姿や服装とかから、過去を想像して創り出しているだけよ。少し良く補正してね。

 庶民なんかそうそう鏡を見る機会なんかないでしょ? 自分の姿なんかあまり知らないものね。

 しかも昔の記憶なんか、多少違ってても分からないのよ。

 ああやって過去を美化して、それらしく見せてやるのが受けてるの」

「ほほう、さすが姐御だ。肝っ玉も座ってるが、頭いいや」

 工房の角から3番目の影がゆらゆらと現われた。


「確かにあの姿はあねさんに似て、非なるものでしたしなあ」

 始めの大きな影が頷いた。

「そんな事はもういいわ。ところで例の件のはどうなったかしら?」

「はい、それが急がせているのですが、どうしてもあと4日は待って欲しいと……」

「はぁっ?! そんなにかかるの」

 女がキッと柔和な顔から急に眉をひそめた。


「ええ、逃がし屋の話によりますと、どうしても万全の準備で仕事をしたいとの事で。

 なんでも以前、懇意にしていた国境警備隊が不正で処刑されてしまい、新しい警備の者に入れ変わったそうで、そいつらを取り込むのに苦労しているようです」

 2番目の影が彼女の前で膝まづいた。


「……タイミング悪いわねぇ、しょうがない。急いて失敗したら目も当てられないものね。

 まだしばらくこの祭りも続くし、それまでここにいようかしら」

「いや、姐御、ここは人も多くて紛れ込みやすいが、この通り警吏の奴らも多い。

 いつ見抜かれるかわかったものじゃありませんや」と3番目。

「そう、どこか別のところで、用意が整うまで姿を隠す方がよろしいかと」

 2番目も同意した。


「ふうん……」

 その3つの影の前をコツコツと歩きながら、彼女は白い指をその唇に当てた。


「ではしばらくの間、またどこかに潜ろうかしら」

 

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