第122話 さらば 友よ その5


 ふと思いついて、2杯分以上の珈琲豆を挽いてみた。

 匂いで、もしかすると奴が来るかもしれないと思ったからだ。


 あの銅製のジョッキに珈琲を注いで、テーブルの向かいに陰膳のように置いてみる。

 あの時、奴はジョッキを持っていかなかったのだ。

 いつもならマイジョッキはすぐ収納するのに。


 珈琲のふくよかな香りが部屋の中に漂うが、何も起きなかった。

「おい、せっかくコーヒー淹れたんだから、飲みに来たらどうなんだよ」

 俺はポツリと窓に向かって言ってみた。


「や~、わざわざ淹れてくれたんですかぁ。ありがとうございます」

 後ろで声がしたので振り返ると、キリコが立っていた。

 相変わらず料理まめなキリコは、六角型の赤地に金の梅模様の3段お重を持ってきていた。


「それにしてもスゴイ大きなカップですね。これジョッキじゃないですか?」

「いや、ごめん。淹れ過ぎたから入れ替えるよ」

 俺は慌ててジョッキを持って、台所にカップを取り換えに行った。


 そのまま正月休みも終わり、新しい年が始まったが、今年初めての週末にも奴は姿を現さなかった。

 キリコはやってきたが、気乗りしないので行かない事にした。

 いま中途半端に行ってもあちらでは夕方になってしまう。どうせなら朝に合わせて行った方がいいかもしれない。

 などと適当に理由を考えた。


 次の週末も奴は現れなかった。

 さすがにこれはおかしい気がしてきた。

 キリコに聞いてもわからないというし、そもそも、その話をしたがらなくなってきた。

 もう過ぎ去った事は過去として、ただの終わってしまった事柄になってしまったように。

 それよりも俺が、いつあちらに行く気があるのか教えてくれと言うだけだった。


 あの怒涛の2ヶ月間はなんだったのか。

 望んでいたはずの、当たり前のような日常に戻りながらも、俺はどこか落ち着かない気分だった。

 

 いきなり来て、急に去っていったあいつは何だったんだ。

 俺を一生守るんじゃなかったのか?

 また俺を置き去りにする為だけにきたのか。

 

 台所の水切りカゴに、あいつの赤銅色のジョッキだけが残っていた。


 世間では中国の一部の都市での新型肺炎の流行が騒がれ、テレビで時折流れるようになってきていた。

 田上さんとは、会社の人達に知られるのも恥ずかしかったから、あれからちゃんと会ってはいない。


 ただこのあいだ、会社でこっそりとお弁当を作って持ってきてくれたのに、少しの望みを見い出していた。


 そんな事に一喜一憂しながら、3週間が過ぎようとしていた。


 1月の第3金曜日の夜、いつも通り仕事を終えて、駅からアパートに向かって住宅地を1人歩いていた。

 例の酒屋のある小さな商店通り(商店街というほどではない)を抜けた時、なんとなく冷たい夜風に当たっていたい気分になって、そのままいつもとは違う道に入った。

 こちらには小さいが公園がある。

 ベンチもあるから近くの自販機で飲み物でも買おう。


 しかし近くまで来た時に、俺の耳に‟ キィコォー キィーコー ”という金属の擦れる音が聞こえてきた。

 こんな夜中に誰かブランコでも漕いでいるのか。


 植え込みの葉のすき間からブランコが見えてきたが、それはまったく動いていない。

 動いていたのは、真ん中近くにあるシーソーだった。

 しかしその両端に乗っているはずの人影は見えなかった。


 …………以前の俺だったら、ここで背中に冷たいモノが流れて体が動かなくなるだけだったが、ゾッとした瞬間、ある行動を起こしていた。

 というかおそらく反射的にやっていたのだ。

 探知を。

 

 両端に何かがいるのはわかった。

 何か人のような形をした ――― 向かって左は大きく、右は小柄だった。

 今度こそザワザワと体中から震えが来たのを感じた瞬間、その小柄のほうが俺に向かって手を上げた。


「ソウヤ、久しぶりーっ。元気にしてたかー?」

 街灯の灯りににじみ出るように現れたのは、白いファーのボレロに赤いワンピース、ふんわりした金髪の少女と

「よう、ソーヤ君、*Felice anno nuovo(フェリーチェ・アンノ・ヌォーヴォ)! 遅くなったけど新年おめでとう!」

(* 良い年を! の意:イタリア語のハッピーニューイヤー)

 黒い男がニコニコしながら言った。


「ナジャ様とリブリース様 ?! 一体何してるんですか ??!」

 俺はこちらに手を振りながら、いまだに上下運動を止めない2人のそばに小走りに近寄った。


「何って見ればわかるだろー、シーソーだよ」とナジャ様。

「そりゃシーソーはわかりますが、こんな夜中に、しかも姿消して…………」

 後の方は小声になった。

「なんかさ、始め普通にやってたら、こっちの警吏?、あれに色々聞かれてさ。面倒くさいから姿だけ消してたんだよ」

 そういうリブリース様は今日は、黒のライダージャケットと革パンツにベルトの沢山ついたロングブーツと、『マッドマックス』の主人公みたいな恰好になっている。


「あの…………。姿だけ消してたから、シーソーだけが動いて見えてましたよ」

「だって全部消したらシーソーごと見えなくなっちゃうじゃん。そしたらシーソーが無いって、騒ぎになっちゃうでしょ」

「いや、イヤイヤイヤ、この方がよっぽど騒がれますよ。うちの近所に心霊スポット作るのやめてください」

 ったく、この考え方の違いがヤバいんだよな。


「しょうがないなー、よっと」

 ナジャ様が勢い良く、シーソーから飛び降りた。

「いダッ! ちょっ、ちょっとナジャ、降りる時はそっとにしてって。おれ様の命の次に大事なとこが…………」

 どうも急に下がって、男の大事なとこを打ったらしい。リブリース様が呻くように言った。


「なに言ってるんだよー。これっくらい」

「もうっ、女には永遠にわからないんだから…………。ってこれさ、結構危険じゃない?

 本当は男用の拷問道具じゃないの?」

「そんな物騒なモノ、公園に置きませんから。

 そういやリブリース様、体はもう大丈夫なんですか?」

 そうだった。今、両足はちゃんとあるようだが。

「うん、ありがと。この通り全快だよ。やっぱり『精霊の愛の園神界の花街』は最高だね。英気を養ったらもうすぐに治っちゃったよ」

 あんたはソープランドで傷を治すのか。


「日本には今日来たとこなんだ。地球には今年の初めからいたんだけど。

 ナジャがあちこち、風を感じながらゆっくりまわりたいって言うからさ、あれで世界中まわってた」

 と、親指で指した後ろ側に、エンジンとマフラーが思い切り主張してるような大型バイクがあった。

「そうだよ、気持ちいいぞー。砂漠の途中で会った隊商キャラバンには驚かれちゃったけどさー」

 えっ、もしかして砂漠をその恰好で2人乗りして走ってたんですか? ダカール・ラリーでもそんなマネしませんよ。

 いや、そんな事より――。


「あの、その後、ヴァリアスの奴から……連絡は?」

「えっ、ないの?」

 ナジャ様が意外という顔をする。

 リブリース様から笑みが消える。

「そうか…………」

 

「ソウヤ、ときに訊くが、今のお前の守りはキリコだろ? 奴で足りてるのか?」

 少女がスタスタと俺に近寄ってきて、俺の目をジッと見ながら言った。

「え……それはどういう…………」

「キリコじゃ力不足だろ。あいつがもう戻ってこないんだったら、あたいがサポートしてやろうか? 系統違いでもお前が望むなら、転属は可能だよ」


「…………戻ってこないって…………それは」

 なんだか足元の地面が不安定になったような気がする。

 黒い男が下を向いた。

「どうする?」

 少女が詰め寄るように聞いてくる。


「…………あいつは……もう死んでるっていうことですか……………………」








 ガッ !! と、首にいきなり黒い袖の腕がまわってきた。

「誰が死んだって ?」

 耳元で聞きなれた低音がした。


「ヴァ、ヴァ、馬鹿ぁっヴァリーッ ?!!」

「いよぉ、なんだ、なんて顔してるんだぁ? オレがいなくて淋しかったのかぁ、んー?」

 ニーッと牙だらけの口を顔の近くで見せながら、俺の頬を摘まんできた。


「やめろよっ! このっ、パン切りナイフみたいな歯ぁしやがって」

「なんだよ、それっ」 

 ふと前を見ると少女はもちろん、ライダー男も下を向いたまま体を震わしている。

 ハメられたっ!!


「2人とも知ってたんですかっ ?! 知ってたんですよねっ!」

 俺は奴の腕を振りほどいて、2人に逆に詰め寄った。

「いや、悪い悪い、だってヴァリーが黙ってろって言うから」

 ライダー男が口を片手で覆いながら弁解する。


「そうだよー。あたい達ウソはついてないものねー、ケーケケケッ!」

 面白かったけどさーと、少女が大笑いした。


 クソッ、確かに、誰も死んだとは一言も言ってない。

 あっ、じゃあキリコも知ってたのか !


「すいません……ソーヤ」

 いつの間にかヴァリアスの後ろから、キリコが済まなさそうな顔をして出てきた。

「キリコっ、お前ぇ――」

「すいませんっ、副長に絶対言うなって言われてて―――だけど黙ってるのも悪くて…………

 だから会うとボロが出そうでなので、あまり会わないようにしてたんです……」


「ったく、お前は蒼也の家政婦か。何のために守護としてつけたと思ってるんだ。それにオレが連絡したのは、蒼也がこっちに帰ってきてからだから、嘘ついてたわけじゃないだろが」

 そういえば正月に来た時に、俺がそれとなく訊いても黙ってたのは、そういう訳か。

 この悪魔トリオ プラスワンめっ! 


「あっ―― !!」

 俺は慌ててまわりをうかがった。

 だが、夜の11時近くの公園で、騒いでいる俺達に注意を向けている気配はない。

「安心しろ、ソウヤ。ちゃんとお前が着た時に隠蔽をかけてるよ。近くまで来なきゃわからないよー」

 少女がウインクした。

 良かった。地元だけによけいドキドキしちゃったよ。

 しかし安心したら腹が立ってきた。


「おいっ、今まで何してたんだよっ? まさか陰で俺の事こっそり見てたのか?!」

「そんな厭らしいマネはしてねぇよ。あの仕事――― いくさだったんだが、いや、つい楽しくてな。

 力出しすぎちまって、また力の調整に時間喰っちまったんだ。こっちの亡者でな」

「ハアッ !!? 楽しいって……大変な戦いじゃなかったのか……?」

 だってリブリース様はあんなに酷い怪我したのに…………。

 俺の視線で気が付いたのか、奴が言った。


「コイツはな、敵にやられたんじゃないぞ。一緒に参戦してた火のヴァルキリーだ。

 コイツをボコボコにしたのは」

「イヤっ、恥ずかしいから言わないでっ!」

 リブリース様がしゃがみ込みながら、両手で顔を覆った。

 そんな事にお構いなく、ナジャ様が続ける。


「そうなんだよねー。あたいもキーラ(ヴァルキリーの名)から聞いてるよー。

 戦闘中だってのに、リースがいきなり抱きついてきたって。だから思わず本気で火弾打っちゃったって」

「いや、その…………ほら、戦う女は美しいって言うじゃん? ちょっと見惚れちゃってさぁ。そしたら思わず力一杯反撃されちゃって…………。

 こっちも油断してたんだよねぇ。避けきれなかった……」

 少し恥ずかしそうに、だが全然反省していないこの痴漢男が言った。


「え、じゃあ、あの足は……?」

「ああ、あれはね、ちょっと回復させようと気ぃ抜いて歩いてたら、死にぞこないの悪魔の口に突っ込んじゃったんだ。

 ハハ、ライオンの檻じゃないからね」

 何しろそこら中、死骸だらけだったからうっかりしてたと、ヘラヘラ笑った。

 このヒトはアホなのか――?


「だから、先に帰らせたんだ。もう終わりかけてたし、お前から着信もあったみたいだから」

 奴が俺の右腕のスマホを指して言った。


「じゃあ本当にヤバい訳じゃなかったんだ…………」

 今度こそ体の力が抜けた。

「お前、オレが殺られると、本気で思ってたのか? オレが勝てないのはあるじだけだぞ」

「あるじって…………まさかあんた、自分の主人にも挑んでるんじゃないだろうなぁ?」

「そうだよー、こいつらは戦バカだからね。神々にも戦いを挑んでるのさー」

 呆れ顔で少女が言う。

 いや、それって―――エエッ??!


「蒼也お前、この宇宙の果てがどんなとこか知りたいと思った事はないか? 果てがあるならその先がどうなっているのか。もしくはこの宇宙の外とか」

 街灯の灯りに背を向けて、影になった奴の銀色の目だけが異様に輝きだす。


「オレはな、いつかこの世界だけじゃなく、もっと上の世界を見てみたいと思ってるんだ。

 それこそ神々が来た本当の世界をな。

 だからまず神――主を超える。それが高みを目指す一歩になるんだ。

 ただ、さすがに我が主、器も力も大き過ぎてまだ一回も勝てん。

 まあ焦らずにいつかは越えてやるがな」


 えええっ、お父さん良いんですか? 

 こんな獅子身中の虫みたいな奴を放っておいて。


「おれもだよん。オスクリダール闇の神様をもし倒したら、スピィラルゥーラ運命の女神様が、相手してやってもいいって言ってくれてるんだ。

 これで戦わなくちゃ男がすたるというものだろう?」

 その女神様、闇神様に恨みでもあるのか? それとも面白半分なのか?


「あたいも上の世界の美味いモノ、食べてみたいからさー。でもそれにはまず、知の神リテラートゥス様の度肝を抜かないといけないのさ。燃えるよねーケケケ」

 いろいろ抜かされてるのはこっちなんだけど。

 って、あんたもかいっ!


「だけど……そんなこと出来るわけないだろ? いくらなんでも……」

 神様は絶対唯一の脅威の存在のはずだし、いくらなんでもその創造物が…………。

「蒼也、オレ達、創世の使徒が『神の傭兵』って言われてるって聞いただろう。なんでかわかるか?」


 え……オレたち? あんただけじゃなくて?

 思わずリブリース様に振り向くと、彼は「あれ、言葉足らずだったっけ?」と言った。

 おい、意味がずい分違ってくるぞ。

 キリコは「私は違いますよ、一緒にいさせてもらっただけで、実力はないですからね」と手を振る。


蟲毒こどくって知ってる?」

 少女が綺麗な瞳を向けて小首を傾げた。

「ええと、確か……壺とかに毒蛇や毒虫とかを入れて共食いさせると、残ったやつの毒性が強くなって、それを呪いに使うとかいうヤツですよね?」

 俺も昔のマンガで読んだだけの知識だけだけど。


「うん、まあそうだよ。あと念とか、エナジーとかもね。

 創世期の話は知ってるよね? 

 あたい達、創世期の使徒はね、その『蟲毒の使徒』とも呼ばれてるんだよ。

 あのアドアステラという閉鎖された中で、初めての仲間同士での殺し合いをしたからねー」

 少女の瞳が深紅色に変化した。


「他所の神々はやらないそうだね。なんでも危険だから禁じ手なんだって。自分たちの創造物が力をつけ過ぎて、反逆でもしてきたら面倒でしょ? 

 しかも制御出来なくなったら大変だからね」

 そう言う黒い男が目や口から、黒い瘴気が立ち昇らせながら立ち上がった。


「前に創世期に、半分くらいの使徒が消滅したって言ったろ。あれは正確じゃない。まともな状態の奴だけを数えたら、20分の1も残らなかった。

 他はほとんど、辛うじて生きてたってだけだ。オレ達がほとんど吸収喰ったしちまったからな」

 そう言って白髪の悪魔は白目を黒くさせて笑った。



「…………ソーヤ、私は違いますからね。刃向かったり出来ませんから」

 いつの間にかキリコが傍に来て、唖然としている俺に囁いた。

 本当か? 

 お前もあっちの仲間じゃないのか。変化したりしないのか?


「だけどねー、さすがにあたい達を創った神々は、他所とは断然、格が違うのさ」

 少しウットリするように少女が遠くを見る。

「そうそう、この我が儘を聞いてくれる度量も持ち合わせててね」

 黒い霧を引っ込めた男が軽く肩をすくめてみせた。


「「「それでこそ 我が主っ!!」」」

 一歩後ろで、キリコも頷いている。

 何なんだよ。こいつら………………!?


「さて、しばらく時間を無駄にしちまったから、明日からまたしごいてやらないとな。まったくこの調子だと、千年くらいじゃ時間が足りんかもしれん」

 そう言ってキリコが差し出した、あの長い帯のような紙をビラビラと、引っ張るように流しさ出した。


「ハアァーッ??! 何言ってんだよ。勝手にいなかったくせに。それに俺の一生、なんで訓練に明け暮れなくちゃいけないんだよっ!」

「お前、自分のことをすぐ忘れてるだろ。お前はあの方の要素エレメントを持っているんだぞ。つまりオレ達と同じような力を持つか、それ以上になるか、これからの訓練次第なんだ」


「そんなの――、どう生きるかは俺の意思で決めていいんだろ?」

「もちろんだ。だが、最低でも基礎だけはちゃんと作らないと、力と体の歪みができて心体ともに崩壊するぞ。能力がもう発現しちまってるんだから、動き出してる力の成長は止められん。

 少なくとも成長期が終わるまでは、正しく導いてやらんとな」


「まさか、それって、俺が魔法が使えるようになったからか―― ?!」

「その通り」

 サメ男が今までの中で、一番底意地の悪そうな顔でニンマリ笑った。


 なんてこった…………。

 あの時初めてのギルドで、言語スキルを貰った時か? それとも空間収納が出来るようになった時か?

 とにかく俺は自分で知らないうちに、この悪魔の契約書にサインしてしまってたんだ。

 

 ……………………もう後戻り出来ない……。


「俺が本当に自由になるには……強くならないと駄目って訳か……」

「おお、やる気が出たか? 別に今でも自由だぞ。嫌なら全て忘れて全部リセットすればいい。

 元に戻るだけさ。全て忘れてあの頃のようにな」


「このヤロー……。俺がそれが嫌なの知ってて言ってるだろ……」

「そうだ、過去を振り返るな。過ぎ去った事より、これからどうするかを考えろ」

 奴が俺の背中をバンバン叩く。


「痛いって! ったくなんで父さんはよりによって、あんたなんかを―――」

 俺は溜息をついた。


「…………あんたもあんたなら、父さんも父さんだよな……。

 こんな自分の寝首を、いつ掻くかわからないような奴を野放しにしてるんだから……」

「さすがだろ。オレ達ファミリーのボスは」

 そう言って俺の首にがっしり腕をまわしてきた。


「オレもお前が兄弟で良かったよ。からかい甲斐あるしな」

「この野郎~~~」


 あんたには、いてもいなくても振り回されっぱなしだよ。

 おかげで癒しの水はとっくに飲み尽くしちまったし。

「言っとくけど相方なら、もうちょっと俺の意見を尊重しろよな。でないと本当にリセットするからな」

「もちろんだ、相棒」

 そう言った奴が真剣な顔をするのを見て、俺は急に可笑しくなって吹き出してしまった。


「なに笑ってんだよ」

「…………スマン。だって、あんたがマジな顔するから……」

「あ゛あ゛?!」



 こんなオラオラ系の奴が、なんで俺の守護神ガーディアンなんだろうと思うところもあるが、少なくともこいつは俺を置き去りにするどころか、一生引っ張りまわす気なんだな。

 俺はあらてめて奴に向き直った。


「悪かった。とにかく これからも宜しくな、相棒」



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   おかげ様で、第2章はこれで終わりです。

   ここまで読んで頂きありがとうございます。

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