01:傷ついた少年はメイドと出会う
1
オアノス自治区は南方大陸の都市国家エリオンの南方に位置する山岳地帯の中心にある、小規模な過去文明のシェルターを改造し造られた都市である。
高高度砲撃の対策用に四基レールガンがあるが、うち三基は既に老朽化の為使い物にならず、残った一基の整備用部品として解体し、騙し騙し使っている。
都市の主要産物は傭兵と造船、故にシェルターから少し離れた位置に刳り貫かれたように存在する造船所は、エリオンの翠色の戦艦を建造ないし修理し続ける。
傭兵もまた<玖音老人>と呼ばれる武侠を中心とした武術体系を持ち、評価は高い。
そんな都市だったが、一つの歪みを抱えていた。
傭兵の力は権威となり、そして腐敗を産むのである。
シェルター内の都市、その中でもひと際多くの区画を保有統合し、屋敷と言っても過言ではない経路にしたもの。
その入り口から少年が男に蹴り出され、転び、顎を地面に撃つ。
「っ……」
「帰れ帰れ、お前何がしたいんだよ」
痛みで頭の中がいっぱいな少年に、扉の先の青年は言い放つ。
青年の名は宗司・ジェイ・クラウス、この大陸で高貴を示す黒い肌を持ち、背は中肉、だが顔つきは東洋人のそれに近い。
少年の方は白い肌、金色の髪、所謂南方大陸でいう「悪魔の肌と髪」として忌まれるものだ。
「アリメを……返せ……」
腹を抑え、呻くように歯を食いしばって少年は言う。
少年はここから北に数百キロ離れた村落に暮らしていたが、戦場帰りの宗司に村を襲われた。
町を守る武侠はいたものの、宗司の紅の奇鋼礼装はそれを赤子の首をひねるように剣の一閃で叩き切られ、村は燃やされ幼馴染は略奪品として奪われた。
生き残った長老は何か叫び散し、この世の終わりのように嘆いていた、神殿からの御神体が奪われたと言っていたが、神殿の中は少年が入れない場所なので、そこまで嘆くものなのかと少年は思っていた。
少年はそこから輸送船を乗り継ぎ追い、なんとか半年かけてたどり着いて結局忍び込めたものの幼馴染の顔を見るのは叶わなかった。
「アリメ?誰だそりゃ?」
知らないというわけではない、少年を挑発するためにとぼけただけである。
「知らないとは言わせない……僕らのヒパの村を燃やして……みんな……みんな殺してっ……!」
少年が怒りに満ちてく。
だが、苦痛で肉体は動かない。
「ああ、たった今思い出した。あの女かあの女、いやぁ、ホワイトスキンの村、それも男とばばぁだらけの場所なんざいくら燃やそうがどうでもよかったからな!はっはっははっはっは!」
手をたたき、あざ笑うように少年に近づき、そして少年の腹部に強く蹴飛ばす。
少年の小柄な躰が宙に浮き、そしてコンクリート仕立ての床に叩きつけられ、転がる。
「おい新入りメイド!死体の始末をでもしとけ!」
屋敷の方に振り向き、宗司は叫ぶように言い、そして屋敷の中に入って行く。
ばたん、と強くドアが閉められた。
残ったのは腹を蹴られ意識を失った少年……辛うじて命を繋いでいるものの、虫の息の状態。
そんな少年に、屋敷の扉を開け、白がかった金色のショートヘアが妙に印象に残る少女が近寄っていく。
少女もホワイトスキンだ、少年より背が少し大きいが、それでも150cmには満たない。
宗司の所のメイド服はミニスカートにノースリーブ気味の扇情的なスタイルだ、肌の露出は多く、少女の細い肢体を官能的に着飾っている。
少女は翡翠色の瞳を外にのぞき込む。
「生きてる……」
悪魔と忌まれしホワイトスキンの少女はそう、つぶやきながら少年に更に近づき、様子を見る。
微かだが、少年の息遣いを感じると、少女は肩からぶら下げたポーチの中から筒のようなものを取り出す。
それは浸透圧式の注射器で、それを少年の首に落ち着け、スイッチを押す。
「応急処置はこれでいい……かな?」
表情を全く動かさず、少女はそう、呟いた。
2
少年の、目が覚める。
灰色の天井、シェルター都市内の部屋の一つ。
柔らかい感覚、ベッドの上、野宿が多かった少年からすれば、久しい感覚。
上体を上げると、近くに椅子に座った扇情的なメイド服の少女。
「きみ……は?」
「えっと……生きてた、みたいですね……えっと、わたしの名……ペネロペ……ペネロペ・キルケ・オデュッセリア……」
少女はおびえた様子で、たどたどしい様子で話す。
「ペネロペ……あの屋敷のメイドさん?」
「うん……人買いに買われて、でも、ホワイトスキンだから、いじめられて……」
「なんで、ぼくを?」
少年は疑問に思う、あの時、確かに自分は死んだと思った。
だけど、生きている。
恐らく彼女が治療用ナノペーストを使ってくれたのだろうけども、治療用ナノペーストは少年にとっては非常に高価な希少品ではあった。
「可愛そう、だった……から……」
「っ……!」
少年はペネロペの言葉を聞いて苦い表情を浮かべる、憐憫、ああ、ここまできて好きな子を取り返すことも何も出来ないからだ。
「……宗司を、どうにかしたいの……?」
訴えるような眼差しを、少年に問いかける。
「どうにかしたいに決まってるだろ!?」
「ひっ」
少年は叫ぶと、ペネロペは怯えた表情を浮かべる。
その怯えた表情で、少年ははっとなる。
「ご、ごめん……」
「う、ううん……私が、臆病なだけ、だから……」
互いに謝りあう、そして少しの、静寂。
「えっと、宗司をどうにかできそうな人、一人だけ、知ってるから……そこ、明日一緒に行こう?」
ペネロペが、先に口を開く。
その言葉は、希望に似ており、この金髪のメイドが今、自分の希望なのではないかという錯覚を少年は受ける。
「……何とか、なるのかい?」
「きっと、ううん、絶対」
ペネロペは、そう言い切った。
3
翌日、ペネロペと一緒にシェルター内の都市を散策する。
シェルター内は巨大な地下空洞となっており、そこに様々な建物が立ち並ぶ。
「ついてきて」
ペネロペはそれだけ言うと、少年の前を歩く。
たまに路地裏に入ったりして、少し不可解な感じがした。
「なんで路地裏?」
「えっと……宗司がいたから」
それだけのやり取りで少年も理由を悟る。
メイドの彼女が自分といたら、怪しまれるにきまってる。
何個かトンネルを抜け、巨大な階段を昇って行く。
上った先は青い空、階段を上りながら左右を見ると、80メートルはあらんかという巨大な砲が何基も空に向け突き立てていた。
「この塔、昔はみんな動いてて、船を飛ばしていたんだって」
ペネロペが、淡々と語る。
「砲じゃなかったの?」
「うん、ここはシェルターじゃなくて、港だったから。だけど、<黄金戦争>の後は対空砲台にしかなってないんだって」
「そうなんだ」
「不思議だよね、<黄金戦争>って何千年も前で、五百年前の<災厄>だって神話の時代なのに、どっちの兵器もまだ生きてるなんて」
ペネロペがら語る。後ろ姿だけど、金色の髪が綺麗だなと素直に少年は感じた。
「それだけ物持ちがいいように作ったんじゃないかな、だから、まだ生きてる」
「資料に関してはみんな燃やしたり捨てたりして、すぐにわけがわからないことになるけど……情報は短命、だけど、兵器だけは長命で、それで今も人を殺せてるから」
淡々と語るペネロペ、その言葉の真意が、イマイチ少年はつかめない。
そして階段を上り終えると、そこには石づくりの教会があった。
何の神様を崇めてるかもわからない、そんな古びた教会。周囲には雑草が茂り、綺麗な花も混じっている。
「ついたよ、入って」
「あ、うん」
教会の中は日光がステンドグラス越しに入ってきて、暖かさがあったが、人気は不思議なぐらいなかった。
礼拝に来る老人ぐらいはいるだろうに、と思いながら少年は周囲を見る。
「まだ来てないみたい」
ペネロペはそういうとベンチに座る、少しメイド服のスカートがふわっと揺れた。
少年の方の視界は、教会の奥の机に置いてある本が目に入る。
「本だ、読んでいいかな」
「読まれないより読まれた方が、本は幸せだと思う」
そっけなく返すペネロペ、少年は本を手に取り彼女の隣に座って本を読む。
かつて、世界は機械仕掛けの神々により制御されていた。
神々は星々の果てまで支配し、世界を繁栄させていた。
大いなる太陽を何個も支配し、力の檻にに閉じ込め力としていた。
そして、人々もまたその中で地球という星の中で文明を甘受していた。
神々は《大いなる収穫》を行おうとした、人の魂を全て刈り取り、そして魂なき人による完成された世界を造ろうとした。
だが、《大いなる収穫》を憎悪し、全てを破壊しようと善なる混沌の神が立ち上がった。
善なる混沌の神は十二人の竜の勇者を率い、神々の長である《黄金色の災厄》と決戦を行った。
決戦は熾烈を極めた、多くの者が死に、勇者達はその命を燃やしながら神々と戦い、そして不死である《黄金色の災厄》と相討ちとなり、星に堕ち、燃え尽きた。
善なる混沌の神もまた、その力を使い果たし、海の底にて眠りについた。
そして今、我々は生きている、善なる混沌、竜の勇者、その意思を、願いを引き継ぐように様々な意思を持ち、人は生きてるのである。
「竜神伝承、かな」
少年は本を読みながら、呟く。
善なる混沌の神もまた竜であり、龍の神による救世神話。
それは統亜神道や汎中原教とはまた別の信仰であり、最も新しい<災厄戦争>以後に発生した信仰である。
<災厄戦争>の記述はほとんどの地であやふやとなっており、この宗教は口伝をまとめた宗教であるが、この南洋の地や西方大陸では幅広く信仰されている。
「悲しい話だと、私は思う」
「そうなの?」
ペネロペの重苦しい言葉に、少年は疑問を覚える。
「だって……ううん、何でも無い」
ペネロペの言葉、それでも彼女の表情は大して変わらない。
「そうかな……」
そんな二人の耳元で、重い扉が開かれた音が鳴り、そして次に、足音が聞こえる。
少年は誰かな、と思い後ろを向くと、そこにいたのは背は2mはあろうかという、筋骨隆々の肌の黒い老人だ。
頭髪はすでにない禿げ頭、すらりとした長い鼻と白いもじゃもじゃとした髭、目は細目で覇気というものは感じられないが、頬に深い傷があり、手練れだと少年でも認識が出来る。
「ふむ、この子供が例の少年か」
片手で顎をさすりながら、老人は少年を見ながら言う。
「うん……宗司に殺されかけてました」
後ろを振り向かず、そのままペネロペは返す。
老人はそのまま足を進め、少年の座る席の前に立ち、少年も椅子の正面、老人の顔を見据える。
近くで見ると、大柄な老人の体がまるで巨大な猛獣のように感じ、その細目からわずかに見える眼光に、恐れを感じた。
「恐れることはない、お前が、いや、お前の村が宗司に何をされたか語れ」
「は、はい……」
萎縮しながら、これまでのことを少年は話す。
「ふむ、ふむ……略奪か、それはままある事だが、聊かその話では殺し過ぎではあるな」
「殺しすぎ……?」
「略奪にしても作法がある、まず食料は飢え死なない程度、女は残念ながら自由だが、働き手の男を殺しすぎてはいかん、宗司の奴は遊ぶように殺したと言ったな」
「え、ええ……」
思い出したくもないが、少年の記憶が浮かぶ。
戯れのように放たれたナパーム弾が小屋に当たり、燃えさかる村。
道化のような奇鋼礼装を周囲に配置し、文句をいった若者の四肢を村人の前で一本一本丁寧に引き裂いて行った。
更にその家族と思わしき老人たちを串刺しにして焼き殺した。
そして焼き殺した屍を、村人たちに無理やり食わせた。
少年も、彼の箸で直接口に屍の内臓を叩き込まれた。
近所の老夫婦だった。
よく、畑仕事を手伝っていた。
「よーく噛んで食え、ほら食え!上手いだろ人肉は!がっはっはっはっは!」
笑った後、宗二が白い歯を見せつけるような笑顔。
悪魔の笑顔、そして飽きたら女を連れて、去って行く。
あたりには蹂躙と殺戮だけが、残っていた。
その記憶を、少年は老人に語る。
「ううむ……」
老人は、深く頷きながら考える。
「外道の所業、ですね」
ペネロペは表情一つ動かさず感想を述べた。
その言葉にはおおよそ、人間らしいこころを感じさせない。
「……これが殺しすぎなのか、それとも普通のことなのかは僕にはわからないです。だけど、アリメを解放してほしい」
「それが彼女にとって不幸であってもか?」
老人は少年をにらみつける、細目の隙間に冷ややかな金色の瞳が少年の眼と合い、少年は心の底を見透かされたように感じた。
「っ……」
少年にもわかっていた、宗二の所を離れたとしても、アリメが幸せになれるとは限らないと。
むしろ情婦として飼われた方が幸せで、彼女もそれを受け入れてるのかもしれないと。
だけど、それを少年は頭の中で理解しても、納得は出来なかった。
「冗談だ、気にするな。聞いた話だけでも本当と解る、おぬしの幼なじみと賠償金を巻き上げに決闘を申し込んでやる」
老人の表情がほっくらとした笑顔に変わる。
「ほ、本当ですか……?」
「本当だ、そうでもしなければ眠れる竜が起きてしまうかもしれない。それだけは止めたいからな」
少年の両肩をぽんぽんと老人は叩く、少し力が強い感じがした。
「あ、ありがとうございます……」
つい、俯く少年。
老人は肩を叩く手を離す。
「さて、名を名乗るのがまだだったな、俺の名は《久音老人》(ジューインラオレン)宗二の師だ」
そして玖音老人は、左手の親指で自分を指し、名を名乗る。
「あいつの……?」
「ああ、師だ、弟子の不始末は俺がつける。お前は……おおい!キリエ!カミュ!二人でこいつを守ってくれ!」
玖音老人が叫ぶと、少し間を置いて足音が聞こえてきて、そして二人の少女が少年たちの前に現れる。
片方は水色が買った青髪のショートツインが特徴的なの少女、瞳は赤く、すらりとした顎と、少年と大して変わらない年頃に見える。
だが機械仕掛けの車いすに乗っており、もう片方の少女に押してもらっている。
もう片方は黒髪のロングヘアー、青髪の少女より少し背が高く、髪は少し乱れ、青髪の少女から顔をそらしてる。
青髪の少女は小柄な姿からはすこし背伸びした灰色のドレス、黒髪の少女は赤いミニスカートに灰色のパーカーと言った姿で傭兵には見えない。
「えっと、二人は」
「始めまして、私はキリエ、ラオレンさんの友達の武侠よ。こっちはカミュ、私の……恋人?」
青髪の少女が告げると、カミュと呼ばれた少女は顔を真っ赤にする。
「だ、だれが恋人……私はそういうのでは……」
「あはは、さっきまでベッドの上で乱れてたのに説得力ないよ?」
カミュを抱き寄せキリエは言う。
「不潔」
ペネロペがぼそりと、呟いた。
「えっと、お二人さんが護衛……?」
「うん、そういうこと、とりあえず決闘が終るまでは私達が守ってあげるわ、お金に関しては心配しないで。あのおじいちゃんには貸しがあるから」
ウィンクするキリエ、そして二人の少女に連れて行かれ、その場にはペネロペと老人だけが残された。
4
《久音老人》と多少話した後ペネロペはキリエ達と一緒に少年を宿まで送った後少年の様子をうかがい、大丈夫なことを確認し、宗司の屋敷に戻る。
屋敷の下働きや奴隷たちは重い雰囲気だ、宗司の機嫌を損ねれば首を跳ねられるなど日常茶飯事で、抱かれた女は飽きられるまでは生き永らえれる。
廊下を歩き、食堂に行くと談笑する女たち、そちらの方は奴隷として連れてこられたのではない、武林から来た女武侠や都市国家の支配者の娘などがやってきてる。
彼女たちは宗司が性豪との評判を聞いて来たり、女癖の悪い彼が手を出して忘れられなくした女達だ。
「えっと……パラムさん、宗司見なかった?」
ペネロペはその中にいる黒髪のポニーテールの女性に声をかける。
背はペネロペよりも少し高い程度の女性、褐色の肌と琥珀色の瞳が綺麗な美少女だ。
「え、今二階じゃない?」
「えっと……なら、この手紙、渡してくれませんか……?」
老人に渡された手紙を、ペネロペは渡す。
「いいけど、なにこれ?」
首を傾げるパラム、誰かのメッセンジャーを任されたのだろうかと思考する。
「夜伽のお誘い、嘘、玖音老人はここに忍び込んだ少年を保護したみたい、それで私にこの手紙を渡した」
そんな彼女に笑顔を少し作った後、いつもの冷淡な無表情で語る。
「えぇ……」
パラムの顔が、引き攣る。
だいたいが果たし状だというのは彼女はわかる、そしてペネロペは命知らずにも、その手紙を渡そうとしている。
彼は短気だ、気に入った女なら大丈夫だが、気に入らない奴なら何をするかはわからない。
ペネロペは白い肌だ、顔立ちは整い、美少女と言っても差し支えない、だが宗司は彼女を抱いてない。
彼は白い肌を嫌う、美少女は好きだ、だから抱くのは保留しているのだろうか、だが、抱くとしても、きっとマトモな抱かれ方にはならない。
「私はまた家の清掃作業でもやってますから……」
そう言ってペネロペは去り、用具室から掃除機を取り出し、清掃作業をする。
この館は宗司とその客人が好き放題乱痴騒ぎを起こす、だからこうしてメイドが毎日清掃し続ける。
他のメイドともペネロペは最低限のやり取りしかしない。だが自分が掃除する場所は一階ではなく二階だと他のメイドに言われると、ペネロペは二階に上がる。
宗司の屋敷は広い、彼の部屋のほかに客人が泊まる部屋やメイドたちの雑用部屋まであるからだ。
宗司の部屋に近づくと、女の荒い喘ぎ声、彼は性豪だ、ここに戻ればひっきりなしに女を抱く。
そうして二階で掃除機にゴミを吸わせてると、宗司の部屋にパラムが入り、すぐに怒鳴り声や女の叫び声が聞こえた。
「ひっ」
震えるペネロペ、そしてすぐに、宗司の後ろの気配、そのまま頭を殴られる。
転がり、激痛。
宗司の顔は怒り狂った形相をしていた。
「お前……何をしろと言ったかわかってたのか!?」
「ひ、ひぃっ……」
恐怖で震えるペネロペ、黄色い水がスカートの下から流れ出た。
頭が揺れて痛いと彼女は感じ、頭を抱えてもだえる。
だが、それでも宗司は加減をしていた。
「ちっ……」
彼女に一歩づつ、近づく宗司。
苦痛にもだえる、無表情だが必死に恐怖の顔を作って涙を流していた。
奴隷商から格安で勝った奴隷で、適当に射撃の的にするか犯し倒すかどうかと考えていたが、イマイチそういう気にも起きない。
今もそうだ、妙に萎えさせる、どちらをやっても思う壺のように宗司は感じる。
「っ……試合が終わったら覚悟しとけ」
「は、はいっ……」
怯える子犬のような反応、涙ぐんだ目、嗚呼、本当にこの女は腹が立つ、さも自分に自我などない機械のように振舞いながら、全てに手を引いて自分を嵌めているのではないかという嫌気がある。
「自分で漏らしたところも拭けよな!」
宗司はペネロペの元から去る、ペネロペは一人取り残され。また掃除を再開した。
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