第3話商人

「会談を許可いただきありがとうございます、恐れ多い事でございますが、感謝の言葉を直接言上させていただきます」


 肥え太った男が、商人達を代表してあいさつをしてきます。

 ギラギラと欲望に満ちた視線が汚らわしいですが、ここは我慢です。

 色欲と金欲に満ちた視線をおぞましく感じてしまいますが、それが人間です。

 諦めて対処するしかありませんが、不愉快な気持ちはどうしようもありません。

 まあ、色欲に関しては、ウォーレンが持ってくれる分には嬉しい事なのですが。


「別に礼には及びません、私が必要だと思ったから呼び出したのです。

 ただ、最初に断っておきますが、談合する事は許しませんよ。

 きちっと競い合って、正しい値付けをしてもらいます。

 私が談合していると感じるようなことがあれば、問答無用で守護神様に天罰を願いますから、その覚悟で今日の競売を行いなさい。

 たとえ王家の紹介状を持っていようとも、容赦はしませんからね」


 私の前に控えていた商人の一人、マドラーが僅かに身じろぎをした。

 最近王太子の取り入り、強引なやり方で商売を広げているという。

 特に許せないのは、困っている人間に高金利で金を貸し、王太子の名前を使って強引な取り立てをしていると聞きます。

 その相手には、困窮する騎士や従士もいると聞いていますから、許し難いです。


 王太子とその取り巻きは、自分たちの遊興費のために、事もあろうに、国を護るために働いてくれている、騎士団の予算を削減させたのです。

 裕福であったり役得があったりして、予算を削減されても騎士や従士の役目を果たせる者達はいいですが、そうでない者は借金をして役目を果たすことになります。

 そのように困窮した騎士家や従士家の妻や娘を、借金返済のための売春させようとしていると聞いています。

 耳にするのもおぞましく怒りを感じます、断じて許せません!


「色々と悪い噂を聞いていますから、その件に関しては守護神様に祈り念じお伝えしていますから、近々何らかの罰が下るでしょう。

 貴男達はその心算で身辺整理をしておきなさい。

 急に当主が死んでしまったら、商家と言えども混乱するでしょうからね」


「聖女様、それは、まさかとは思いますが、天罰が下るという事でしょうか?」


 商人を代表していた肥え太った男が、疑い深い眼で聞き返してきます。

 ですが、二度同じことを言う気はありません。

 このような腐った性根の者たちと直接話すのは、聖女としての礼儀のためです。

 王侯貴族のように、虚栄な礼儀は廃しますが、無礼を許す事は絶対にありません。

 私が側仕えの修道女に視線を送ると、直ぐに動いてくれました。

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