第2話ウォーレン騎士団長
「宝石売りたいので、護衛に第十騎士団のウォーレン卿を呼んでください」
私の命令を受けて、側仕えの者達が動き出しました。
先日、王太子の賄賂を受け取っていた修道女が、私の叱責を受けて処罰されたので、やましい所のある者たちは、それを隠蔽しようと従順なふりをしています。
馬鹿丸出しです、聖女の私を誤魔化せると思っているのですから、愚かです。
忙しいのでしょう、ウォーレン卿も直ぐには来てくれませんでした。
ですが、聖女の私に呼びだされて来ないわけにはいかないですから、急ぎの役目は副団長や騎士長に任せて、なんとか時間をやりくりしてくてくれることでしょう。
ウォーレン以外の騎士団長達も、普通なら聖堂騎士団に命じる護衛を、私がウォーレンだけに護衛を命ずるのを訝しく思っているでしょう。
いえ、これだけ偏った命令を繰り返しているのですから、もう私の想いに気が付いているかもしれませんね。
清廉潔白で実直で少し鈍いウォーレンは、私の想いに気付いていないかもしれませんが、恐らく周りは気が付いているはずです、もちろん王太子も公子たちも。
王太子たちがウォーレンに害を加えようとした時が、この国を見切る時ですね。
「遅くなって申し訳ありません、聖女マリーアンヌ様。
お呼び出しという事ですが、何事でございますか?」
「私との会談を求めて、神殿に商人達が参っているのです。
しかし信頼できる護衛なしに会談する事はできません。
私が心から信頼できるのは、ウォーレン以外にはいないのです。
ウォーレンとウォーレンが信じている騎士に護衛を依頼します」
「……はあ、信頼いただき光栄でございます、今直ぐ護衛を手配したします」
ウォーレンが不承不承で私の願いを聞き入れてくれました。
本来なら、聖女の護衛は神殿の聖堂騎士団が担当します。
聖堂騎士団が信頼できないのであれば、近衛騎士団に依頼するのが筋です。
王国でも最も席次の低い、第十騎士団に聖女が護衛を頼むのは、おかしいのです。
実直なウォーレンは、不審の思ってはいても、聖女の願いを無碍にはしません。
王国一の武勇を誇るウォーレンが第十騎士団長なのは、その出自の所為です。
表向きは士族出身とされてはいますが、本当は孤児なのです。
真面目に兵士の役目を果たすウォーレンを認めた養父が、養子に迎えたのです。
だから、家柄や血統を重視する愚かな連中が、ウォーレンを不当に扱うのです。
それこそが、私がこの国を見捨てた最大の原因です。
「王国騎士団」
騎士団長:一騎:
騎士長 :十騎:
騎士 :百騎:重装備で貴族出身
従士 :千騎:軽装備で平民出身
騎士が十騎の従士を指揮する。
騎士長が十騎の騎士と百騎の従士を指揮する
騎士団長が十騎の騎士長と百騎の騎士と千騎の従士を指揮する。
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