転生聖女は騎士団長に恋をする。

克全

第1話プレゼントと現状

「聖女マリーアンヌ様、王太子殿下からプレゼントが届いております」


「いつも通り丁寧にお断りしてください」


「しかし聖女マリーアンヌ様、いくらなんでもお断りしてばかりでは……」


 王家に賄賂を受け取った修道女が喰い下がってきます。

 ここはわざと不愉快な演技をして、二度と近づけないようにしましょう。


「黙りなさい、聖女が王太子に媚を売るなど、絶対にあってはならないのです。

 その程度の事は理解しなさい、不愉快です、二度と私の前に現れないように」


「聖女マリーアンヌ様、どうか許しくださいませ」


「聖女マリーアンヌに対して言い訳など不遜極まりない!

 王太子殿下からの賄賂受けるような者を、側仕えにしておくわけにはいきません。

 とっとと実家に帰りなさい、さもないと成敗しますよ!」


 私が本気で怒っているのを察して、側仕え達が王太子の手先を追い出してくれましたから、少しは身の廻りが静かになるでしょう。

 本来なら教会や神殿に現世の権力が介入する事は許されません。

 ですが現実には、王家や大貴族の影響が強く及んでいます。

 特に私が聖女に選ばれてからは、王家や貴族の介入が激しくなりました。

 こうなると、美女に転生するのもよい事ばかりではありませんね。


 私は、別の世界で死んで、この世界に転生しました。

 別に望んで転生したわけではありませんし、神に事情を説明されたわけでもなく、元の世界でマス塵が視聴率稼ぎで取り上げていた、前世の記憶を持った子です。

 真実このような事があるなんて、信じられませんでした。

 でも現実自分の身に起きた以上、精一杯二度目の人生を生きました。

 わずか十六年ではありますが、その努力が報われ、聖女に認定されたのです。


 ですが、その努力はいい事ばかりを呼び寄せてはくれませんでした。

 美しく生まれ変わった事もあって、王家や大貴族が私を手に入れたがったのです。

 神殿長や上級神官に賄賂を贈り、私を還俗させて、跡取りの正妻に迎えようと、画策したのです。

 早い話が、聖女としての桁外れた能力と名声、大陸一の美少女であることが、彼らに政略結婚を考えさせてしまいました。


 平成に生まれて令和に死んだ私は、政略結婚など絶対に嫌でした!

 女の権利をなんだと思っているだと、激しい怒りを感じました。

 ですが、この世界のこの時代には、女性の権利など全くありません。

 女性が色香を使って生き抜くことは可能ですが、表立った権利はないのです。


 しかし、私は諦めません、私には心に誓った人がおられるのです。

 まだただの見習女神官であった頃に、とても親切にしてくださった騎士様です。

 ひと目見て心を奪われた麗しの騎士様、あの方と結婚すると決めたのです。

 前世では恋すらする前に死んでしまったのです。

 今生で初めて恋心を知ったのです、絶対にこの想いはかなえてみせます。

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