風呂敷を広げすぎた白雪姫

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」

「アンタに比べたら全人類が一番よ、おブス!」

 辛口批評が評判のオネエ系魔法の鏡は女王の拳で叩き割られました。しかしこれで怒りが収まる女王ではありません。何せ全人類(男女問わず)が嫉妬の対象となったのですから。

 手始めに女王は、全国民の元に毒リンゴを持った猟師を派遣しました。ズドン!

 毒で死ななかった幸運な者には、散弾銃がお見舞いされます。粛正後に残った猟師は、全員集められて生存権をかけた殺し合いを強要されました。

 狩人デスゲーム編です。ここで生き残った猟師達の顔面を焼いた上に鉄仮面を被せ下僕とした女王は、秘術で凶暴化した彼らと共に周辺国に攻め入ります。魔法をたしなむ女王によって肉体強化された狂戦士たちは向かうところ敵なしです。

 たった一人の狂気によって侵される暗黒大陸。大地は割れ、草花は死に絶え、民に反抗の気力はもう残っていません。そんな中、灰色の雲間から光が差し込みます。

 立ち上がったのは、そう、我らが白雪姫でした。

 物語序盤で死んだと思われていた彼女は、明晰な頭脳と美貌により生き延びて、巨大な地下組織を結成していたのです。

 直属の部下である7人のこびとは、新政府軍の大臣として人々をまとめています。

「さあ教えて。女王は次に何をする?」

 暗い地下室で白雪姫が見つめる先には、

「新しい戦場が見えるわ。なるほど、おブスな発想ね」

 修復された魔法の鏡がいました。

 鏡は、今や女王への復讐のため作戦参謀として白雪姫の補助をしているのです。彼ないし彼女は口こそ悪いものの案外憎めないキャラクターで、すぐに白雪姫サイドの仲間たちと打ち解けました。復活の鏡編(外伝)です。

 常に戦場に立ち、自ら美しい者を消す興奮に取り憑かれている女王。すると地平線の向こうから林檎の描かれた旗を掲げた白雪姫の軍勢が現れます。聖りんご死闘編です。そして白雪姫は沢山の犠牲を払い、辛くも女王を捕らえることに成功します。

 ついに怒れる大衆の面前で処刑される女王ですが、なんとギロチンの刃が落ちる直前に禁じられた古代の魔法を使い、姿を消してしまいました。肉体を捨ててアストラル体となったのです。四次元世界へと逃げ込んで人々の目に見えなくなった女王は、様々な悪魔や堕天使たちと契約を結び、飢饉や災害の呪いを人々にかけ始めます。

 魔法を使えない白雪姫と7人のこびとは、魔法の鏡の助言で、一定の時間経過で肉体に戻れなくなってしまう秘術を使い、決死の覚悟で女王を追うのでした。

 アストラル体となり時間も空間も超越した両者の戦いは、タイムパラドックス編と大宇宙征服編に移りますが、連載20年目の今日に至っても未だ完結の兆しはありません。果たして白雪姫が地球へ帰る日は来るのでしょうか。

 次回、作者の都合により休載とさせていただきます!


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