第三話 義姉の剣
「姫殿下! お待ちください」
制止の言葉を「問題ありませんわ」と返すだけで、ずんずんと廊下を歩いていくリーザ。
ちなみに声を掛けてる侍女は今朝初めてリーザ付きになった者だ。
レオンと姉弟になってから一週間ほど経過したが、毎朝の恒例行事を知らない彼女はリーザの暴走を止めようと必死だ。
フリーデリーケに従ってリーザの朝支度の手伝いが終わると、リーザが急に部屋から飛び出したのだ。
先程まで一緒にリーザを世話していたフリーデリーケは既に彼女の目的地であろうレオンの部屋の前で待機していた。
「レオン朝ですわよ!」
淑女からかけ離れた大声でレオンの部屋の扉を自ら<どっぱん>と開け放ったリーザは素早く部屋に侵入する。
扉の左右に控える護衛隊士もリーザのその行為に何も言わない。
いやむしろ温かく見守っていた。
先週カールへ下賜されたアプフェルボンボンの話が、護衛隊士の中で好意を持って受け入れられている。
というか東塔一階には訓練場と親衛隊の詰所が併設されてるので噂はあっという間に広がるのだ。
ちなみにレオン専属の侍女クララはレオンの部屋の扉を開けたすぐの部屋で待機しているが、リーザの行動に関しては黙認している。
どうせ止めたって無駄であるし、何より主人であるレオンがリーザの行動のほぼ全てを望んで受け入れてるのだ。
今は拒んでいる入浴とトイレも、そのうち根負けして諦めるかもしれない。
拒んでいた朝の着替えの防衛線はすでに初日で突破されたのだ。
レオンが命令すれば流石にリーザの行動を辞めさせなければいけないが、そんな命令は出ないだろうとクララは確信している。
主人は筋金入りのシスコンなのだから。
何故か後ろにいたはずのフリーデリーケがレオンの部屋のカーテンを開けているがリーザは気にしない。
どうせ二人目のフリーデリーケの動きはリーザには捉えられないのだ。
リーザを追って来ていた新入りの侍女は王太子の部屋に入ることを躊躇している。
さっさと割り切れば楽になりますわよとクララが声を掛けるとこっそり入ってきた。
職業倫理が緩い。
リーザはそのままの勢いで寝室へつながる扉を<どっぱん>と勢い良く開ける。
「レオン! 朝ですわよ! いつまで寝ているのですか!?」
布団の中央程にある膨らみをレオンだと判断すると、リーザはその膨らみに飛び乗った。
「わわわわわっ何? 何?」
「レオン朝ですわよ!」
「なんだお義姉ちゃんか、おはよう」
クララはこんな非常識な朝をあっさり受け入れて、普通に目覚めの挨拶をするレオンを好意的に見守っている。
「はい、おはようございますレオン!」
リーザは満足そうに笑顔を浮かべると、挨拶を返す。
「さぁレオン、早く着替えますわよ!」
「えっちょっと待ってお義姉ちゃん」
「仲の良い姉弟はこうするのが当たり前なのだといつも言っているではありませんか。それにもうすでに何度も手伝っているのですし、今更ですよレオン」
そう言われればそうか。
とここ一週間の出来事を思い出して納得して寝台から出ると、いつものように両手を少し横に広げる。
それを見てクララは「随分と適応が早いですわね」と嬉しそうに呟くがどうせ誰も聞いていない。
「では脱がしますわね!」
ふんす! と気合を入れてレオンの寝間着を脱がすリーザ、
「姫様、そちらをお預かり致しますね」
「リーザ様、どうそこちらを」
脱がした寝間着をフリーデリーケが受け取ると同時にクララがレオンの服を差し出す。
三人掛かりで剥かれているレオンは完全に無抵抗だ。
新入りの女官は、姫殿下が王太子殿下の着替えを担当して、侍女二人が補助に回ってる状況を見て考えるのを辞めた。
よく見ると何か人数もおかしいし。
きっと奥向きの仕事というのは細かい事を気にしたら負けなのだと考えた。
王族の侍女に選ばれるというだけでも優秀なのだ、彼女の適応力と頭の回転は早い。
リーザがふんすふんすと半ば興奮状態で服を着せていると、フリーデリーケが洗顔と歯磨きの道具を台車に乗せてやってきた。
カーテンも全て開き、窓も開いている。
もちろんレオンの寝台は既に整えられているし、先程渡したレオンの寝間着がどこにも見当たらない。
なるほど、今日は久々にフリーデリーケは三人いるようだ、と納得したリーゼはレオンの着替えを終える。
「お義姉ちゃんありがとう」
「わたくしはお義姉ちゃんですもの、レオンのお世話をするのは当たり前なのですよ」
よく見るとすでにレオンの洗顔も歯磨きも終わっていた。
それは今朝既にリーザも体験したことだし、産まれてからずっとそれがフリーデリーケの仕事なのだ。
考えるだけ時間の無駄なのは生後三歳くらいで理解した。
「さぁレオン! 食堂に行きましょう!」
いつものように手を握ると
「お義姉ちゃんちょっと待って」
とレオンがその手を引き寄せてリーザを抱き寄せる。
リーザはきょとんと目をぱちくりして理解が追い付かずに抱きしめられている。
「お義姉ちゃん、昨日嫌な夢でも見たの? ちゃんと眠れた?」
と言って抱きしめられながら頭を撫でられる。
「いつものお義姉ちゃんと何かちょっと違うかなって」
少し心配そうに、でもリーザを安心させるようにレオンはふんわりとリーザを抱きしめ、丁寧に髪を梳くように頭をなでてくれる。
ようやく今の自分の状況を理解すると、一瞬で顔が林檎の様に真っ赤に染まる。
――あぁ、やっぱりこの義弟にはわたくしの心が分かるのだ。
まだ自分より背の低い義弟の胸に顔を埋め、ぎゅっと強く抱きしめ返す。
「そんなことはありませんわよ」
とまたレオンにだけは通用しない嘘をつくのだった。
台車をいつの間にか片付けてリーザの側に控えていたフリーデリーケは、主人の真っ赤になった耳を見て、ライフアイゼン産の林檎は、他の産地のものよりも小さくて、とても赤かったのを思い出す。
「今年はたくさん仕入れないといけませんわね」と呟くのだった。
◇
「わたくしとしたことが少し淑女らしくありませんでしたわね」
とまだ赤い顔しながらもレオンと手をつなぎ食堂へ向かう。
そういえば、と護衛隊士の一人がリーザに話しかける。
気安過ぎどころか不敬なのだが、リーザはまったく気にしない。
従五品下の護衛隊士には、昇殿、すなわち朝議の場と、東塔の出入りは護衛の為に許可されているが、発言は王族から下問があった場合のみだ。
勿論、職務遂行において必要とされることに関してや緊急事態においてはその限りではないのだが。
ライフアイゼン王国ではそのあたりが緩いが、建前上護衛隊士の方から王族へ話しかけることはできないのだ。
ついでにフリーデリーケもクララもその不敬を特に咎めたりしない。
彼女たちは主人の意を汲む事に長けた優秀な側近なのだ。
決して面倒くさがったり面白がったりしているわけではない。多分。
新人の侍女も、周囲を観察しながらふむふむと熱心に仕事を覚えようとしている。
でも残念ながら参考にならないだろう。
「カールが先日、リーザ様の剣術訓練の許可を陛下に頂いておりました。リーザ様さえよろしければ、本日朝食後からの訓練にレオン様と一緒に動きやすい服装でお越しくださいとの事です」
今朝はちょっと失敗してしまいましたわね。
と少し気落ちしてたリーザがその報告を聞くとすぐさま笑顔になる。
「本当でございますか! ありがとう存じます! 早速今日お伺いいたしますとカールにお伝えくださいませ!」
話しかけた護衛隊士はその笑顔にもうメロメロだ。
おいトーマお前ずるいぞ何勝手な事してんだ不敬だろと後ろでコソコソやってるが、超ご機嫌なリーザの耳には入らない。
話しかけたその護衛兵士はまぁこれくらいじゃ無理だろうなとは思いながらも、リーザのポシェットに視線が行くが、アプフェルボンボンはリーザには大事なとっておきだ。
レオンですらまだ貰っていないのだ。
でももしレオンが欲しがれば躊躇することなく喜んで全部渡すだろう。
リーザはお義姉ちゃんなのだから。
食堂につくといつも通りランベルトは不在だった、やはり既にフリーデリーケがリーザの食器を並べ終わって席の近くに控えているがリーザは無視だ。
レオンも焼き菓子以降不思議に思ってはいるが、リーザが意図的に触れないようにしているし、主従の仲も良好なので何も言わない。
レオンの食器も全て並べ終わってるのは多分他の侍女がクララに命じられて並べたのだろう。
レオンと二人並んで仲良く食事を始めるリーザ。
食事の最中、レオンの皿の側にパンくずが零れているのを確認すると
「パンくずが零れていましたよレオン。お義姉ちゃんが拾いますから動かないでくださいませ」
また甲斐甲斐しく世話を焼くのだった。
食事が終わるとリーザはすぐにレオンの手を取り、いつものように少し大股でずんずんと自分の部屋に向かっている。
訓練用の服は実家から持ち出してこなかったが、今後ろにいるフリーデリーケが既に部屋で騎乗服あたりを用意してるのは長い付き合いで分かっている。
怖いから後ろを振り向くのだけは我慢したが。
「じゃあお義姉ちゃんまた後で」
自分の部屋の前に来るとレオンは手を放して自分の部屋に戻ろうとする。
だが、がしっと両腕で捕まえられてリーザの部屋に連行される。
「ちょっと待ってお義姉ちゃん、着替えるんでしょ? 僕は自分の部屋に行くよ」
「何を言ってるのですかレオン、先にお義姉ちゃんが着替えますので一緒に部屋に入りますよ。わたくしが着替え終わったら、レオンの着替えをお義姉ちゃんが手伝って差し上げますからね」
有無を言わさずリーザの部屋に連れ込まそうになったレオンは、リーザの部屋の前で立っている護衛隊士に視線で助けを乞うが一人は微笑むだけで助けてくれない。
もう一人は何故か親指を立てて白い歯を見せている。
大丈夫かうちの護衛隊士とレオンは思いながら結局リーザの部屋に連れ込まれた。
クララは前者はリーザ派、後者はレオン派とあたりをつける。
わずか数日で護衛隊士含む親衛隊の半数の支持を得ているリーザは異常だ。
と言っても、<リーザ様がレオン様を尻に敷くのを応援する会>と<レオン様がリーザ様を掌の上で転がすのを応援する会>の二派で大多数を占めてるので、結局はどちらが勝っても二人でイチャイチャしてる姿しか想像できないので結果は同じなのであるが。
泡沫派閥としては<ランベルト様の認知度を上げる会>があるが、すでに崩壊寸前だ。
部屋に入ると予想通りフリーデリーケが衣装を用意して待っていた。
「お嬢様、こちら訓練服でございます」
「あら? 実家から持ち出しておりましたかしら?」
「いえ、こちらはわたくしが今丁度縫い上げたものです。寸法はすでに昨晩確認しておりますから問題は無いかと」
なるほど、今日は四人目がいたのかと納得したリーザは、早速着させて貰うことにした。
「では着替えさせていただけますか?」
レオンは着替えの為に手を離された隙に逃げ出そうと思ったが、護衛隊士は自分の味方ではないし、扉の前では今着替えを手伝ってるはずのフリーデリーケが待ち構えてそうな気がする。
この状況だとクララですら面白がってリーザの味方をしそうなので大人しくリーザの方を見ないようにしてひたすら目を瞑っていた。
「レオン、お待たせして申し訳ありませんでした」
「お義姉ちゃんは訓練服でもポシェットをつけてるんだね」
「このポシェットにはお義姉ちゃんの七つ道具が入っていますから、レオンのお世話をする時には欠かせないのですよ。さぁ次はレオンの部屋に行きましょう!」
リーザがレオンの手を握ると、レオンの部屋に向かって歩き出す。
訓練服は動きやすいのかいつもより歩くペースが速い。
レオンが後ろを振り向くと後ろからついて来てると思った侍女二人の姿は無く、新人の侍女と護衛隊士しかいなかった。
やっぱり部屋の前にいたクララとフリーデリーケに扉を開けてもらい部屋に入るとすでに訓練服は用意されていたようだ。
そう言えばクララ以外のレオン付きの侍女が見当たらないが、クララの指示ですでに別の任務に向かっているのだろう。
今日のリーザにはフリーデリーケ以外にも一人ついているようだが、周りをきょろきょろしたりふんふん頷いてるだけで何もしているようには見えない。
部屋に入ると、ふんす! ふんす! と興奮状態のリーザが襲い掛かってくる。
朝はいつも少し寝ぼけている間にすべてが終わっていたが、いざ正常な状態だとリーザの目が少し怖い。
捌かれる魚の気分ってこんな感じなのだろうかと思いつつも、既成事実を自ら作ってしまったのは確かなので、出来るだけ早く着替え終わるようにリーザに身を任す。
ちょっと呼吸が荒いのが気になるが、丁寧に丁寧に着付けてくれるお義姉ちゃんに感謝する。
「さぁレオン終わりましたよ! うん、訓練服を着るといつもよりもっと格好良く見えますね!」
「ありがとうお義姉ちゃん」
「わたくしはお義姉ちゃんですもの、レオンのお世話をするのは当たり前なのですよ」
いつもの台詞を言うと素早くレオンの手がつながれる。
初めてのレオンとの訓練で興奮してるのか、先程の着替えの興奮が冷めやらぬのかまでは分からないが、つないだ手から伝わるリーザの心は昨日と比べると随分軽やかで楽しそうだ。
後ろからついて来てるであろう侍女二人の動向に関しては気にしない。
「レオン様、リーザ様、お待ちしておりました」
「カール、今日もよろしく」
「カール! 本日はよろしくお願いいたしますわね!」
「リーザ様はどれくらい使えるのですか?」
リーザはきょろきょろと周囲を見渡すと、最近ちょっとだけ膨らみ始めた胸を張って自信満々に答える。
「こちらにある全ての武器は一応一通り使えますわ。他には、戦闘騎乗術、馬上槍、騎射、弓、弩、投石あたりでしょうか。
攻城兵器の取り扱いも習得してます。あ、あと一番得意なのは格闘術ですね。とは言ってもまだどれも切紙しか頂けてないのですが」
レオンとカールはポカーンと口を開ける。
旧シュトラス王国程では無いが、旧ローゼ公国は武断の家柄だ。
王族の連枝でありながらも没落しかけた伯爵家が、ライフアイゼン王国に匹敵する領土を槍一本で獲得し、王に献じて公爵位まで昇りつめた家だ。
戦争で切り取るだけでなく、硬軟織り交ぜて謀略、調略、吸収を繰り返し一気に勢力を伸ばした分、旧シュトラス王国以上に苛烈かもしれない。
だからこそ周辺諸侯はローゼ公国をライフアイゼン王国以上に畏怖し、ランベルトは周辺諸国の取りまとめをローゼ公に任せていたのだ。
リーザはそんな家の戦闘関連技術を女性の身ながら、初級免状の切紙とは言え全て習得していると言う。
「で、では本日は予定通り剣術の訓練を行いましょう。自分に合った剣を選んでください」
リーザは再びきょろきょろ見渡すが、どうにも気に入ったものは無いようだ
「カール、真剣でも構わないのでしょうか?」
「レオン様と組む時の訓練や模擬戦の時には許可できませんが、私との訓練であれば問題ありません」
「ではフリーデリーケ、あれを」
既にお持ちしていますとリーゼに手渡すそれはカールの身長を超える程の長さの両手剣だった。
リーザの倍ほどもある。
「わたくし、剣ならツヴァイヘンダーが得意ですのよ。南部ではツヴァイハンダーと呼ぶのでしたかしら?」
レオンもツヴァイハンダーを持ってみた事はあるが、とても振り回せるような代物では無かった。
しかも今リーゼが持っている得物はレオンが知っているそれよりさらに長いものだ。
カールはその巨大な剣を普通に持ったリーゼを信じられない目で見つめていたが、気を取り直すと自身は刃引きした片手半剣を手にした。
ライフアイゼン王国でツヴァイハンダーの使い手と言えば、最近常勝将軍から百勝将軍と民衆から称えられている猛将、バルナバス・グナイゼナウである。
カールは彼と何度も真剣での訓練を行った事もある上に、彼自身も免許皆伝の腕前なのだ。
「ではリーザ様がどれくらい剣を扱えるのかを確認いたします。全力で構いませんのでかかってきてください」
「わかりました。では全力で行かせていただきます」
リーゼはツヴァイハンダーを脇構えのまま、刀身の先を地面に引きずりながらカールに向かって駆け出す。
カールはツヴァイハンダーの基本攻撃である横薙ぎに備えて手にした片手半剣を中段に構える。
「せいっ!!」
――ブウン!
――ドガン!
「くっ!」
剣術の稽古の音ではない。
鉄の塊同士をぶつけ合うような鈍い音が響き渡る。
「せいっ! せいっ! やあっ!!」
リーゼは一度防がれた右薙ぎの攻撃を更に二度繰り返した後、四撃目を右下からすくい上げるように逆袈裟を繰り出す。
カールの片手半剣にはじかれてリーザのツヴァイハンダーが打ち上げられる。
打ち上げられた反動を利用して、リーザは柄の最も先端の部分に握りなおし、遠心力を利用した攻撃を繰り出す体勢に入った。
右足を一歩前に出し正眼に構え、上段からの渾身の一撃を繰り出す。
「えいっ!!!」
――ドン!
カールはまともに受け止めることを諦め、半身をずらし片手半剣でツヴァイハンダーの軌道を逸らす。
リーザの渾身の一撃は、訓練場の地面の土に刀身の半分程を食い込ませたところで止まった。
「はあっはあっ。カールに当てる事すら出来ませんでしたわ......」
「いやあリーゼ様、驚きました!」
「すごい! すごいよお義姉ちゃん!」
「いえ、全然駄目です。しばらく訓練をしていませんでしたから、たった五撃振るっただけで息が上がってしまいました」
「姫様、こちらをどうぞ」
地面に埋まったツヴァイハンダーを回収してたはずのフリーデリーケがリーザにタオルを渡す。
カールがツヴァイハンダーを探すがどこにも見当たらないので首をかしげているが、レオンとリーザは気にしていない。
フリーデリーケから貰ったタオルで汗を拭きながら
「カール、わたくしの剣術はどうでしたでしょうか?」
「そうですね、まずは最初の一撃は問題ありません。十分威力の乗った横薙ぎでした。切紙を許されただけあって基本動作、ツヴァイハンダーの扱い等は全く問題ありません。但し横薙ぎはツヴァイハンダーの基本攻撃です。相手はまず横薙ぎの攻撃を意識するので、確実に一撃で仕留める場合には、最初の一撃で敵の防御を抜く必要があります。横薙ぎ以外の初手を使えるようになると戦術の幅が広がると思います。ただリーザ様のツヴァイハンダーは通常より刀身が長いので、腰構えで刀身を見せない初撃は相手にとって脅威でしょう。中級免状の目録以上で習得する応用が大事になってきます。一気に戦術の幅が広がりますから。 今後の方針はとりあえずは目録を目指す稽古方法でよろしいでしょう。目録習得なら私でもお教えできますから。最後の攻撃は素晴らしい一撃でした。剣を長く持った上段からの一撃は十分力も乗ってました。足運びも問題ありません。ただし隙が大き過ぎます。大剣はどうしても一撃一撃の間の隙が生まれやすいですから、連携からの切り替えの早さが肝要です。そして逆袈裟ですが......」
カールは興奮して話が止まらない。
リーゼとレオンはキラキラした目で話を聞いている。
あぁこれはしばらく止まらないなと判断したクララは、自分の側に控えてる侍女にお茶の支度を命じた。
結局今日の午前の訓練は、カール先生によるツヴァイハンダーを用いた戦闘講座で終わってしまった。
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