第29話 レント村奪還 その後


王城へと戻った俺達は、集会場へと集まっていた、1週間ほど前には800ほどいた兵士が今では、200程まで減っていた。


後衛部隊に居た兵士達はレント村の後始末に手を取られていた為、今この場にいる兵士達は僅か100名ほどになっている。


そして、俺たちの目の前ではガッズが壇上に上がり勝利の演説を行なっていた。


俺は演説を簡単に聞きながら広く感じる集会場を見渡すとリンコが一人でガッズの演説を聞いているのが目に入る。


「リンコ、お疲れ様。

 ザハールはどうした?」


「あぁ、アユム……お疲れ様。」


リンコは少し顔を伏せて俺にそう言う、俺はリンコの右腕がない事に気づき、顔を少し曇らすとリンコが再び口を開く。


「ザハールは……死んだわ……。」


リンコが唇をキュッと噛みながらそう口にした。

俺はその言葉に更に顔を曇らす。


「そうか……」


リンコはうんと小さく頷き少し気まずい空気が流れる。


「……ねぇ、アユムはこれからどうするの?」


「俺か、そうだな……」


俺は急に来たリンコからの質問を少し考えてると、リンコは下を向きながら右肩に手を当てて話し始める。


「私は魔王を倒すよ、アユムは?」


「俺は……少し考えたいかな」


俺がそう言うとリンコはそうと言ってこの場を後にした、俺は魔王討伐について少し考える。


今回、魔族数十体であれだけの人数が死んだ。

その事実から今の俺たちが束になろうとも魔王を倒せるなんて到底思えなかった。


それに俺はこの戦いで思い知らされた、俺は勇者と持て囃されようと、隊長達よりずっと弱い事を。


そうこうしていると、ガッズの演説が終わり俺は集会場を出て自室へ向かうことにした。


集会場を出る時、視界に酷くショックを受けた様子のレイジが目に入ったが俺は構わず自室へと足を運ぶ事にした。


「疲れたな……」


俺は服を脱ぎ、近くへ投げ捨てる。

バサっと寂しい音を立てて服が地面へと落ちる。


俺はふと目に入ったこの世界に来た時に来ていた服を手に取るとコトンと音がして、一つの箱が地面に落ちた。


「なんだ、これ?」


俺はその箱を開けると中には指輪が二つ入っていた、その指輪を手に取るとズキズキと頭に酷い痛みを感じた。


俺はその痛みに耐えきれず、その場に箱を落として地面へと崩れ落ちる。


「……ック」


頭には大量の情報が入り込んでくる。

俺は地面に蹲りながら、ここに来る間の事を徐々に思い出していた。


ーーside:ヒマリ


目を開けると、私は医務室にいた。


「あぁ…聖女様、

 やっとお目覚めになりましたか。」


「レイシスさん……

 あの、戦いはどうなったんですか?」


「村の奪還は成功致しました。

 我々の勝利です。」


「そうですか……良かったです。」


レイシスは心底安心した様に胸を撫で下ろし、用事が立て込んでいるとの事でこの場から去っていった。


私は、身体を起こし医務室を後にして、自室へ戻る事にした、戻っている最中に廊下でリンコの姿が見えたので私は声をかける。


「リンコさん……腕が……」


「へへ……無くなっちゃった」


リンコはいつもとは違う様子で右肩を左手でなぞり、そう言い放った。


「そんなことより、ねえ?

 ヒマリはこれからどうするの?」


リンコは私をまっすぐ見つめてそう質問してくる。


「私は…世界を救いに行きます……」


私がそう言うとリンコは目を見開いて私の肩を片手で強く掴む。


「ねえ! 世界って魔王を倒す事よねっ!?」


「リンコさん、急にどうしたんですか?」


「ザハールも言ったんだ !世界を救えってっ!」


リンコは真剣な顔で私に詰め寄ってくる。

私は少し疑問に思っていた事をリンコへ聞いてみる。


「リンコさんはどうして

 この世界に来たんですか?」


「急に何よ?

 私は突然女神が現れて、気づいたら

 ここにいたわっ!」


「……やっぱりリンコさんも。」


「ねえ、ヒマリどう言う事?」


私も以前は女神が急に現れて、気づいたらこの世界に居たと思っていた、でも実際はそうじゃ無い事を私は思い出していた。


私は、この世界に私達が来た理由をリンコへ話す事に決めた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る