第28話 レント村奪還 終戦
「ふむ…我のドラゴンが死んだか…」
「随分と余裕そうじゃねえか?」
魔族が北側を見つめながらそう言う、ガッズは魔族に軽い挑発を入れて、攻撃に転じる。
「我一人で貴様等などどうとでもなるのでな。」
魔族は攻撃を往なしながらそう答える。
激しい攻防が続いている、後衛で見ているだけの俺たちに出来ることは何かないだろうか?
前衛ではガッズとガドナが魔族の攻撃を耐え凌ぎ、どうにか隙を突こうとするが、このままじゃ正直ジリ貧だ。
さらに魔族はガッズの攻撃を十分に耐え得る防御を有している、この場で魔族に有効打を打てるのはきっと俺だけだろう。
「はぁ……はぁ……」
「ヒマリ大丈夫か?」
「……はい。」
ヒマリもそろそろマナの限界が近そうだ、ガッズ達は憩の空間ありきで今は戦いをしている、ただでさえ2対1で拮抗している状況だ。
俺たちがやるなら今しかない。
「レイジさん、あいつの動きどうにか止めれたり
出来ないですかね?」
「……成功するかわんねえけど、いけるぞ。」
「信じていいですか?」
「あぁ、ただでさえ俺等は今ガッズさん達の
お荷物だしな……任せてくれ死んでもやる
さ。」
レイジは悔しそうに、そういうと目線をガッズ達の方向へやる。
「ヒマリ、マナはまだ残ってるか?」
「……はい、わかり……ました」
「俺に、補助魔法を掛けてくれないか?」
ヒマリはそろそろ限界が近そうだ、大量の汗を掻きながら魔法を維持している、ヒマリは憩の空間を解除するとマジックポッドを2つ口へ含む。
タリスマンを握り、俺に手を翳し自身のマナを全て集中させる。
「光よ…彼の者に…我の力をーマジックアップ…」
ヒマリは俺に魔法をかける、俺の体に光の靄が集まる、ヒマリは俺に魔法を掛けきると、膝から地面に崩れ落ちる。
俺は直撃する前に抱えて、その場に下ろす。
「雑魚がまた何か企んでおるな」
「挑発!」
魔族は俺達を興味なさそうに見てそう言う、空かさずドグルが挑発を当てる。
ガッズは俺たちの方を見て、何かを察した様に魔族へ向き直る。
「レイジさん恐らくチャンスは一回だけです。」
「あぁ、そうだな……」
俺は左手で杖の穂先から持ち手の部分までなぞる様にすると細かい魔法陣が幾つも浮かび上がる。
その状態で杖にありったけのマナを込め魔法を唱える。
「
俺の目の前に爛々と煌めきを放つ魔法剣が現れる、意識が段々と遠のいて行くのを必死で堪えると、身体のうちから血が口へ登ってくる。
「カハッ!」
「大丈夫かアユム!」
俺は震える手でマジックポッドを二つ口へ含む。
徐々に身体の震えが止まり、意識が鮮明になって行く。
「大丈夫です……!」
魔族は俺の魔法剣を見て、顔を顰める。
「あれは、ちと危険だな。」
魔族は俺目掛けて瞬時に駆けると同時にガッズが間に入ってくる。
俺の目の前でガッズが魔族と競り合う。
「土よ、天高くそびえる障壁となれー
「
レイジが魔族の背後を囲う様に土魔法を唱えると魔族はその場から離れる様に後ろへ飛ぼうとする。
「させねえよっ!」
「貴様ッ!」
ガッズが剣を捨て魔族の身体を抑える。
魔族の剣がガッズへ降り抜かれる。
「ウオォオオオッ!」
「死に損ないがッ!」
ガッズに振り抜かれた魔族の双剣を、腹部まで下げガッズは自身へ突き刺し、魔族の両手を抑える、レイジが放った魔法により魔族は退路を絶たれる。
「人間風情が舐めた真似を…」
それでもまだ余裕を持つ魔族の左右から
ドグルとレイジが押さえ込む。
「き、貴様等、死に損ないがッ!」
ガッズに両腕を押さえ込まれ、ドグルとレイジに左右の身体を押さえ込まれた魔族はもう身動きがとる事ができない。
俺は魔族の上空へと瞬時に飛び、魔族の脳天目掛けて魔法剣を向ける。
「杖技ー千手ッ!」
「人間風情がッ!!
魔族は強化スキルを使ったが、魔力の低い魔族は俺の最大まで強化された魔法剣を防ぐ事が出来ずに無数の剣撃が身体に打ち込まれて行く。
「オラァあああッ!」
俺は滞空ギリギリまで魔族へ魔法剣を打ち込み続ける、そのまま魔族の頭上へと落ち切る前にドグルとレイジが魔族から手を離しガッズの後ろ側へ放り投げてくれた。
俺はバランスを崩しながらも着地する。
「良くやった!!」
ガッズは口から血を吐きながら俺達にそう声を上げる。
「終わったのか……?」
ドグルもそう言って魔族を見るが、魔族は顔の原型を殆ど留めておらず、もう動く事は無さそうだった。
同時に後ろからドタドタと多くの足音が聞こえてくる、俺は後ろを振り返るとそこにはベンツやエレノアを始めとした兵士達が見えた。
「ガッズ総隊長!!」
「遅かったなあベンツ!」
「も、申し訳ありません!」
「いや、いい……
とりあえず、この剣抜いていいか?
痛えんだわ……」
そうしてガッズが腹部に突き刺さっている剣を引き抜くとレイシスが回復魔法を唱える。
レイシスはその後ヒマリの元へ駆けつけ、ヒマリを抱き上げていた。
「上手くいって良かったな」
「ですね、ありがとうございます。」
俺とレイジは拳をトンッと合わせると、ガッズがこちらへくる。
「良くやった!」
そう言って俺とレイジの頭をくしゃくしゃとして離れて行く。
「ベンツ、残りの魔族は何体だ?」
「殲滅完了です。」
「そうか……終わったんだな。」
「はい、我々の勝利です。」
そして、ガッズは村の中央へ行き声を上げる。
「作戦は成功だ!!総員撤退するぞッ!!」
兵士から歓声が大きく上がり、上空へと火弾が多く上がる、それを見て傷だらけの俺達は重い腰を上げた。
俺たちが村の外へと足を向けているとき後方支援部隊の人達が村の方へと入ってくるのが見えた。
遺体の回収や、息のある兵士の捜索をこれから行なって行くのだろう。
俺はそれを見てこの場の兵士達と帰ることにした、ザハールとリンコは無事なのだろうか。
ふとそんな事を考えながら王城へと向かっていった。
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