第27話 レント村奪還 開戦⑥


俺達は順調に魔族と魔物を倒していた。

主にエレノア、メル、ガドナはそれぞれ隊長格と言うだけあって援護も上手く、単体としても強かった。


そうして、村の中央付近へとたどり着くとガッズが傷だらけで一体の魔族と対峙していた。

その場は正に死屍累々と言っていい光景だろう。


多くの魔族と魔物に人間の死体が大量に詰む重なっている、ガッズの手前には赤髪の女性と青髪の青年が血塗れで倒れているのが見える。


「エミル……ダゾン……!?」


エレノアが、目を見開きそう言い放った。


「次から次へと……良く湧く虫だ……」


ガッズと対峙している魔族がそう言い放つ。

緑の髪に二対の剣をその手に握っていた。


「東か……もう村の魔族は我を除いて数人しか

 居らんのだな、やはり人間は早々に始末せねば

 な。」


魔族が悲しそうに言葉を溢す。


「うるせえ!

 元はと言えばお前らが巻いた種だろうが!

 何一丁前に被害者面してんだ! あぁ!?」


そう言ってレイジが魔族を睨みつける。

魔族は何も言わずに、佇んでいる。


「危ないッ!」


俺はレイジを蹴り飛ばすと魔族の剣が俺に当たる直前まで迫っていた。

キンッと甲高い音を立てて、魔族の剣が止まる。


「ふぅ……危なかったな。」


「ガッズ隊長ッ!」


俺の前で傷だらけのガッズが魔族の剣を受け止めてくれていた。


「すまねえ、アユム……」


「大丈夫ですッ!」


レイジは態勢を立て直し俺に謝罪してくる。


「んぬぅ……!!」


ガッズは魔族と競り合って居るが、徐々に押され始めていた。


魔法剣マジックソード!」


火弾ファイアバレット!」


エレノアが魔法を唱え、魔族へ一閃すると同時にメルが火弾を放つ、魔族は右手の剣でガッズを抑え、同時に左の手でエレノアの魔法剣を往なすと後ろへ飛び跳ねる、メルの火弾は空を切り遠くで破裂した。


俺はその隙に魔族へ手を翳す。


「アナライズッ!」


----------------------------


〈ファーラット〉

種族: 〈魔族〉

職業:〈剣聖〉

Lv:232

マナ:788

攻撃:806

防御:623

魔力:436

俊敏:826


武器: 双刀コブラ 攻撃+70


称号:

〈魔王の配下〉

特性:

〈侵食LV2〉〈魔力感知LV3〉

〈剣技LV6〉〈火の加護LV2〉〈使役LV2〉

〈アストラ語LV5〉〈物理耐性LV4〉〈再生LV1〉

スキル:

〈火弾〉〈火柱〉〈瞬間加速〉〈部分強化〉


----------------------------


アナライズを使うと恐らくこの中の誰よりも高い

そのステータスに俺は絶句する。

辛うじて、魔力が低い程度でそれ以外のステータスは軒並みに高かった。


「ふむ……小僧、我を見たな?」


魔族は俺に問いかけてくる。


「あぁ……おかげでお前が

 魔法に弱い事がわかったよ!」


俺はこの場にいる全員に聞こえる様に精一杯の強がりを交えて答える。


「そうか……。

 だが、それが分かった所で何になる?」


「水よ邪を祓う、龍となれー水龍の砲撃アクアバースト!」


エレノアが俺の言葉を聞いて、魔族へと魔法を放つ、激流の如く放たれた水の龍が魔族へと向かって行く。


「我、聖女が願う。

 傷纏いし戦士達に慈悲の雨を…憩の空間レストフィールド!」


魔族が魔法を交わしている隙にヒマリは魔法を展開すると、この場にいる全員の傷口に光が集まる。


「ヒーラーはとは少し困るな」


魔族は水の龍を回避しながらヒマリに狙いを定める。


「挑発ッ!!……ッグゥ!!」


ガドナは魔族の攻撃を察知し、ヒマリへの攻撃を自身へ誘導するが盾ごと吹き飛ばされる。

魔族は再びヒマリへ視線を向ける。


「しょうのないタンクだな」


「剣技ー絶影斬ッ!」


ガッズは空かさず、魔族へ攻撃を行うが。

魔族はそれをギリギリで往なす。


「お前の相手は俺だろう?」


「死に損ないが、相手になるはずなかろう。

 貴様が弱いせいであの赤髪と青髪も死んだでは

 ないか!」


「うるせえ、てめえに何がわかる?」


「あの赤髪の死に様は特に無様だったな。

 お前の盾も務まらず、我に斬られてすぐに

 死んでしまった、あれではただの犬死だ。」


「てめぇ!!」


魔族とガッズは剣を競りながらお互いに挑発しあう。


「誰が犬死にですってッ!!」


エレノアは激昂しながら魔法剣を構えて、ガッズと競り合う魔族へ距離を詰める。


「いかん!エレノア!

 感情のままに突っ込むな!」


「貴様も犬死にしたいのだな。」


魔族はガッズの剣を抑え、エレノアの魔法剣を往なし、もう片方に持っていた剣でエレノアの背中を深く斬り付ける。


「ッツ!」


火柱ファイアピラー!」


魔族とガッズの間にメルが唱えた火柱が召喚される、魔族は火柱から距離を離す。

その隙にガッズがエレノアを回収して後方へ飛び跳ねる、エレノアの傷に光が集まり傷口が徐々に止血されて行く。


「すまねえ、メル。

 こいつを後方まで運んでやってくれんか?」


「総隊長……」


「大丈夫だ、俺は王国で一番強い。

 安心してこの場を離れろ!」


「……わかりました。ご武運をッ!!」


そう言ってメルがエレノアを担ごうと近寄る。


「メル……大丈夫、まだ私戦えるわ……」


「いかん、戻れ。」


「いえ……戦えます。」


「メル、エレノアを連れて戻れ。」


「総隊長……」


「早くせんかッ!」


メルは二人の板挟みになりながらも振り払おうとするエレノアをどうにか担ぎ無理矢理後方へと駆けていく、遠くからはエレノアの叫び声が聞こえていた。


「茶番は終わりか?」


魔族が退屈そうにそう言い放つ。


「わざわざ、待ってやったが実に下らない茶番

 だ、次はしっかり殺してやろう」


「次に死ぬのはお前だ!」


ガッズは精一杯の強がりを言うが、ガッズを除いて俺とヒマリとレイジとガドナしかこの場にはいない。


俺はこの五人であの魔族を倒し切るのは、かなり厳しく感じた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る