第24話 レント村奪還 奪還③


俺たちは兵舎で1回目の火弾が上がるのを見ていた、火弾を確認してエレノアがこの場にいる全員へ合図を送る。


「総員! 城壁の近くまで、移動するわよ!」


エレノアに続いて俺たちも移動を開始する。

簡易兵舎を出て、しばらく進んだあたりで俺たちは次の火弾が上がるのを待っている。


「とうとう、ここまで来ちまったな。」


レイジがやや緊張した様子で俺に声を掛けてくる。


「そうですね。

 ここまで来ておいて言う事じゃ無いんですけど

 俺達は何のために戦ってんでしょうね。」


魔王を倒すために、国の危機を救うために、そんな事はわかっている。

でもそれは俺達の戦う理由にはならない、過去の世界を知ってしまってなおの事俺はそんな事を考えていた。


「んなもん、俺もわかんねえよ。」


「すみません。」


俺はこの後に及んでどうしようもない事を聞いてしまったと後悔する。


「いや、いいんだ。

 俺も正直、魔王だとかよく分かってないから

 な」


「レイジさん……」


「この世界の事なんか、ぶっちゃけ知らん。

 でも、俺たちが気張らねえとルタ王国は

 危ないんだろ?」


「かもしれないですね……」


「じゃあ、逆に考えたら俺たちが気張ったら

 これから死ぬはずだった人が助かるわけだ」


「はい……」


「今はそれでいいじゃねえか。

 俺はこの世界の事は知らんけど、この世界で

 出会った人間は少なくないしな!」


俺はレイジのその言葉が胸に刺さる。

両手で思いっきり頬を叩いて俺は気合を入れ直した、近くでヒマリが心配そうにしていたが今はそんなこと気にしない。


「ありがとうございます、レイジさん!

 俺も今はそれで十分です!」


「おう! まぁ、死なんように頑張ろうや!」


そんな話をしていると北側から火弾が上がるのが見えた。


「6つ……」


エレノアはそう溢して、少し考えた後

俺たちのほうに振り向く。


「北側は奇襲に失敗したわ!

 だけど、あのベンツ隊長の部隊が全滅するとは

 思えない、何かイレギュラーがあったんだと思 

 うわ。」


「少し、危険だけれどもこのまま予定通り

 城壁を突破するわ! 総員! 進むわよ!」


エレノアは大丈夫と小声で呟き、先導を切って進んでいく。


俺たちはそのまま城壁へ到着すると、村からは激しい喧騒が聞こえる。

エレノアとメルが魔法を唱える。


「水よ邪を祓う、龍となれー水龍の砲撃アクアバースト!」


「闇祓う炎の厄災をー業火の厄災ファイアディザスター


激流の如く放たれた、水の龍と全てを焼き尽くすか如く眩い光を放つ炎が村の城壁に大きな穴を開ける。


「総員! 突撃 !」


エレノアの声に続いて俺たちは東側から村へと入り込んだ。


「ナニゴトダ……!?」


魔法剣マジックソードッ!」


俺はいきなり、大穴が開いた事に呆気にとられている魔族目掛けて駆けていく。


「ッチ、ニンゲンメコソクナマネヲ……」


俺の攻撃は魔族に受け止められる。

俺は目の前の魔族と魔法剣で競り合う。


「危ねえ!挑発!」


俺の後ろから迫ってきていた人狼型の魔物の攻撃をレイジが受け止める。


「大丈夫か、アユム!」


「えぇ…レイジさんこそ!」


俺は魔族と競り合いながらそう答える。


「ヒマリ!アユムを援護してやってくれ!」


レイジがヒマリにそう言うが、ヒマリは身体を震わして動かない。


「おいっ!」


「は、はいっ…!」


ヒマリは間を置いて返事し魔法を唱える。


「風よ魔を射殺す弾となれー風弾ウィンドバレットっ!」


ヒマリの放った風弾は俺の方では無く、レイジの方の魔物に直撃し、予期せぬ動きに態勢を崩す。


「くそっ!挑発!」


再度人狼型の魔物がレイジに蹴りを放つがレイジは不細工ながらもギリギリで受け止める。


「ヒマリ! 俺は大丈夫だ! アユムの方を頼む!」


「……なさい。」


レイジのその言葉にヒマリは目から僅かに涙を零しわなわなと震えている。


「レンケイモトレナイトハ、

 ハナシニナラナイナ」


そう言って俺と競り合っていた魔物は俺から距離を取りヒマリへ距離を詰める。


「クソッ! 漂風ドリフトウィンド!」


俺は魔法を放ち、瞬時にヒマリと魔族の間に入る。


「コザカシイガキダ……」


「ヒマリ、大丈夫か? どうしたんだ……?」


俺が再度魔族と競り合いながらヒマリに訳を聞く。


「魔族って…人間じゃ…ないですか…

 私…お兄ちゃん…ごめんなさい…」


ヒマリはそう言って目に涙を溜めている。


「そっか…そうだよな。

 わかった、ヒマリは魔物を頼む!」


「……はい。」


レイジもその言葉を聞き、態勢を立て直す。


「ヒマリこっちの援護を頼む!

 さっさと片付けて、アユムを援護するぞ!」


そうして、俺たちの戦いが始まった。


ーー



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る