第23話 レント村奪還 開戦② side:ベンツ


ベンツは、簡易兵舎でガッズの部隊から火弾が上がるのを確認して、隊を動かす。


「総員!南に続けッ!」


ベンツの言葉にこの場の兵士が歓声を上げる。

そのまま、馬を走らせて村の北門へと一気に駆けあげる。


北門に近づくと、一体の魔族が立っていた。


「……一体だけか」


敵は大方南へ集中しているのだろう、ならこのまま内部へ入り制圧するまでだ。


ベンツは魔族へと全力で駆けて行き、馬から飛び降りて剣を放つ。


「俺に続けッ!」


ベンツの言葉に続き兵士達は北門へと一気に駆けていく、魔族の元へとたどり着いたベンツは放っていた剣で斬りつけるが、魔族が持っていた剣でそれを往なす。


「本当に人間は愚かだなぁ……」


「何……?」


魔族が手をあげると、上空には一匹のドラゴンが飛んでいた、北へ駆けていた兵士達もそれを見て、一斉に足を止める。


「ド…ドラゴンだと!?」


「本当に馬鹿だなあ

 戦う準備をしていたのがお前達だけだとでも思

 っていたの?」


「どういう事だ!?」


「その小さい頭で死ぬまでに考えればいいさ!」


そう言って魔族が俺から距離を取る。

上空のドラゴンは口に炎を滾らせこちらを睨み付けていた。


「あぁ、そうそう馬鹿な人間君

 そいつあまり飛べないけど、とても獰猛だから

 まぁ頑張ってね!」


魔族が小馬鹿にしたように捨て台詞を吐いて村へと入っていくと、俺の居た位置にドラゴンが降り立った。


「くそっ!

 総員目の前のドラゴンを片付けるぞ!」


戸惑っていた兵士達はベンツの声で正気を取り戻し、目の前の敵を倒すべく態勢を整えていく。


「っち、敵は俺が引き付ける!

 その間に、ありったけの攻撃を

 浴びせてやれ!挑発!」


ドラゴンはベンツの挑発に当てられ、怒り狂ったように咆哮を上げてベンツへ炎を吐きつける。


「盾技ー護姫アイギスの加護ッ!」


ベンツの大盾から、光が揺らめきだし、ドラゴンの炎を吸収するようにせき止める。


その後衛から様々な魔法がドラゴンに向けて放たれ直撃していくが、あまり効いていない様子でドラゴンはお構いなしにベンツへの攻撃を続ける。


嵐の様に魔法が飛び交う中、剣を手にした兵士達はドラゴンへと駆けていき、それぞれに攻撃するが、虫を払う様に、長い尻尾で弾き飛ばして行く。


「ッチ!長期戦になるな……」


ベンツの部隊は元より防御に特化した奇襲部隊のためドラゴンへ打点を十分に与えれる者はあまりいなかった、ドラゴンの攻撃は一人で全て受け切れる自信があるが、倒すとなるとなかなかに厳しい状況だった。


ベンツはドラゴンとの攻防を続けながら、なんとか倒せないかを考えるが、部隊の特性上どうしても長期戦になる事は明白だった、魔族も俺たちがドラゴンを倒すまで待ってくれるはずもない。


「情けないが、ここまでか……」


ベンツは事前に取り決められていた、合図を思い出す、奇襲が成功したら火弾を5発失敗したら火弾を6発打つ。


ここで止めるわけにも行かないな。

ベンツはそう判断し、声を上げる。


「火を6発放て!!」


ベンツがそう合図すると上空へと6発の火弾が上がる。


「全く情けないな……」


そう溢してベンツはドラゴンへと再び向きあった、勝手ながらも後続の部隊に全てを託して。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る