第22話 レント村奪還 開戦① side:ガッズ


前哨基地で部隊が整ったのを確認し、馬に跨ったガッズが声を上げる。


「総員! 進軍開始!! 」


ガッズの言葉を皮切りに兵士達が声を上げた。

そうして、ガッズが先導を走り続く様に兵士達も

馬を走らせた。


この戦いで多くの者が命を落とすだろう、だからこそ俺は命尽きようとも必ずこいつらに、この国に報いねばならんな。


ガッズはそう自分の心を鼓舞し、先導を駆け抜ける。


しばらく、走るとレント村が見えてくる

門を守る二体の魔族と6体の魔物がこちらへ気づき声を上げるのを確認した。


「総員! 奴らを一匹残らず殲滅するぞッ! 」


ガッズは先導を切って、門まで近づくと馬から飛び降りて、2体の魔物を斬り殺す。


「オロカナニンゲンヨ、オトナシクシテイレバイ

 イモノヲ。」


「魔族風情が驕るなよ! 貴様らはここで一匹残ら

 ず始末してやる! 」


ガッズの鋭い一撃を魔族が受け止める。

それに合わせて後続に続く、兵士達が次々と門を駆け抜ける。


しかし、門の少し先にすでに待機していた魔族達の総攻撃によって、不用意に門を駆け抜けた者の大半の命が尽きる。


「ケケ…ニンゲンフゼイガ、オゴルナヨ

 ユウチョウニ、ヘイヲカキアツメヤガッテ」


「っち魔族風情がッ! 」


ガッズは、目の前で競り合っていた魔族を力で押し切り、斬り殺そうとするが。

近くにいた魔物がガッズに飛び込みそれを防いだ。


「ドウシタニンゲン? コノテイドカ? 」


魔族は人間族より遥かにステータスが高い。

しかもそれに相応する魔物を大体3体は従えている。


門から見える魔族と魔物の数は約40体、北から奇襲するにはまだまだ、足りない程度の集まりだ。

なのでどうにか、こいつらをここにかき集める為の痛手を負わす必要がある。


俺が魔族と対峙していると一人の騎士がこちらへ向かってくるのが見える。


「総隊長、こいつは俺がやります!

 先へ行ってください! 」


「あぁ! ダゾンここは任せた! 」


ダゾンと呼ばれた青髪の騎士とダゾンを隊長と呼ぶ10人程の兵士が魔族へ向かっていく。


俺はこの場を任せて先へ進む。


「ケケ…アツマッテモヨワソウダナア…」


「あまり舐めないでくれる?これでもそこそこ、

 強いんだぜ?」


ダゾンと呼ばれた青年と兵士が1体の魔族を取り囲む様に展開する、それにもう一体の魔族も別の兵士達に同じ様に取り囲まれていた。


それを見て門の前に居る2体の魔族を援護する為に村の中から、何体かの魔族がこちらへ向かってきているのが、確認できる。


「二人に続けッ!」


ガッズがそう叫ぶと、歓声を上げて兵士達が村から出てくる魔族達を一体ずつ分断する様に囲んでいく。


何人もの兵士が殺されるが、それをフォローする様に、次々と他の兵士が援護に入り各個撃破を狙っていく。

その様子を見て、さらに村から魔族が援護に向かってきていた。


「ッチ…ニンゲンフゼイガ…」


ガッズが道を切り開く様に魔族と魔物を切りつけ進む、弱った魔族と魔物を兵士達が囲む。


しばらくそれを続けていた。

最初は40体ほどいた魔族達がすでにこの場に150体ほど集まっていた。


「どうした!この程度か!」


ガッズはそう言いながら魔族を斬り付けていく。

すでにここに居る魔族共を50体ほどは殺っただろうか?だがそれに比例する様にこちらも、かなりの人数がやられている。


現状作戦前の情報ではこの村に残る魔族は残り100体程度となりそれ以外の魔族はすでにこちらの迎撃に出ていることになる。


「火を放てッ!!」


ガッズは状況を確認してそう叫ぶと、上空へ5発の火弾が上がる。

それを見てガッズは再度前進を始めるが強烈な魔力を肌で感じ、立ち止まる。


「ぎゃーぎゃーと煩えなあ…」


そう言いながらこちらへ歩いてくる大きな剣を持った魔族が一体見える、横にはサイクロプスと言われる一つ目の大きな斧を持ったかなり強い魔物が一体並んでいる、恐らくこいつが敵の頭だろうか。


「オラァッ!」


俺はその魔族に先行して駆け抜け、鋭い一撃を放つ。

…が、易々とそれを受け止められる、危険を感じガッズはバックステップの要領で軽く距離を取る。


「ふむ…お前が大将か?」


「あぁそうだっ!」


「そうか、なら死ね。」


魔族がガッズへ間合いを詰め重い一撃を放った。

…が、ガッズはそれをしっかりと受け止めた。

攻撃を受けられた魔族も、ガッズの様に距離を取る。


「ほぉ…人間にしてはやるではないか

 大将とは名折れではないのだな。」


「魔族風情が、見限ってくれるなよ!」


目の前の魔族は余裕な様子でこちらを見ていると魔族の近くにいたサイクロプスが声を上げてガッズへ大きな斧を振りかぶる。


「グォオオオオオッ!」


それに合わせて魔族もガッズへ攻撃を仕掛ける。

ガッズは後ろから走ってくる二人の足音を確認して魔族の攻撃だけを受け止める、両手が塞がるガッズ目掛けてサイクロプスは斧を振り下ろす。


「火よ、全てを貫く槍となれー火槍ファイアランス!」


「剣技ー岩石卸!」


「グォアアアアッ!」


ガッズの後衛から大きな火の槍が飛びサイクロプスの斧を弾き、火の槍に続いて一人の男がサイクロプスを深く斬り付ける。

攻撃を食らったサイクロプスは後ろへ大きくのけぞり斬られた傷から大きく煙を上げ始める。


「良くやった!ダゾン!エミル!」


ダゾンと言われた先程の青年とエミルと言われた赤髪の女性がサイクロプスの方へと対峙する。


「総隊長!

 サイクロプスは私達が引き受けます!」


「あぁ…次から次へと…騒々しい。」


そう溢して魔族がエミルへと一気に距離を詰めて一撃を放つ、しかし激しい金属音を立ててガッズがその攻撃を防いだ。


「どうした?お前の相手は俺だろう?」


ガッズが魔族を挑発する様にそう言い放つと魔族はまた距離を取りガッズを殺気立てて睨んだ。


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