第21話 レント村奪還 決行準備⑤


ーーガヤガヤと兵士達の喧騒が響く。


王国を出てルタ平原を超え、さらに数キロ歩いたところには高く積み上げられた土嚢や簡易テントで固められた大きな前哨基地があった。


俺、レイジ、ヒマリの3人は基地内の開けたところでエレノアの元へと集まっていた、兵士達も含めて総勢50名ほど集まっている。


「さてと、みんな揃ったかしらね? 」


エレノアはパンパンと手を叩いて少し大きめの声で注目を集める。


「たいちょー全員揃ってますよー」


気怠い声で、そう伝えるのはエレノアの部隊の第一隊長のメルという女性だった。

20代くらいだろうか、気怠そうな猫目と腰まで伸びたロングの髪が特徴的だった。


「ありがとう、メル。

 コホンッ! …それじゃあ皆いいかしら? 」


エレノアがそう言うと俺たち含める総勢50名の兵士達が返事をする。


「まず、明日は前回ガッズ総隊長が話していた

 予定通りにレント村の奪還作戦を決行する

 わ。」


「それで私達は今回の作戦で東側から攻め込む

 運びなのだけれど、前回の情報の通り東側には

 村を囲む防壁があるわ。」


「そして今回私達は奴らの虚を突いて、迅速かつ

 確実に攻めなければならないの。」


エレノアは一呼吸おいてつらつらと説明を続ける。


「なので今から私達は明日の未明までに

 事前に東側に設けておいた簡易兵舎まで移動し

 て、しばらく待機する予定よ。」


「東側を陣取ったら作戦どおり北側の上空に火弾

 があがるのを待つ。」


「私達はそれを合図に東側から村の付近で待機そ

 して、南側から火弾があがると同時に一気に防

 壁を破壊して制圧する運びとなっているわ。」


エレノアは珍しく熱のある目をして演説を続ける。


「それと、今から私達の中で部隊を3つに分ける

 から、各指揮者に従って明日は動いてちょうだ

 い。」


「私の部隊が敵地に入って中央へメルの部隊が

 敵地に入って右側へガドナの部隊が敵地に入っ

 て左側へ展開するように動くのよ。」


まず、私の部隊から…そう言ってエレノアが部隊編成を続ける、俺達勇者3人は全員エレノアの部隊だった。


「以上が部隊の編成よ、最後になるけれど、

 この場にいる誰一人欠けない気持ちで…」


「敵を殲滅するのを第一に

 だけど、全員死ぬ気で生きなさい!! 」


エレノアが盛大にそう言うと、兵士達から鼓舞の歓声が上がった。


それからエレノアはメルとガドナへ指示して、ここにいる全員に研究所で生産されたマジックポッドを2つずつ手渡していく。


「それじゃあ全員、行くわよ! 」


エレノアの言葉と同時に歓声を上げてここにいる全員が先導を切るエレノアに続く。



ーーside:リンコ


「以上が、部隊編成となります。」


「決して楽な戦いではありません、ですが

 私レイシスが全力を持ってあなた達の背中を預

 かり、共に背中をお預け致しましょう! 」


レイシスが部隊編成を告げて兵士達に一喝すると兵士達が鼓舞するように、歓声を上げる。


そして、レイシスが私達一人一人に青紫の液体を手渡した。


「レイシス隊長、これなに?」


「リンコ様、こちらはマジックポッドですわ。

 マナを使い果たす前に必ず口へ含みなさい。」


「わかったわっ!

 ありがとうレイシス隊長」


「ふふ、お可愛いお方です事。」


そう言ってレイシスが私の頭を撫でてくれた。


それにしても、この世界にも回復アイテムがあったのね、この世界は十分ファンタジーなんだけど、こういう回復アイテムもあまり無いみたいだし、攻撃喰らったら普通に痛いし、ステータスにHPがないあたり、なんとなく不親切なのよね。


確かに、防御があがると身体が頑丈?になった感じはするし、以前スケルトンの刃が腕に当たった時も、闘気みたいなので守られてたっぽいけどちょっとした事故でトロルの時みたいになっちゃうし、勇者ってこんな弱かったっけなあ…


「どうしたんだリンコ…?」


そんな事を思っているとザハールが声を掛けてくる。


「別に、どうもしないわよ?」


「そうか…珍しく…頭を使っている様にみえたの

 でな…何事かと。」


「なによっ!

 いつもいっぱい考えてるんだからっ!」


「…ッフ。

 そうか…ならいい。」


ザハールは下手くそな笑みを浮かべて親指を立ててくる、さっきまで考えていた事がどうでも良くなって私は大きく伸びをする。


「んーっと!…まー歩けてるだけいっかっ! 」


「ッフ…緊張感のない奴だ…」


ザハールが子供を見る様な目でこちらを見てくるが、私は大人なのでグッと堪える事にした。


「では皆様、参りましょうか。」


先導を切るレイシスに続いて、ここにいる全員が歩み始めた。


明日はついに、開戦だ。



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