第19話 レント村奪還 決行準備③


魔法剣マジックソード! 」


「ガゥウウ…! 」


俺は息抜きがしたかったので珍しく、一人でルタ洞窟へと来ていた、俺の目の前では4匹のコボルトが殺気を放っている。


「ガァッ!! 」


しばらく様子を見ていた二匹のコボルトだったが俺が動かずのじっと待っていると手前の二匹が同時に飛び込んでくる。


「てやあっ! 」

「ゴゥッ! 」

俺は向かってくる左側のコボルトに回し蹴りを放ち、吹き飛ばす。

その流れで右側のコボルトを魔法剣で斬り殺す。


「ガァア…アァッ…」


「この辺りはやっぱ、こんなもんだよなあ」


動きも遅いし攻撃もイマイチ危機感を感じない。

当たっても恐らくそこまでのダメージにはならないだろうな。


そんな事を考えながら俺は残りの2体も魔法剣で倒し切る、魔法剣は魔力を刃に変える魔法だ最近わかった事だが、どうやらこの刃はある程度の質量を持つらしい。


どの程度の強度かはわからないが競り合い等もできるのだろう、便利な魔法だ。


「カチャン…」


刃が地面に触れると金属音ともまた違う様な音が響いた。


魔法剣は一度使えば少ないマナで維持できるので賢者の俺からしたら燃費の良い魔法だった。

そんな事もあり最近は近接戦も視野に入れて鍛えたりもしていた。


「はぁ…」


軽い溜息を吐いて、洞窟の壁にもたれて座りこむ。


俺は未だにエイレネの言葉が忘れられずにいた。


「エリス…大事な記憶…俺は俺…かあ…。」


俺はあの日を境に、元いた世界の事を必死に思い出そうとしたが、やはり妹がいた事以外に思い出す事が出来なかった、俺は訳もなく辺りを見渡す。


俺が切り伏せたコボルトの血が飛び散って洞窟の端端に付着していた。

近くにある大きな白いカビにも軽く付着くしていて中々に残酷な光景だ。


俺は自分でやった事ながらにそんな事を思った。

ふと、白カビが気になりもう一度それを見る。


何故かその模様にひどい既視感を覚えた。

俺はこの模様が何だったかを必死に考えるが考えれば考えるほど、頭が熱くなってくる。


知っているはずなのに思い出せない事に俺は段々とイライラしてきて気分が悪くなる。


「はぁ…」


疲れたし戻るか…


ーー


俺は王城へと戻り、浴場で汗を流してから食堂へと歩いて行く。

時間にすると昼過ぎくらいってところだった、この時間は普段なら俺は戦闘訓練している時間だったので少し新鮮な気持ちになる。


「あら?アユム!

 珍しいわね、こんな時間にっ! 」


俺が廊下を歩いていると後ろから声を掛けられたので振り返る。


「あぁ…リンコか。

 お前こそ珍しいなこんな時間に。」


「あぁ…とはなによっ!失礼ねっ! 」


「あぁ…悪いな、つい。」


リンコは頬を膨らませて俺を睨んでくる、俺は最近こいつの子供みたいな態度に若干の癒しを感じつつあった。


「アユム、その顔なんかムカつくっ!」


「そうか、まあそんな事は置いてだ。

 今日は訓練に行ってないのか?」


「むぅ…言ったわよ。

 剣が折れたから途中で切り上げたけどね。」


「そうか…それは、災難だな。」


「そんな事よりアユム、あんたこそ

 こんな時間から何してんのよっ!」


「一人でルタ洞窟に行ってたんだがな。

 数体魔物を倒したら、ちょっと気分がな…」


俺はありのままに今日の事をリンコに告げる。

洞窟での事を思い出して俺はブルーな気持ちになる。


「アユム…顔色悪いよ? 洞窟で何があったの?

 痛いところは? どっか変な感じとかない? 」


リンコが何故だか急に本気で俺を心配して捲し立ててくる、面白かったので俺はそれに乗ってみることにした。


「あ、あぁ…頭が割れる様に痛くてな…」


「え…ちょっと! じっとしてて!

 すぐに熱測るからねっ!」


そう言ってリンコがおでこを合わせようとしてくるので、俺はそれを交わす。


「悪いな、冗談だよ。」


「冗談なんかじゃないわっ! 何かあったら

 大変なんだからじっとしててっ!」


「だぁーっ!ちょっとからかっただけだ!」


リンコはしばらく固まった後に俺から離れる。


「はぁ…良かった…。」


「あ、あぁ…悪かったな、もうしない」


いつもみたいに騒がず本気で安心した素振りのリンコに俺は罪悪感を感じたので、話を変えることにした。


「俺今から飯食いに行く所なんだが

 良かったら、一緒にどうだ?」


「ん…? そうね、暇だしいいわよっ!

 お昼ご飯まだ食べてなかったしっ!」


「じゃあ、行くか!」


それにしてもこいつもあんな表情できるんだな。

そんな事を考えながら食堂へと足を向けた。

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