第10話 盾の勇者、弓の勇者 side:レイジ


今日は俺とザハールが合同で訓練を行う事となった。


俺の職業は盾の勇者と言って防御に特化した性能になっている。

ルタ平原の魔物程度なら俺1人でも十分に倒せるのだが、ベンツから受けた説明によると、俺はタンクに分類される職業らしい。


つまり、戦闘スタイルが敵の攻撃を受ける事に主軸を置いた物となっていると言う事だ。

俺は昨日訓練が終わった後、ステータスを見ていた。


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〈レイジ〉

種族: 〈人間族〉

職業:〈盾の勇者〉

Lv:13

マナ:100

攻撃:140

防御:226

魔力:110

俊敏:119


武器: 王国騎士の大盾 防御+30

   王国騎士の小剣 攻撃+15


称号:

〈異界の勇者〉

特性:

〈状態異常無効LV1〉〈即死無効LVMAX〉

〈剣技LV1〉〈盾技LV2〉〈土の加護LV2〉

〈アストラ語LV8〉

スキル:

〈シールドバッシュ〉〈挑発〉〈土弾〉〈土壁〉

〈絶対守護〉


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昨日ステータスを確認した限り、確かに盾の勇者に恥じないくらいには防御に特化していた。

俺と同じくベンツも重戦士といった防御に特化した職業の為初日は、ぼちぼち魔物と戦いながら守る戦い方の指南を受けていた。


途中からリンコの予定が空いたのでその後はリンコを交えて魔物討伐を行ない、訓練場に戻った後はリンコの斬撃を盾で受ける訓練をしていた。


そう言うわけで、俺とベンツだけじゃ狩り効率が悪く昨日はアユムの部隊と一緒に。

そして、今日はザハールと指導者のチリを交えてルタの森中層部まで来ている。


中層部を進んでいると、ベンツが静止の合図を俺たちに送る。


「前方から中級クラスの魔物が寄って来ている。

 各自、戦闘態勢!レイジは前方へ位置!」


俺は指示通り先頭に立って盾を構える。

ベンツは一番後ろで俺達を見守る。


次第に大きな足音が近づいてくる。

やがて、その魔物の姿が見えてきた。

身長は2メートル位だろうか?筋骨節々の青い人形の魔物が俺たちに気付くと声を上げながらこちらへ走ってくる。


「グアァアアアッ!!」


「下級のオーガだ!

 気をつけてかかれ!」


ベンツが皆に聞こえる様に声を上げた。

俺は、走ってくるオーガにスキルを使う。


「挑発!!」


「グォオオオオッ!!」


挑発を受けたオーガが俺に殺意を向けながら持ち前の棍棒を振り下ろした。

その棍棒は俺の大盾に当たるとガンッと大きな音を立てて止まる、中々の衝撃だ。


攻撃を止められた事に驚いたオーガは棍棒を引き態勢を整えているところに、ザハールが放った矢が突き刺さる。


「グアァアアアッ!!」


「ザハールさん!ナイスっす!」


チリがそう言って親指を立てながらザハールに笑顔を向けている。

ザハールは少し嬉しそうだ。


オーガが刺さった矢とザハールを見て攻撃対象を変えようとしていたので、俺は再度挑発を使う。


挑発に当てられたオーガは怒りのままに俺を睨み再度俺に向けて棍棒を振りかぶる。

俺はその棍棒に合わせて俺はシールドバッシュを使う。


「オラァッ!!」


ガキンッと音を立てて俺の盾がオーガの攻撃を弾いた。

態勢を崩したオーガにザハールが正確な矢を放つ。


シュンっと風を切る音とともに飛んでいった矢がオーガの額に深く突き刺さった。


「グアァアアアッ!!」


オーガは大きく声を上げ、頭を押さえている

止めを刺すように再度ザハールが幾つかの矢を放った、やがてオーガは生気を失い地面に倒れ伏した。


「よっしゃあ!

 ナイスだザハール!」


「…ッフ」


俺はザハールの元へ向かいハイタッチをする。

相変わらず無口なやつだが、ザハールはザハールなりに精一杯の笑顔を俺に向けていた。


「レイジ、ザハール良くやった。

 下級とは言えオーガを危なげもなく

 倒せるとは…君達は本当に凄いよ。」


ベンツが俺たちに労いを掛けてくれる。


「ザハールさんも凄いっすけど、オーガの攻撃を

 微動だにしないレイジさんも凄かったっす!

 本当に勇者様達はすげえや!」


チリも目をキラキラさせながら俺達を褒め称えてくれる。


「チリさん、ありがとう。

 でも俺は受けるくらいしか出来ないんですけど

 ね、オーガもほとんどザハールが倒した様なもん

 だし…」


「レイジがいなかったら。

 俺はオーガにやられていた…。」


そう言ってザハールがフォローしてくれる。


「そうっすよ!ベンツ隊長もですけど!

 僕たちが最高のパフォーマンスで敵と

 戦うには、レイジさんみたいなタンクや

 ヒマリさんみたいなヒーラーがいないと

 すぐにぐちゃぐちゃっすよ!!」


チリもそうやってフォローしてくれる。

凄く嬉しいのだが、俺もザハールやアユム。

それにリンコみたいに華やかに戦いたい気持ちが多少なりともあったりする。

その気持ちが俺の盾職に対しての不満を募らせる。


「レイジ、君の考えている事は良くわかる。

 私だってそうだった、タンクやヒーラー

 は敵を倒す事に向いていない…

 どちらかと言えば地味な職種だ。」


ベンツが俺の思っている事を代弁してくれる。


「ベンツさん…」


「しかしだ、仲間を守る事に関しては

 我々の右に出る物はいないだろう。

 君の盾が、君の大切な戦友の命を

 守るんだ、誇りを持てレイジ。」


「ありがとうございます、ベンツさん…」


俺はまだ、完全に納得したわけじゃ無かったがベンツの言葉に心の中で熱いものが込み上げて来た。

自分は自分、他人は他人。

俺は頭の中でそう切替ることにした。


それに、仲間の命を守るなんて格好いいじゃ無いか。


「レイジ…

 格好よかった…」


そう言ってザハールは下手くそな笑顔で俺を元気付けようとしてくれる。

俺は素直にその気持ちを受け取った。

情けないな、俺はそう思い心の中で自分に喝をいれた。


「ありがとうな、ザハール。」


「…ッフ」


俺はザハールの頭をくしゃくしゃして、気合を入れ直した。


その後も中層部で下級のオーガや風狼を数体狩って暗くなる前に俺たちは王国へと戻った。


そして、ザハールと一緒に風呂に入り今日の訓練の事を語ったりしながら、恒例となっている勇者メンバーでの食事を終え。


夜を告げる鐘と共の俺は床に着くのだった。

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