第9話 剣の勇者 side:リンコ


「おらぁ!右から一体飛んできてるぞ!!」


ガッズが私に向かって、注意を促す。

私は少し横目で右を見るとゴブリンが私に向かってボロボロの剣を振り下ろそうとしているのが、見える。


「らぁあ!!」


それを見て私は身体を軽く捻りながら、勢いをつけて右のゴブリンへと斬りかかる。

私が振り抜いた剣はゴブリンが振り下ろしている剣ごとゴブリンを叩き切った。


「リンコ、良くやった!」


そう言ってガッズが私を褒めてくれる私はガッズに当たり前じゃないと軽口を叩くとガッズは豪快に笑っていた。


「よし、この階層の敵はもうこれでお終いだな。

 今日は次の階層に進むぞ。」


ガッズの提案に私は同意してガッズの後ろへと続く。

私は昨日から、ルタ王国の近くにあるルタ洞窟でガッズの指導の元魔物との実戦訓練を行なっていた。

そして今私達がいるのは、ルタ洞窟の1階層だ。


昨日、今日と合わせてゴブリン戦士や大蛞蝓おおなめくじ。吸血蝙蝠と言った低級の魔物を私達はあらかた倒し終わっていた。


私はこの世界に召喚されてからすでにレベルが1から9まで上がっている。


この洞窟でだって、一度も危険な場面は無かった。

このまま、順調にレベルを上げていけば。

魔族が占領している村なんてすぐに制圧できるだろう。


「ここを降りたら2階層だ。

 今までの敵に加えて、コボルトと言う犬の

 魔物やスケルトンと言った骨の魔物が出てく

 る、コボルトは連携を得意としているし

 スケルトンは単純に攻撃力が高い。

 気をつけてかかるぞ。」


「大丈夫よ、ここの敵の動きも全部遅かったし

 この程度の魔物束になっても私に勝てっこない

 わ!」


私がガッズに啖呵を切るとガッズは、はぁ…と溜息をつく。


「リンコ、お前は確かに強い。

 だがな、油断してるといつか足元を掬われるぞ

 いくら相手が弱くとも、俺達がやっているのは

 命のやり取りだ、自分に自信があるのは良い事

 だがあまり慢心はするなよ。」


ガッズが臆病よりはマシだがなと付け加えながら私にそう言ってきた。

説教されたように感じ私は少しムカついたので適当に返事して、ガッズについて行く。


2階層に辿り着いてしばらく進んで行くと

5体の黄色い二足歩行する狼が見えてくる、あれがコボルトだろう。

私は先程の事を思い出しガッズに提案する。


「ねえ、ガッズ隊長。

 あのコボルト全部私が相手して良い?」


「ん…?まあ俺が居るから構わんが。

 無茶はするなよ。」


そう言われて、私は一瞬にしてコボルトに飛びついた。

私は握っている剣に闘気を纏わせる。


「剣技ー疾風はやて斬り!!」


私の放った剣技は一瞬のうちに3体のコボルトの首を跳ね飛ばす。


「ガォ…!?」


残った2体のコボルトがその様子に呆気に取られている。

すかさず私は逆袈裟の要領でもう一体のコボルトを二つに斬り伏せる。


「ガウゥゥ!!」


少し離れた位置にいたコボルトが私に気づき唸りを上げながら距離を取っていく。

私はその様子を見て、次の行動にでる。


薄い魔力が剣に纏われる。


風刃ウィンドスラッシュ!」


放った斬撃が距離を取ろうと後ろに跳ねていたコボルトに直撃し下半身と上半身が分かれて壁に打ち付けられた。


「楽勝ね…」


私は剣を一振りし鞘へと戻すと。

駆け足でガッズの方へ向かう。


「見たでしょ?私は慢心してるんじゃなくて

 ちゃんと強いの!」


「あ、あぁ…そうだなリンコ…お前は強いな。」


ガッズは半ば呆れたようにそう言うと、子供をあやす様に私の頭をポンポンと叩いた。


私は少し負に落ちなかったが、先程のガッズの講釈を許すことにした。


その後もスケルトンの集団やゴブリンの集団を難なく私一人で片付けて行く。


2階層に踏み込んでから2時間ほど経っただろうか、ガッズが立ち止まる。


「そろそろ、疲れただろ?

 今日もかなりの魔物を討伐したし、そろそろ

 王城に戻って今日の訓練は終わろうか。」


ガッズがそう提案してくる。

私はまだ、戦いたい気持ちもあったが、立ち止まるとふと自分の体から血生臭い臭いがしていることに気づく。


「うん、私も少し疲れた。」


「よし!じゃあ戻ろうか。」


そうして、ガッズと洞窟を抜ける事にした。

帰りの道中も魔物を見かけると、その都度私が1人で薙ぎ倒して行った。


ガッズはその様子をいつでもフォローに入れるように後ろで見守ってくれていた。


そうして王城に帰るや否や私は、自室へ向かい着替えを手にして浴場へ向かい身体を流す。


チャポンと小気味良い音と丁度いい温度のお湯に癒されながら、私はゆっくりと伸びをする。


「ん〜…はぁ…

 異世界召喚って来て魔王討伐って来たら、村を

 奪還した後は冒険者ギルドとかなあ〜…

 奴隷とか居るのかな?助けたいなあ〜…」


私はお風呂でそんな事を呟きながら。

満足いくまで、お湯に浸かっていた。


その後は自室でしばらく柔軟体操をして、食堂へ行くと他の勇者たちも居たので他愛無い話を交えながら一緒にご飯を食べた。


食事を終えると眠たくなって来たので、私は自室へ帰る。


「さーって…

 今日はどれくらい強くなったかなー」


私はカードを手にして開示と唱える。



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〈アカギ・リンコ〉

種族: 〈人間族〉

職業:〈剣の勇者〉

Lv:12

マナ:136

攻撃:216

防御:154

魔力:124

俊敏:112


武器:王国騎士の剣 攻撃+30


称号:

〈異界の勇者〉

特性:

〈状態異常無効LV1〉〈即死無効LVMAX〉

〈剣技LV2〉〈盾技LV1〉〈風の加護LV1〉

〈光の加護LV1〉〈アストラ言語LV4〉

スキル:

〈風弾〉〈風刃〉〈ケア〉


----------------------------


私はステータス表をまじまじと見た。


「9から12かー

 今日は結構倒したのにそんな

 上がってないなあ…」


私は少ししょんぼりとしながら、眠りについた。

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