第4話 戦闘訓練へ

食事を終えた俺たちは、メイドと共にガノンの元へと向かう。


「戻られましたか、では今後の事について

 お話させて頂きます。」


その言葉に各々、相槌を打ちガノンの言葉に耳を向ける。


それから、俺たちは今後の展開についての話をところどころ相槌を打ちながら聞いていた。


内容としては、今の俺たちが村の奪還に参加したところで、戦死するリスクが高い事から一月に渡って王国の近くに湧いている低級の魔物を通じて戦闘訓練を行う事。


訓練は王国騎士隊長のガッズを主体とした、部隊に参加し各職業の指導者の元行う事。


王国内部の空き部屋に一人一室個室を設けてもらっているので、そこを各自の仮住まいとして使って貰うとのことだった。


「以上が今後の流れとなります。

 急かす様で申し訳ありませんが、今からガッズ

 と合流して戦闘訓練に参加してもらう運びと

 なっておりますので、よろしくお願い致しま

 す。」


そう告げて、ガノンが席を立ち、扉の方へと足を運び始める。

それに続いて俺たちもガノンの方へと足を向けて付いていく。


そのまま、ガノンについて行って辿り着いたのは訓練場の様な場所だった、5人の騎士の格好をした人の元へと連れられる。


5人の騎士が俺たちに気づくと綺麗に敬礼し、こちらへ向かって歩いてくる。


「お待ちしておりました、ガノン卿、それと若き異界の勇者殿。」


そう言い放ち軽く頭を下げる筋骨隆々の男


「このお方達が此度、異界よりお出でなさった勇者様達だ、各自優れた職業にステータスを有して居られる、しかし戦闘経験などは持ち合わせておらぬ様なので、ガッズよしっかりと指導してあげなさい。」


「承知いたしました!

 王国騎士隊長ガッズの名に恥じぬよう

 勇者様御一行を鍛え上げて差し上げましょう!」


自信満々に言い放つガッズに満足したガノンは

よろしく頼むよと一言伝えて俺達に一礼し訓練場から出口の方へと向かった。


俺達もガノンへ一礼した後、目の前の騎士へ向き直る。


少し間を置いて、ガッズが喋り始める。


「では、これより戦闘訓練に向かう…が。

 その前に私達の紹介を軽く行う、君達の事は

 ある程度ガノン卿から伺ってはいるが、改めて

 教えてほしい。

 それと、君達の職業に応じて適した指導員を

 付けさせて貰うので、その配置分けもこの場でさせて貰う。」


その言葉に続いてガッズから自己紹介を行い配置分けが行われた。


リンコは王国騎士総隊長ガッズの元で。

レイジは王国騎士防衛部隊総隊長ベンツの元で。

ヒマリは王国騎士医療部隊総隊長レイシスの元で。

ザハールは王国騎士防衛隊第一隊長チリの元で

最後に俺は王国騎士魔導部隊総隊長エレノアの元で訓練を行う事となった。


「これより、一月に渡り各指導員の元適切な戦闘訓練を行うので宜しく頼む!」


そう言い放ちガッズはリンコを連れて一足先に訓練場を抜けた。

それに続く様に各自訓練場を抜けていく。


最終的に俺とエレノアが訓練場に残った。


「改めて、さっきも言ったけど

 私はエレノア、魔導部隊の総隊長を

 やっているわ。

 これから宜しくね、アユム君。」


軽く微笑んで、挨拶をしてくれたエレノア

見た目は20代半ばくらいだろうか、青く透き通る髪に凛とした顔立ちをしている。

とても綺麗な女性だ。


「エレノアさん、改めましてサトウアユム

 と言います、これからしばらく

 よろしくお願いします。」


俺は頭を下げる。


「じゃあ、先ずアユム君は賢者だったね?

 私達みたいに魔法に関する職業を持ってる人は

 それぞれが使える魔法の加護によって

 変わってくるの。

 アユム君はいつくの種類の加護を

 使えるのかしら?」


そう言われて俺は自分のステータスを見て答える。


「そうですね、火、水、風、光、闇の5種類の加護が俺にはあります。」


エレノアは少し驚いた様に目を見開いた。


「あはは、さすが勇者様ね。

 普通はどれだけ優れた魔道士でも3種類の加護

 しかないんだけれども…

 それだけの魔法を扱えるのならどんな

 場面もある程度は対応できそうね。」


「因みにエレノアさんは、

 何種類の加護が使えるんですか?」


「私は水、風、光の3種類よ。

 って言っても水以外の加護はそこまで

 強くないんだけれどね。」


そう言ってエレノアは訓練場の案山子に手をかざし魔法を唱える。


「水弾ッ!!」


その言葉に反応するように掌の魔法陣から物凄い勢いで水の玉が的へと向かう。

破裂音と共に案山子は弾け飛んだ。

俺は呆然とバラバラになった案山子を見ていると

エレノアが話し始める。


「どう?

 今のは水属性の初級魔法、水弾よ。

 私は水属性は詠唱無しで使えるのだけど。

 アユム君は詠唱しないと使えないと思うから

 呪文を覚えるところからね!」


そう言いながら、呪文の書かれた紙を一枚もらう。


「ありがとうございます。

そう言えばエレノアさん、俺の特性に詠唱破棄ってのがあるんですけどこの特性があったら俺もエレノアさんみたいに呪文無しでも魔法が使えるんですかね?」


「えっと…それはどの加護に対しての詠唱破棄かしら?私の場合だと、詠唱破棄:水の加護って特性があるんだけれども。」


「俺のは詠唱破棄とだけ…」


「なるほど、だったら詠唱はいらないわね…」


エレノアは顎に手を当てて少し俯きながら悔しそうにやっぱり勇者って凄いのね…と溢していた。

その様子を見て少し気まずくなった俺は

案山子に手を翳し同じ様に魔法を唱える。


「水弾ッ!」


俺の手からエレノアと同じ様に青い魔法陣が現れて、案山子に向かって水の弾が射出される。

そこそこの速度で射出された水の弾は案山子にぶつかると共に軽い破裂音となって霧散した。


さっき、エレノアの水弾を見ていたのもあってか俺は少し落ち込んだ。


「思ったより威力が低いですね…」


「そんな事ないわ!

 今の威力なら低級の魔物程度には全然通じるし

 自信持って大丈夫よ!

 大体見習いの魔道士が今の威力の水弾を

 打つのに1年くらい掛かるんだから!

 それに無詠唱ってだけでも十分凄いわよ!」


エレノアはそう言いながら俺の背中をポンっと叩いて親指を立てて、微笑んでくれた。

涼しげな見た目からは想像できないくらい快活な人だな…そう思ってるとエレノアは手を軽く打ち話を進める。


「よし!

 じゃあ、魔法の扱い方も簡単にわかった事だし

 近くの平原で実際魔物と戦ってみましょう!

 はい、これ持って!」


そう言いながらエレノアは青色の石が先端に付いている杖を手渡してくれた。

俺はまじまじと杖を持って眺めているとエレノアが説明してくれる。


「それは、見ての通り杖よ

 さっきみたいに自分を媒介にして魔法を使うと

 威力も落ちるし、マナの減りも早いのよ。

 だから魔道士は基本杖を持って戦うのよ!

 あと、今渡したのは私のお下がりだけど

 そこそこ良い杖だから、大事に使ってね。」


「ありがとうございます!

 大事に使わせて貰います!」


よろしい、と満足げに答えながらエレノアはそれじゃあ平原に向かいましょうと出口の方を指差して足を向けた。

俺はエレノアに付いて行くように出口へと向かった。

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