第2話 エピローグ

眩い光を放つ魔法陣に触れてから

目覚めるとそこは、豪華な広間だった。


長い間暗闇に居たからだろうか、久しぶりに感じる何かが存在する場所に俺は安堵する。

呆然と立ち尽くしていると、騎士のような格好をした男性が近づいてくる。


「ようこそ、御いで下さった異界の勇者たちよ!

 此度は我が国ルタを破滅の魔から救うべくどうかお力添え願いたい!」


男が発言すると周囲が騒めきだす。

先ほどまではわからなかったがどうやらこの場で目覚めた物は俺以外に9名程居るらしい。

周囲がざわめく中、豪華な装飾類を身に纏う男が

こちらに向かいゆっくりと歩き出す。


50代位だろうか、綺麗に整えられた白髪に鋭い青色の瞳、顔からは想像出来ないほどに鍛え上げられた身体をしているが、その足取りはやや朧げにもみえる。


男が場を治めるようにパンッと手を打ち、こちらへ向けて喋り始める。


「選ばれし異界の勇者達よ、

 此度は我が王国ルタへと

 来て頂き誠に感謝する!

 我が名はバルト・ルタこの国の王である!

 其方たちは今日をもってこの国を救うべく

 異界より選ばれし者である!

 この世界の事を知らぬが故戸惑うのはわかる。

 だが、時は一刻を争うのだ。

 どうか我が国へ力を貸していただきたい!」


そう言い放ち、深く頭を下げる

それに続くように横にいる豪華な女性、その周りにいる騎士のような者たちや使用人のような者たちが皆一斉に深く頭を下げた。


その様子に益々戸惑う俺たちを他所に一人の少女が俺たちの前へと出る。

見た感じ10代後半くらいだろうか、黒く長い髪に印象的な吊り目だが冷たさは感じず何処か楽しそうな少女が王へ向かい声を上げる。


「私の名は《アカギリンコ》と申します。

 この国の危機を救うべく異界より参りました。

 この世界の事情は存じ上げませんが、是非協力 

 させて頂きます。」


少女は軽く頭を下げる


その言葉と様子を見て続くようにここにいる他の者たちも同じ様に軽く頭を下げるが、皆一様に状況を把握していないのは雰囲気から明確だ。

俺もとりあえず周りに合わせる様に頭を下げた。


「感謝する、異界の勇者たちよ。

 この世界に召喚される異界の勇者には

 特別な能力を与えられておると言い伝えられている。

 よって、これより其方達の力を測らせて貰う!

 そこに居る神官の元へ一人づつ向かいなさい。」


その言葉にうんうんと首を軽く縦に振ってどこか楽しそうな様子でリンコが50代くらいの知的な見た目をした神官と言われた男性の元へと向かう。


「では、よろしくお願いします!」


「こちらこそ、よろしくお願い致しますね。」


そう一言伝えて神官の前の卓上に置いてある一枚のカードをリンコへ手渡し、おっとりとした口調で伝える。


「では、このカードを持って開示と唱えなさい。」


そう言って掌ほどの何も書かれていないカードを神官がリンコに丁寧に渡す。

それを受け取り、少し緊張した様子でリンコが唱える


「開示!」


----------------------------

〈アカギ・リンコ〉

種族: 〈人間族〉

職業:〈剣の勇者〉

Lv:1

マナ:120

攻撃:160

防御:140

魔力:110

俊敏:90


武器:


称号:

〈異界の勇者〉

特性:

〈状態異常無効LV1〉〈即死無効LVMAX〉

〈剣技LV1〉〈盾技LV1〉〈風の加護LV1〉

〈光の加護〉〈アストラ言語LV4〉

スキル:

〈風弾〉〈風の刃〉〈ケア〉


----------------------------


リンコが開示と唱えるとともに目の前のカードに目を向け何かを見ている。

その様子を見た神官は少し間を置いてリンコに話しかける。


「職業は何と書かれておりますか?」


「剣の勇者と…!」


「素晴らしい!」


そのやりとりを聞いて周りからも称賛の声が次第に上がる。

リンコは大変満足そうな様子で笑みを浮かべて一礼し後ろに下がる。


その後も神官が次々に職業を聞いては周りから称賛の声が上がる。

そして俺の番を迎えたので、同じように神官の元へと向かう。


「よろしくお願いします。」


「あぁ、こちらこそよろしく頼むよ」


そして、俺も渡されたカードを片手に開示と唱える。



----------------------------

〈サトウ・アユム〉

種族: 〈人間族〉

職業:〈賢者〉

Lv:1

マナ:260

攻撃:60

防御:70

魔力:160

俊敏:80


武器:


称号:

〈異界の勇者〉

特性:

〈状態異常無効LV1〉〈即死無効LVMAX〉

〈杖技LV1〉〈火の加護LV1〉〈水の加護LV1〉

〈風の加護LV1〉〈光の加護LV1〉

〈闇の加護LV1〉〈詠唱破棄LV1〉

〈アストラ語LV6〉

スキル:

〈火弾〉〈水弾〉〈風弾〉

〈ケア〉〈グラビティ〉〈アナライズ〉


----------------------------


どうやら俺は賢者という職業らしい、

そして俺の名前はサトウアユムと言うのだな…

ここに来るまでの記憶は殆ど無かったので

とりあえず自分の名前がわかった事に俺は安堵する。

名前を見たときに、自分の名前と感じれたので恐らく以前はこの名前だったのだろう。

そんな事を思っていると、みんなと同じ様に神官が俺に話しかける。


「貴方の職業は何と…?」


「賢者と書いてあります…」


職業を伝えると俺もみんなと同じ様に称賛の声に包まれながら元いた場所へと戻る。

最後の判定が終わり、皆が元に位置についた辺りでバルト国王が発言し始めた。


「皆のものよ、実に素晴らしい力であった。

 足早に本題へと入らせてもらう。

 まずは、今のこの国の危機について、

 この大陸について説明するので聞いて欲しい。」


そう言ってこの国の現状と大陸の状況を体感にして2時間程度でつらつらと説明してくれた。


要約すると魔王が復活した事により、魔族が人族に対して侵略を開始した事。


この大陸アストラは100年前に異界より召喚された初代勇者が初代魔王を討伐し魔族の大半を討伐した後人族が統治していたが、10年前に魔王が復活した事により現在大陸の3分の1が魔族の領土となっている事。


再度魔王討伐の為今から3年前に大陸でも随一の腕を誇る三聖と呼ばれる者達を主体とし各国から集まった魔王討伐の為の8万の部隊が魔王城を墜としに向かうが接戦の末全員が戦死した事により、今はどの国も兵力が足りていない事。


そしてここ最近ルタ王国の近くにあった村が各国へ進軍している魔王配下の魔族により占拠されルタ王国への侵攻を行なっている事。


王国兵士が前線で国への侵略を防ぐために防衛をしてはいるものの、ここ一月でかなりの兵士が死にこのままだと、半年も経たぬうちに王国へ魔物や魔族が溢れる事。


ルタ王国は大国の為直ぐに防衛ラインを突破される事はないがすぐ近くまで魔族が迫っている為拠点を潰し領土を取り返し安全圏を作って行かないといけない事。


その為の兵力も今はどの国も自衛の為出せず、王国に眠っていた100年前の禁術を使い俺達をこの世界へ呼んだ事。


最後にやはり異界の勇者のステータスはかなり高いものらしい、王国にいる中級兵士達のステータス平均がLV30程で数値的には平均150に届くか届かないかだとか、三聖と呼ばれたもの達がLV250ほどで平均1000程度だったのに対し俺たちは1LVの時点で平均100を超えているのだ。


また100年前に異界から来た初代勇者はLV300ほどでステータスの一部が1500を超えていたらしい…

史実に残っている程度で正確には幾つだったのかは今でもわからないらしいが…


「以上がこの大陸の現状だ、このままではルタ王国だけでは無く大陸アストラから人族が滅びてしまう。

決して、楽ではない道だ当たり前のように死ぬやも知れぬ。

それでもどうか力を貸していただけないだろうか?

もちろん強制はせん、共に戦う意志のある者だけこの場に留まって欲しい。

それ以外はこの国の知識と職を与えるつもりだ。

中には戦う意志のない物も居るだろう、この世界へ来てもらったのも我々の都合だ…

どちらでも悪い様にはせん、我ながらに勝手だと思うがどうかよろしく頼む。」


そう言い放ち、再度深く頭を下げるが次第に何人かはこの場から離れ近くの使用人と共に別の場所へと向かった。

そして今ここに残っているのは俺含めて5人となった。


俺は、ここに来る前の事を覚えていない。

ただ今の俺にはこの国が危機に陥っている事。

手助けできるだけの力があること、目の前にあるのはこの2点だけだ。


そう心に思い、俺もこの場に残る事に決める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る