第1話 エピローグ

退屈な日常、変わらない毎日。

そんな日々に少しのマンネリ感を感じながらも

毎日それなりに過ごしている俺 〈佐藤 歩夢〉

高校卒業して、工場で勤務してかれこれ5年程度経ち今年でもうすぐ24歳になる。


別に特別高給取りでも無ければ、薄給で生活に困ってるわけでもない。

ある程度欲しいものは手に入るし、休日に友人と集まって年甲斐もなくだらだらと過ごしたり

それなりに幸せを感じながら生きてる。


それに高校の頃から付き合って来た大切な彼女もいる。

今日はその彼女にプロポーズしようと決めた日

ずっと一緒にいても改まってプロポーズするとなると、何となく緊張する。


「今日はやけに風が強いな…」


少しでも気を散らそうと、思った事を意味もなく呟いてみる。

ただ、不安なほどに風が強かったのも事実だ。

そんなどうでもいい事を考えながら駅の改札を抜けて

予約していたレストランへ足早に向かう途中に

俺の人生は突然の終わりを迎える。


最初に声を上げたのは反対側の歩道に居る女性だった。


俺が居る上空を指差し、悲鳴を上げていた。

その声に導かれ俺も上を向いた時、壁のような物が俺に近づいて落ちてきている事に気づく。


俺は状況を理解できず、ただただ迫る壁を見ていた。

ただ一つ、ここで俺の人生は幕を閉じる。

漠然とそれだけは察する事が出来ていた。


ゆっくりと俺に迫る壁、その一瞬が永遠にも感じられた、徐々に周りが騒がしくなっていく。

そして鈍い音と共にとてつもない衝撃が俺を襲う。


その衝撃と共に地面へと打ちのめされるが、俺は生きていた。

辛うじて薄くなっていく意識を保ちながら俺はレストランがあった方向へ這うようにして向かう。


「待っててな、もうすぐ着くから…」


声にもならない声を上げ彼女を想いながら地面を這う。


次第に身体が動かなくなり、視界も暗くなっていく、暗闇の先に見える眩い光とサイレンの音が聞こえて来た


霞んでいく意識の中でその光景を最後に

俺の意識は完全に途絶えた。



意識を失ってからどれくらいの時間が流れただろうか。

何も無い暗闇の中で俺は目が覚めた。


地面も無ければ、空もない。

文字通りここには何もないのだ。


「ここは、どこだ?」


今まで何処に居たのかも全く思い出せない。

ただ一つ何か大切な事があった気がする。

何があったかを思い出せない事に微かな苛つきを覚えながら、その空間を目的もなく進んでいく。


目的もなく進み続けて、どれくらいの時間がたったのだろうか、未だに何もない空間にいる。

景色などなく進んでいるのかどうかも怪しかった。


俺は依然として何も思い出せないことに苛立ちと不安を感じ始めた時目の前に仄暗い明かりがあることに気づきその方向へと進んでいく。


次第に仄暗かった明かりが段々と眩いばかりの光となって何も無い暗闇の中に神秘的な光を放つ魔法陣の様な物が現れる。


吸い寄せられるように、その光に手を翳した途端また、俺の意識は途切れた。

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