直感力(2020/10/06)

私には人生の重大な選択を決める時にだけ聞こえる声がある。

「この選択肢で間違いない」という謎の声が聞こえる。

つまり、その声の言い分に任せていてば、大体上手くいく。

というか、私自身が思ったことに近い選択肢を提案してくる。

そんな声が聞こえるようになったのは、小学生くらいの時からだ。

これは直感なのだろうか。私は直感だと信じるようになった。

そうして、私は今、通販大手会社「かなた」のCEOにまで登り詰めたのだった。

声は必要な人生の選択肢を決める時にだけ聞こえる。

そうやって20年やってきた。

三十代の若手で、CEOになるのはかなりの実力とされる。


正直、その謎の声には助けられている。

これからもその謎の声に従っていこうと思った。


私はこのことを一切、誰にも話したことがない。

寧ろ、話せば嘲笑されるし、頭の可笑しい人にされてしまうからだ。


そんな私はまた人生に置いての選択の時に迫られている。いつものように声を待つ。


「この選択肢で間違いない」


謎の声がしてくる。

謎の声が今回、選択肢を誘導するのは、新規に取引が決まった案件を本当にやるか否かだ。

というのは、部下によると新たな取引先は一度、不渡りを起こしたことがあるらしい。

その不渡りが不透明なものだったようだ。

部下は「あの会社と取引すべきではない」と言っていた。

私は取引をするべきなんじゃないか思えてきた。

きっと、謎の声もそうするべきだと言うだろうと予測した。


「新規の取引先だが、契約を辞めるべきだ」


初めて謎の声と違う選択肢になった。

私は混乱する。謎の声は続けた。


「いづれあの企業は再び、不渡りを起こすだろう」


謎の声に従うべきか、初めて迷った。

謎の声と、私が思う選択肢が違う。私はしばらく考える。

直感に従うべきなのだろう。

これまでを通しても自分が描いた選択肢と、謎の声の選択肢はたまたま一致していただけだ。

そう考えれば、自分の直感を信じるべきとも答えが出る。

私は意を決して、新規の取引先と契約をすることにした。

これが悪い結果になったとしても、自分の選択だと強く思った。


直感力(了)

題材 直 文字数 849 製作時間 27:17

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