とあるダンス部の決意(2020/10/04)

椿つばき高校こうこうは全国有数のダンス校だ。二年前までは連続優勝当たり前の学校だった。

しかし、一年前、準優勝になってしまった。

その原因とは。


二年生でリーダーになったダンス歴十年の清里きよさとみさきが、センターでミスをしたからだった。

清里はメンバーが努力している中、自身のミスで優勝を逃したことを後悔し続けた。

実際、メンバーたちは清里を責めなかった。というのも、失敗した本当の原因を知っていたからだ。

それは清里をよく思わない先輩たちによる犯行。

直前のフォーメーション確認の後、清里の靴にワックスを着けた。

清里は滑りダンスがままならず、ミスをしたのだった。


その雪辱を晴らすべく、椿高校はダンス大会に励んでいた。


「来月から地方予選が始まります。気合い入れて頑張ります」


清里は部員たちの前ではっきりと言った。誰もが気合いを入れている。清里はこの大会で部活が終わる。


「清里先輩。私たちは去年の大会のこと、先輩のせいだと思っていません」

「有り難う。でもね、あの時、私に心の弱さがあった。だから駄目になったんだ」


清里は後輩たちの言葉をみしめつつ、自身の心の弱さを実感した。

清里はもう卒業してしまった先輩たちからの嫌がらせだったことも気付いていた。


「一瞬でも一秒でも「自分には出来ないんじゃないか」って疑った。だから、失敗した。それしか言いようがない」


後輩たちは清里の言葉に強く打たれた。

先輩の嫌がらせを責めることなく、自分の弱さと昇華しょうかし力に変える。

清里の心の強さが見えた気がした。


「だから、その為に出来ることをこれまでやってきたの。弱さを実感しても心にむちを打ってきた。だから、私は大丈夫」


清里の言葉は力強かった。後輩たちは清里の言葉に勇気を貰った。

私たちは出来る。清里は最後に力強く言った。

地方予選まであと一月。


出来ることをやろうと、椿高校のダンス部全員が決意したのだった。


とあるダンス部の決意(了)


題材 ダンス 文字数 768 製作時間 25:04

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