売れない作家(2020/10/03)

堺摩耶さかいまやはネットで小説を公開している。やりはじめた当初は上手く訪問者がいた。

反応を貰えるのが嬉しく、楽しく創作をしていた。毎日、小説を書いてはすぐに投稿していた。


しかし、次第に反応が薄くなった。


摩耶は自分の実力がないからと、落ち込んだ。アクセス数を見てはため息をつく。


そんなある日、SNS上で「誰も見てくれない、もう潮時か」と呟いた。それから創作をぱたりと止めた。


毎日をただ過ごし、悶々とした。

ある時、投稿していたサイトからメッセージが届く。


『いつも作品を見ていました、ぜひ、続きをお待ちしています。いつまでも待ってます』


摩耶は後悔した。閲覧者が少ないからと言って止めるなんて、わがままな気がしてきたのだった。

メッセージを読むと、摩耶は続きを書き始めた。

反応を貰えたら嬉しいが、貰えないから止めるのは違う。


創作が楽しかったのを忘れてしまっていた。

摩耶は続きを書き終えると、推敲と改訂をし、それをサイトにアップロードした。

誰かは読んでくれていた。

自分の想像や、理想は多くの人に読まれたい。

そんな欲にまみれて、作品を愛してくれた人を蔑ろにしてしまった。


摩耶は今一度、初心に帰ろうと思った。

更新しても読者が増えることはなかった。

けれど、少しだけの反応があった。

摩耶はそれでも作品を作り続けようと決意したのだった。


再び、メッセージが届いた。同じ人物からだ。


『更新有り難うございます!ハッピーエンドで良かったです!少しだけ吉良きら(摩耶の作品の主人公)が不憫ふびんに思えました。これからも作品を楽しみにしています!』


読んでくれるだけでも嬉しい上に感想が来るのは最上の喜びだ。

摩耶は感想のメールを噛み締めた。

数少ない読者に向けてこれからも応えて行こう。摩耶は決意した。


摩耶は改めて、小説が上手くなりたいと思った。

それからの摩耶は小説を沢山読み、センスを研いて行った。


すぐに成果は出なかったが、摩耶自身の意識は大分変わったようだ。


こうして、一人の大作家が誕生したとかしないとか。

それはまた別の話。


売れない作家(了)

題材 反 文字数 834 製作時間 27:11


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