婚活アプリ(2020/10/02)

婚活といえば、アプリを使っている人も多いでしょう。

婚活アプリには様々な人がいます。

今日の主人公、清水しみず加代子かよこの場合を話しましょう。

清水は三十代になり、独身であることに焦り始めた。

清水が最初に実行したのは、婚活アプリの「めぐり」というのものだった。

清水は早速、自身のプロフィールを登録した。

結婚の条件としている人物像を登録する。

登録してから一時間が経過したところだった。


ある男性からのメッセージが届いた。


『こんにちは。初めまして、僕はフランス人のフェルナルド。あなた方のプロフィールを見て気に入りました。是非、メッセージのやり取りをしたいです』


フェルナルドと名乗るフランス人からの誘いが来た。

フェルナルドの仕事はデザイナーで収入もいい。

清水はこんなに簡単なものだろうかと思った。

フェルナルドの写真は凛々しく端正な顔立ちで、スタイルも良さそうに見えた。

半信はんしん半疑はんきで、清水はフェルナルドにメッセージを送る。


『フェルナルドさん。初めまして。メッセージ有り難う。ぜひ、やり取りしましょう』


こうして清水とフェルナルドのやり取りが始まった。

清水の趣味は読書だった。文豪と呼ばれる類いの作品が好きでよく読んでいる。

フェルナルドもどうやら好きらしく、意気投合していく。


『ソウセキナツメの「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したの素晴らしいね!』

『そうね。フェルナルドは夏目漱石好きなの?』

『うん』


清水とフェルナルドはこうして、やり取りを続けた。

次第にフェルナルドは清水に好意があるような素振りを見せてくる。


『加代子さん。いつか加代子さんに会ったら伝えたいです』

『え?』

『僕は加代子さんが好きです』

『ちょっと待って』


清水は少しだけフェルナルドが不審に思えた。

メッセージのやり取りをして一月しか経過していない。

そんな中、こんなメッセージだ。

清水は国際ロマンス詐欺というのが頭を過った。


国際ロマンス詐欺とは交流サイトで知り合った海外の相手を言葉巧みにたぶらかし、金銭などを巻き上げることだ。

清水はフェルナルドに限ってそんなことと思った。

しかし、決定的なメッセージが来る。


『母親が病気で。実は治療費が払えない。お金を貸してくれないだろうか。お金はしっかり返すよ』


清水はこのメッセージが嘘じゃないかと勘繰り始める。

けれど、フェルナルドの話が本当だとしたらと考えてしまった。

結局、清水はフェルナルドにお金を貸すことにした。


『解りました。じゃあ、送金します。どこに送金すればいいですか?』


清水のメッセージからフェルナルドは送金先を知らせてきたと同時に、返済方法も聞いてきた。

清水はフェルナルドが嘘じゃない気がしてきた。


しかし、そんな希望は無惨にも裂かれた。


フェルナルドからの連絡はパタリと途絶えた。

メッセージを送っても返答がない。清水は裏切られたと思い、フェルナルドに送金したのが間違いだったと思った。

警察に通報も考えたが、これまでのやり取りがそれをにぶらせた。

清水は良い勉強になったと諦めることにした。


そんな風に思っていたある日、職場の受付から内線の連絡が入る。


『事務室の清水さん。フェルナルドというフランス人がお客様として来ています。お知り合いでしょうか?』


フェルナルドが職場に来ている。清水は動揺した。

フェルナルドが会いに来ているのだろう。


『ええ。そうですが、彼は何と言っていますか?』

『あ、お金をやっと返せるので来ましたと』

『そ、そうですか。今からそちらに向かいます!』


清水ははやる気持ちを抑えつつ、内線を切った。

清水はフェルナルドに一刻も早く会いたい為に階段を降りるのだった。


婚活アプリ(了)


題材 アプリ 文字数 製作時間 37:11

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