ある恋の話(2020/09/28)


美奈子みなこは俺との約束を破った。


美奈子は俺とずっと一緒にいようと約束した。

けれど、新しい恋人の元に行ってしまった。

それからの俺の毎日は脱け殻になった。

何をするにもうまくいかない。

俺にとっての美奈子は酸素だったのだろう。


俺を心配した同僚の高橋たかはしが合コンに誘ってきた。


「合コン行きません?」

「合コンか。いいかもな。行くよ」


俺は高橋に誘われて合コンに行った。

合コンは俺と高橋、高橋の知り合いの茅野かやので男性三人。

女性三人の三対三だった。

自己紹介をし、それぞれ話し始めた。

茅野は合コンに行く前に付き合っていた彼女の話を始めた。


「彼女が嫉妬深くて大変で。だから別れたんだよねぇ」

「そうなの~大変ですね」


女性陣は茅野を同情していた。

茅野はイケメンで女性の扱いに長けていた。

俺は合コンに来たのが間違いだったかもしれない。


「ゆうちゃん、なんで?」


声が聞こえた。茅野が驚いている。

ゆうちゃんとは茅野か。俺たちは声の方を見た。美奈子だ。

茅野の言っていた彼女とは美奈子だったのか。


「あの、これは」

「ゆうちゃん、何で?修司?」


美奈子は動揺していた。俺は半年ぶりに会った美奈子に涙が出そうになる。


「美奈子……」

「修司。ごめん。ゆうちゃんと話させて」

「ゆうちゃん、私が煩わしくなった?」

「重いんだよね。美奈子って」


俺は茅野にイラつく。美奈子は真剣に茅野を思っていた。

それを踏みにじった茅野が許せなかった。

俺は茅野を殴った。


「美奈子の気持ちを弄ぶな!」

「お前に関係ないだろうが!」


茅野と俺は取っ組み合いになる。

それを高橋が止めた。高橋は茅野を宥めた。

茅野はさっさと店を出ていった。会計は高橋が持つことになり、女性陣も帰った。


高橋は俺と美奈子だけ残し、先に帰った。


俺と美奈子で店を出て、帰る。

美奈子は何も喋らず隣を歩くだけだ。


「ごめんね、修司。約束破ったよね。ずっと一緒にいるって言ったのに」


美奈子は約束を覚えていた。俺は涙を流して泣いた。


ある恋の話(了)


題材 約束 文字数 799 製作時間 24:19


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る