コンシェルジュ(2020/09/27)

高級ホテルに就職して10年が経つ。

今では私はチーフコンシェルジュになった。

主に受付をし、部屋のベッドメイク、予約の受付から管理などやることは多数ある。

お客様の要望に加え、安全、そして個人情報も守らなくてはいけない。

常連客に高崎譲という人がいる。高崎様は「レッグタウン」という通販会社のCEOであり、年収は10億。

国内の富豪中の富豪だ。

高崎様の結婚の有無や恋人の存在は不明らしい。

というのも高崎様の情報コントロールは完璧だからだ。

私は高崎様の担当を任されている。

勿論のこと、高崎様がどんな人かもある程度知っている。

私は高崎様の部屋からのコールで向かう。

高崎様の部屋のベルを鳴らす。


白石しらいしです」

「入ってくれ」

「如何なさいましたか?」

「僕のパートナーのふりをしてくれないか?」


全くの無関係の私にそれを頼むのが驚きだ。


「ん?」

「話せば長くなるんだけど」


高崎様はことの顛末てんまつを話した。

高崎様の子を妊娠したから、認知しろ。と迫る人がいたらしい。

特定の恋人がいないから、それをやってほしいらしい。


「大丈夫ですか?」

「そうなるよね。白石さんは今、未婚で恋人いないですか?」

「いや、別にふりなので構いませんよ」

「本当に?」


高崎様は明るい声で言った。高崎様の喜ぶ姿は清々しかった。


「じゃあ、詳細を」


こうして私は高崎様の恋人のふりをすることになった。

認知を迫る女性の名前は清子きよこという名前らしい。

後日、清子に私と高崎様は落ち合った。

高崎様ははっきりと「この白石さんが僕の正真正銘のパートナーだ」とはっきりと言った。

清子は意外とあっさりと信じた。


呆気なさにも驚いたが、本当にこれでいいのだろうか。

清子がいなくなった後、高崎様はもじもじとしていた。

何だかその姿が可愛く思えてきた。


「あの、白石さんが嫌でなれければ、本当のパートナーになってくれますか?」

「え?」

「だ、駄目ですよね?」

「良い方向で考えておきます」


私は笑顔で答えた。


コンシェルジュ(了)


題材 ホテル 文字数 799 製作時間 36:04



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