初恋成就(2020/09/17)

よく初恋は実らないと言う。

緑山みどりやま梨花りかは高校生三年にして、担任の深山みやまたけるに恋をした。

梨花には初恋だ。深山は新米教師で、梨花のクラスの副担の23歳の独身。

担当教科は国語。きっかけは些細なことだ。

進路を決めるに辺り、受験する大学に悩んでいた梨花の背中を押したのが深山だった。

梨花の志望する大学は、今の学力で厳しかった。担任の矢神やがみ先生は「厳しいから諦めろ」と説教された。

廊下で落ち込んでいたところ、深山に励まされた。そこからだ。

梨花はこの初恋を終わらすべきか、続けるべきかを悩んでいた。

梨花は友達の佐藤さとうみきに相談する。


「先生が好きなんだけど、どう思う?」

「深山のこと?」

「うん」

「あれか。外見いいからライバル多いよ」


梨花は諦めようと思えてきた。

深山はイケメンの部類に入る。女子生徒の評判も上々だ。


「だよね」


梨花はふと、一年前に学校の前で体調不良だった人を思い出した。

その人は大事な採用試験があって、辛そうだった。

梨花はその人を学校の保健室に連れていったのを覚えている。

顔は覚えていない、名前も知らない。その人はどうなったのだろう。


「好きな人が学校にいるって」


幹の言葉で、梨花は動きを止めた。

深山の好きな人は一体誰なのだろうか。

同じ教師の可能性が高い。梨花は深山の所へ行こうと思った。


梨花は職員室に向かう。その途中で、深山が話しかけてきた。


「どうした?」

「いや、ちょっと聞きたいことが」

「ん?」


深山は梨花の顔を覗き込む。梨花は少しだけ恥ずかしそうにする。


「先生はどんな人が好きですか?」

「困っている人がいたら助けてくれる人だよ」

「そうですか」


梨花は絶対に自分じゃないと確信した。深山は梨花を見て笑う。


「僕はここの教師の採用試験受けるとき、緊張すぎてね。その時に助けてくれた子がいて。その子が励ましてくれたんだ」

「え?」


深山は梨花を見て微笑んだ。梨花はあまりにも突然過ぎて言葉を失う。


どうやら、梨花の初恋は実りそうだ。


初恋成就(了)

題材 初恋 文字数800 製作時間 24:57

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