シンギュラリティー(2020/09/14)


あと、25年でシンギュラリティーが来る。

シンギュラリティーとは技術的ぎじゅつてき特異点とくいてんという意味だ。

「人類に代わって文明の進歩の主役」になる。

つまりは人工知能が人間を超すらしい。俺はテレビを見て鼻で笑う。


「っふ。あり得ん」


俺の隣でテレビを見ていたしおりが腕を引っ張ってきた。


「でもね、●マゾンのお勧め商品とか、あなたが使ってる●iriだって人工知能だよ」

「それは知ってる。けど、人類が人工知能作ったなら、人類が負けることってあるのか」

「………そうね。SFの世界では人類を超越した人工知能が牛耳るなんていうけどね。あり得そうだとは思わない?」


栞は熱心に俺に話しかける。

前からだが、栞はやけに人工知能に対して熱弁を振る舞う。何かあるのか。

そういえば、前に栞は事故にあったことがあると言った。それと関係あるのだろうか。


「あり得そうだけどなぁ」

「………何か。恐いけれど、人類は人工知能を制御できる術を持つべきだと思うのよ」

「ああ。そうだな」

「じゃないと、私は私で居られなくなる」

「は?」


栞は不安げな表情だった。かつての事故で何かがあったのだろうか。


「実は前に、事故にあったと話したよね?交通事故」

「ああ。言ってたな」

「私の両腕は義腕なの。私の脳からの指令で、動かせるようになっているんだ」


俺は信じられなかった。自然の動きをする両腕に何も疑問を感じなかったからだ。

俺は栞の顔を見る。

栞の心配はその両腕に支配されてしまうかもしれないということか。


「で、それに支配されちゃうかもしれないってこと?」

「………うん」

「ないだろう。それは」

「でもさ、AI同士で人類に解らない単語で喋ったとかさ」


栞は深刻そうな顔だった。確かに自分の腕じゃないものが着いている。

それは不安かもしれない。でも、今こうして普通に過ごせているから大丈夫だろう。


「ねぇ。もしも、私の腕が暴走したら、ぶち壊してくれないかな?」

「………え?」

「ぶち壊して、お願い」

「解ったよ」


栞は俺の腕に抱きついた。


シンギュラリティー(了)

題材 シンギュラリティー 文字数 816 製作時間 13:57



13:57

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