オリオンの人(2020/09/13)


朝目が覚めると、知らない女が俺に股がっていた。俺は女を睨む。


「お前、誰だよ」

「覚えていないのか。私はスコルプよ」


女は俺を馬鹿にしたように見る。

頭の可笑しい女が股がっている時点で色々やばい。俺は自分が寝ぼけていると思い、二度寝する。


「あ、ちょっと」

「うるせー」

「起きなさい!」


スコルプと名乗る女は俺の顔を叩く。俺は女の手を掴むと、抑えこんだ。スコルプは目を見開く。


「あなたはオリオン座のオリオンの生まれ変わりよ」

「警察呼ぶぞ」


俺はスマホを取り出す。救いだったのは、俺が独り暮らしだから家族がいない。

女を連れ込んでいたら、とやかく言われる。スコルプは俺の手を掴み、スマホを取り上げた。


「私はあなたを落とさないといけないのよ」

「は?誰がお前みたいな不審者女相手するか。出ていけよ」


俺はスコルプを追い出そうと腕を掴む。けれど、スコルプは俺を逆に背負い投げした。


「あなたのことは知ってるわ。弓道の選手で女性を手込めに掛けては捨てていると。その根性、叩き直してやるわ」

「上等じゃねぇか。糞女。やってみろや」


こうして、俺とスコルプの奇妙な生活が始まった。俺は女好きだが、スコルプに魅力を感じなかった。

スコルプは俺の世話を甲斐かい甲斐がいしくやり続けた。

最初は煩わしく思えたが次第に家に帰ると、スコルプがいることが嬉しくなっていた。

ある時、スコルプの元気がなかった。


「どうした?」

「明日には帰るわ」

「は?」

「あなたは私に落ちない」


俺はスコルプのことを全く知らない。俺はスコルプを知りたいと思えてきた。


「まだ一緒にいてくれって言ったらいてくれるか?」

「は?」

「俺はお前が好きだ」


俺はスコルプを強く抱き締めた。


ギリシャ神話で、オリオン座のオリオンは狩りと弓が得意で調子こいていたらしい。

見かねた女神ヘーラが、蠍を使ってオリオンを殺した。そして、オリオンはオリオン座に。

だとしたら、俺はスコルプに惹かれる運命だったのかもしれない。


オリオンの人(了)

題材 星座 文字数 800 製作時間25:06

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