デマ拡散(2020/09/12)

「緑色のシャツの女が犯人だ」


先日起きたビルオーナー殺害事件、それを目撃していたと匿名のアカウントがネットの掲示板に書き込む。

緑色のシャツの女が犯人だとの根拠はどこだ。

けれども、それを盲信した人々はネットにそれを投稿。


『緑色のシャツの女が犯人』


その書き込みは瞬く間に広がる。確実に冤罪か解らないが、証拠は薄い。

俺が緑色のシャツの女を犯人と書かないことに、友人の北島きたじまがけちをつけてきた。


「宏保。目撃者がいるんだから、こいつで決まりだろう」

「証拠もないだろう。ネットの書き込みだけで」

「目撃者なんだよ、ネットの書き込みは。だから、当然」

「本当にそうか。俺はそう思わない。俺はこれを拡散しない」

「ヒーロー気取りかよ。勝手にしろ」


北島は面白くなさそうにした。証拠がネットの書き込みだけでは可笑しいと思う。

俺はその後もそれらを無視しし続けた。

しばらくしてから、ビルオーナーの殺人の真犯人が捕まった。それは緑色のシャツの女ではなかった。


やはりデマだった。

そのデマにより、緑色のシャツ女の張本人は社会的に厳しくなった。

緑色のシャツの女はデマを流した人々を裁判に掛けた。

幸いなのか、解らないが友人の北島は対象にならなかったらしい。俺は北島に注意する。


「もう金輪際、デマ流すなよ」

「俺は社会に役立っていることをやってるだろう?だから俺は間違っていない」


北島は俺に聞く耳を持たなかった。

北島はネットの掲示板を鵜呑みにして情報を拡散し続けた。


ある時だった。北島が白石ガーデンで合った万引き事件の犯人だという情報が流れた。

北島は混乱する。「俺はやっていない」と連呼し、混乱していた。

俺は北島の肩を掴み、言った。


「こんな状態で言うのも酷なんだが。お前は裏通りのない情報を拡散させていただろう?それが今の状況だ。お前の自業自得だ。解るか?」

「ああ。そうだよな。迂闊だった」

「これに懲りて、正しい情報を拡散しろよ」


北島は泣きそうになりながら、首を縦に降った。


デマ拡散(了)

題材 緑 文字数813 製作時間 38:46

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