ハンカチ(2020/08/23)
「心当たりない?私のブランドのハンカチが無くなっているの」
クラスメイトの三橋が皆の前で、私を問いただした。
学校で窃盗事件が起きた。
私は即座に疑われた。私の母親の
私はやっていない。目をそらさずに言う。
「私はやっていない」
「そう?体育のとき、一人だけ保健室行ったの
「っ。私はやっていないから」
疑いの視線が私、一転に集中する。
私は唇を噛み締めた。クラスの他の生徒が言う。
「三橋さんに嘘つかないであなたしかいない」
「あり得ない。親が親なら子も子だよね」
クラスは集中砲火状態だ。
私は何度も、そういう疑いを掛けられたことがある。うんざりだ。
「やっていないって言ってるんだから、そうなんじゃないの?」
この声でクラスの全員がそちらを向く。
三橋が楠木に近づく。
「何でそう思うの?」
「だってやっていないから。それに井崎さん一人だけが保健室行ってるときにそれってタイミング良すぎ」
「……っふん。他にいないじゃないっ!」
「ねぇ。本当に無くなったの?」
楠木は三橋を見つめた。他のクラスメイトは二人のやり取りを見つめる。
「このカバンに。カバンになかったから」
「へぇ。そう。それ以外に探したの?」
「探していない」
「なのに犯人扱いしているの?」
楠木の問いただしたに、クラスの一同は息を飲む。
三橋は何も言えなくなる。
「確かな証拠もないのに犯人扱いするのは良くないよ」
「……っ。そうね。私が悪かったわ」
「謝るのは私じゃなくて、井崎さんにでしょう?」
楠木の威圧感に三橋はたじたじになり、私の方を向く。
「ごめんなさい」
「解ってくれればそれでいいの」
クラスメイトの皆もそれぞれに私に謝罪する。しばらくすると、教室の戸が開く。
「ここ、三の一組の三橋さんの教室?ハンカチ届けに来ました」
他のクラスメイトがやってきて、ハンカチを差し出した。
それは三橋が無くしたブランドのハンカチだった。
ハンカチ(了)
題材 心 製作時間 20:13 文字数 797
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