私は好きなアーティストがいる。そのアーティストの名前は結城（ゆうき）良（りょう）。

結城は伸びやかな歌声に、心情豊かな歌詞、綺麗なメロディーを届けてくれる。

それは私の癒しでもあり、エネルギーの源だ。

新曲が出れば予約して買い、雑誌もチェックしている。

今日は結城のラジオで新曲の発表だった。

ラジオのチャンネルを合わせた。

『今日も始まりました。結城良のラジオナイト。最後まで宜しくお願いします！』

私は結城の明るい声にほっこりした。

ラジオは結城の近況報告から、新曲の制作裏話などが続いた。

『今回の新曲は中々、伝わらない想いに気付いてほしい気持ちを歌っています。皆さんは恋、していますか？』

結城は少しだけ切ない声色だった。その続きの言葉に私は驚いた。

『実はこの新曲を持って引退するかもしれません』

世界が真っ暗になる気がした。

あまりの衝撃で私はすぐ様、番組にメッセージを送る。

【私は結城君の曲に励まされているし、本当に元気をもらっています。死にたくなったとき、結城君の歌を聞き、もう一度頑張ってみようと思えたのです。引退して欲しくないのが本音ですが、結城くんが歌を止めないことを願っています】

恐らく沢山のファンが結城にメッセージを送っているだろう。

私はその思いが届いてほしいと思った。

結城はリスナーからのメッセージを読んだのか、心なしか少しだけ元気な感じだった。

『皆さん。お励ましのメッセージを有り難うございます。実は売上が悪く、契約が難しいと言われたんです。ここでお話するのは場違いかもしれませんが。ずっと応援してくれる方にだけはお伝えしたくて。僕自身はずっと歌い続けたいです。だから、仮にこれが最後になっても、僕は別の場所で活躍することを決意しました』

私は結城の決意に嬉しくなった。考え直してくれた。

『僕の歌がファンの支えになって、躓きそうになった僕をファンが支えてくれた。これからもファンのみんなとそうでありたいと思います』

アーティスト(了)

題材 CD 製作時間 27:19 文字数 799

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい