第6章 君と一緒に見る月は、とても綺麗です

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「夜はやっぱりまだ冷えるね」



上着を一枚持って出るんだった…



少しだけ後悔する僕の肩が、暖かい腕にフワッと包まれる。


「相原…くん…?」

「こうしてたら寒くないでしょ?」


驚いて見上げた僕に、相原くんが笑いかける。


「うん、暖かい…」



…けど、この状態超恥かしい…



「あ、あのさ、人に見られたら…」



なんてことは、きっと相葉ちゃんは気にもしてないんだろうな…



その証拠に、僕の背中から回した相原くんの腕は、ギュウギュウと僕を締め付けてきて…


「苦しいよ…」


僕が言うまで緩むことはなくて…


「もう少しだけこうしててもいい?」


なんて聞いてくる。


僕はそれに”NO”と言える筈もなくて、相原くんの腕の中で小さく頷いた。





それから暫くの間そうしていて…


「そろそろ帰ろうか?」


そう言って僕の肩を抱いていた手がゆっくり解かれた。


僕の背中が急に寒くなる。


さっきまであんなに恥ずかしかったのに、今はもうあの温もりが恋しくて仕方ない。


「ねぇ、ちょっとだけ遠回りして帰らない?」

「いいけど、寒いでしょ?」

「少し、ね…?」


僕がそう言うと、目の前で相原くん着ていたトレーナを脱いで、僕の頭にスポンと被せた。



あ、相原くんの匂いがする…



「風邪引くといけないから、コレ着といて?」

「相原くんは…?」

「俺は大丈夫。暑がりだしさ」


そう言って相原くんは笑った。



噓ばっかり…

相原くんだってホントは寒いくせに…



僕は相原くんの手をそっと握った。


「どうしたの?」

「ふふ、こうしてれば少しは暖かいでしょ?」

「ホントだ。暖かいね」

「あ、ねぇ見て? 今日は満月だよ」


僕が見上げると、相原くんが僕の隣で同じように夜空を見上げた。


「ホントだ。綺麗だね」

「うん、綺麗」



きっと二人で見てるから、だよね…



「あ、満月ってことはさ、俺、今夜は狼に変身するかもよ?」


突然耳元で言われて、僕の顔がまるで火が付いたように熱くなる。


「も、もぉ、バカ…。知らない…」


でもそんな一言が嬉しくて…


僕は、ちょっとだけ背伸びをして相原くんのほっぺにチュッとキスをすると、手を引いて歩き始めた。


「早く帰ろ?」



月が雲に隠れてしまわないうちに…

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