第4章 僕達のラストレシピ
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「もし…もしもだよ? 人生最後の日が来る、ってなったら智樹は何が食べたい?」
缶ビールを傾けながら、和人が僕の方を見る。
「何って…、そんなの分かんねぇよ…」
大体、人生最後の日…なんて考えたこともないんだから…
「和人はあるの? その、“人生最後”って日に食べたい物」
僕に聞くくらいだから、和人にはちゃんとあるんだろうな…って、そう思って聞いたのに、和人ってば…
「ない!」
気持ちいい程、きっぱりと言い切った。
「えっ、何それ…」
「いやさ、考えてもご覧なさいよ。人生最後なんてさ、考えられないでしょ?」
うんうん、それは僕も同感だ。
「そりゃさ、人はいつか死ぬんだけどさ、そん時の状況…っつーか、そん時に隣にいる人にもよんじゃないかな…ってさ…」
和人の言う通りかもしれない。
人生最後の日…その最後の瞬間には、やっぱり愛する人との思い出が詰まった物を食べたい。
だとしたら僕は…
「僕、和人を食べたい!」
「は?」
あれ…?
僕、何かおかしなこと言った?
ううん…、そんなことない。
だって僕は、人生最後の瞬間まで、和人とキスしていたいもん。
「くくく、じゃあ俺も“智樹”ってことにしといてやる。但し、今だけな?」
「え〜、何それ…」
「だって分かんないでしょ? そん時に誰と一緒にいるか、なんてさ…。だから、そん時まで一緒にいられたら、俺は智樹を食ってやる」
もお…、ホントに天邪鬼なんだから…
でもいっか…
そう言って貰えただけで僕は…
「ずっと一緒にいようね?」
人生最後の日を迎える、その時までずーっと。
それで、僕のこと美味しく食べてね♡
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