第12話 魔術と呪術
「今度は私が打ち明ける番ね。私、未来のことを知っているの。お母様は十一歳の誕生日に病死して父王は新たな王妃を
伏し目になり、言葉を探り始める。
「確証がまだないのですけれど、おそらく……王妃様は病死ではありません」
ドゥから言い出したのは意外だった。暗殺するのはドゥもしくは近い者でもおかしくはないという可能性は残っていたから――
「王妃様は私の母上の姉です。公国の者……連合公国民全員の希望です。王妃様の死は、私たちを絶望させるために仕組まれたものだと思います……新たな王妃はどなたでしょうか」
「サバト」
「虚報の魔女サバト……王様の死も、お嬢様の幽閉もおそらくサバトの
あの時は聖痕が存在していなかったから――
「呪術は魔術を打ち消せるのよね?」
「はい。呪術は念の力、魔術は崇拝の力。強い想いに願いが勝ることはありません」
「連合公国の方はあなたの他にも城内に居るのかしら? 口外の制約を受けていても、記憶は操作されていないのよね。思考に対する制約は無いという解釈で良いのかしら」
「私の他にも居ます。お察しの通り、思考に対する制約はありません」
「そう……私は『読心』能力を持っているのだけど、活用できるかしら。試しに何か考えてみて」
(お嬢様の耳たぶをかじりたい)
「耳たぶをかじりたいのね、いいわよ……断れないのだから、あまり変なことは考えないでよね」
んっ……身を委ねることには慣れていくしかないわね……
「連合公国出身の方々を隷属させていくことは可能かしら」
耳元で息を吹き掛けるように囁く――
「命じてくだされば可能です。公国出身で私より上の地位だった者は居ませんので
「ピアスを付けなくても契約を結べるのね」
「ピアスで結ぶのは専属奴隷契約です。専属でなければ隷属する者に首輪を付けるだけで結べます。首輪を外せばいつでも契約解消可能です。売買や贈り物にする奴隷はこちらです」
「あなたに命じるわ、連合公国出身者を隷属させてきなさい。はぅっ……手段は問わないわ……そろそろ止めてくれないかしら、くすぐったいの」
主人の要望には応じなければならない――名残惜しそうに耳の中に入れた舌をしまう。
「かしこまりました……」
ようやく落ち着いて話を進められる。
「城内に奴隷は居ないと言っていたけれど、奴隷文化は公国固有のものかしら。私のお母様も知っている文化なの?」
「公国固有ではありません。王国は魔術が盛んなので、魔術よりも強力な呪術が敬遠されているだけです。王妃様は成人するまで公国で過ごされていましたので奴隷文化はご存知です。公爵令嬢は奴隷を贈り物として受け取る機会が多いので……おそらく保有もされていたと思います」
そうなのね、世話係の奴隷は何体居ても良いわね。
「猶予が無いから、早速動き始めて。私はお母様に話をしてくるわ」
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