第9話 希少素材

 五日後――

(お嬢様喜んでくれるかなぁ! 世界に一つだけのピアス)


 未だに乳首に触れるだけで痛みが走るしうずく。

 タオルや服に釘がよく引っ掛かって、その度に激痛に襲われうずくまって耐える日々を送っているわ。

 こんな状況から早く解放されたくて、ピアスを装着するときを待ち望んでいた――


「お嬢様! ようやくピアスが完成しました」

 遂に解放されるわ! ――??

「変わった色をしてるのね」

「アンオブタニウムです。希少で架空の物質だと言われている伝説の金属です」

 待って! 伝説の素材をこんな物に使って良いの!?

「……そう。希少ってどのくらい?」

(なんて説明すればいいんだろぉ……正直に言って良いのかなぁ)

「この世に存在しません。お嬢様の名前が入っている素材なので頑張りました」


 時間を遡れたのだから、存在しないものを持っていても驚きはしない。

「すごく嬉しい、大切にするわ。早速付けてくれるかしら」


 釘と挿し替えられたリングにボールがめられると同時に、首元にずしっと重みを感じる何かが装着された感触が――


「お嬢様!」

 慌てて首元に手をやるドゥ。しかし、手の感触を感じない――

「首に違和感を感じるのだけど……」

 手で首元を触ると、金属のような何かが付いている。


(何故お嬢様に奴隷の首輪が付くんだよぉ……)


 ――要件を満たしたから奴隷契約が成立したのね。この世に存在しない素材で作られたピアスの所有者はドゥだもの。

「ピアス似合ってるかしら?」


(あわわぁ、とんでもないことをしてしまったよぉ……)


「あなたがくれたピアス、とても気に入ってるのだけど。可愛いって言って欲しいな」


 ドゥの心の声が全く聞こえない――

「私があなたの奴隷になったから、もう私の望みは叶えてもらえないのかしら……」

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