第111話 「大狩猟祭」開催



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お知らせ


8/16(金)22:00より、サーバーを止めない形でメンテナンス及びアップデートを行いました。



・イベント「大狩猟祭」開催!

 ・イベント「大狩猟祭」が開催されます。モンスターを倒してポイントを獲得し、冒険者ギルドにてアイテムと交換しましょう。今後の冒険、生産、交渉、イベントなどへの準備になるはずです。

 ・開催日程:8/17(土)00:00〜9/1(日)23:59

 ・「大狩猟祭」が開催されている期間中は時間加速設定が2倍になります。より長く冒険を楽しみましょう。



・ログアウト時の仕様変更

 ・クローズドβテスト時に発生していた、他プレイヤーやNPC、オブジェクトと重なった位置でログインした場合に予測不能な動きになる不具合の原因が解明されたため修正しました。

 ・上記の不具合の修正により、ログアウト時に【Fictive Faerie】のマップ上にアバターを残すか選べるようになりました。この問題が解決された事で、ログアウト時に残ったアバターの殺害、装備品の奪取を行えるように仕様を変更しました。

 ・メニュー画面からシステム»設定を開き、「ログアウト時のアバター」から変更を行えます。




・PvPモードの仕様変更

 ・多くのプレイヤーからPvPモードのon、offの切り替え機能が不要だという声が上がりましたので、PvPを均一onで固定します。

 ・街中や1部のマップに存在する戦闘不可エリアの変更はありません。

 ・PvPモードの仕様変更により、NPCの衛兵の警戒態勢、巡回経路などに変更が生じました。プレイヤー同士の抗争を発見した場合、増援を呼んで介入してきます。


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 アズマと墓地の探索をした翌日、ログインするとシステムメッセージが届いていた。数日前に来たのと同じように、メンテナンスとアップデートのお知らせのようだ。


「おはよ、うさ丸」


 昨日は寝起きからエニグマに連れ出され、墓地の探索が終わるまでクランハウスに戻ってくることがなかったから1日、ゲーム内では4日間うさ丸を放置してしまっていた。

 寂しかったのか、撫でる手に体を擦り寄せてくる。やはりうさ丸は癒しである。




「さて、と。今回もなんか色々あるなぁ」


 お知らせを確認していく。



 まずイベントに関して。

 前々から告知されていたが、ようやく開催といったところだ。イベントについての説明はアズマが冒険者ギルドで聞いてきて、それを教えてもらったので大体は分かっているし、なんならお知らせにも書いてある。

 モンスターを倒して、ポイントを集める。そのポイントをアイテムに交換する。単純な形式だ。


 開催期間は2週間くらい。その間は常に時間加速設定が2倍になる。つまり、ログインしていれば現実世界での1時間が、ゲーム内では2時間になる。

 だがゲーム内の1日の時間を2倍にして現実の1日が経過してもゲーム内では相変わらず4日経つだけなのか、元々現実の1日分の時間で4日経過するのを8日に変更したのかは不明だ。

 似ているが結構違く、前者であれば元々ゲーム内の1日が現実時間で換算すると6時間だったのが12時間になる。後者ならゲーム内の1日は変わらず6時間だが、現実世界の3時間でゲーム内で1日が経過する。


 頭がこんがらがってくる。この話はもうやめよう。


 イベントの開催期間はかなり長いようだし、報酬だけ確認して急ぐ必要がないと判断したらゆっくりやろう。

 最悪、終了日間際にエニグマやアズマに手伝ってもらえばいい。特にエニグマは夏休みの課題を写させてあげた貸しがある。





 次に、仕様変更に関して。

 ログアウトとPvPについての仕様が変更されたようだ。



 先にログアウト時の仕様変更について見てみよう。

 説明文を読む限りでは、これまでログアウトする時に体はこの世界に残っていたのを、残すかどうか決められるようだ。

 設定のヘルプによれば、残さない場合はログイン時に最終ログアウト地点付近をAIが確認し、オブジェクトなどと被ってなければその位置でログインする。

 ログインが困難であると判断された場合はその街の復活地点あるいはリスポーンポイントに設定されている座標へ移動するらしい。


 そしてお知らせの内容を読むと、残ったアバターの殺害などが行えるようになったらしい。これまでそうだったと思っていたが、奇跡的に狙われなかった訳ではなく、そういう仕様なだけだったようだ。

 しかしそうなると、アバターを残しておく意義を感じられない気がする。装備を奪われて殺されるなんて、こっちにとっては損失でしかない。

 ログアウト時のアバターは残さないようにしよう。




 次はPvPについてだ。

 これまでPvPをしないというプレイヤーには攻撃できないように設定されていたらしいが、全プレイヤーを攻撃できるように設定が変更された。

 PKに遭遇した事はないが、どの層から声が上がったのだろうか。

 それと、街の門などに立っている衛兵の行動が変化したようだ。衛兵の目につく範囲でPvPを行っていると鎮圧のために攻撃してくるとの事。これは自己防衛以外にPvPをやるつもりがない僕にとっては、あまり関係の無い話ではある。




「こんなもんかなー」


 ログアウト時の設定は変更したが、PvPは強制で変更されて選択できなくなったし、これ以上僕が変更するような部分はない。



 あとは、イベントのポイント交換か。どんなアイテムが交換できるのか、冒険者ギルドは街ごとにあるが全て同じ内容なのかは気になる。

 だが別に、自分の足でわざわざ見に行く必要がある訳では無い。僕よりも先に、確認しに行っている人がクラン内にも何人か居るだろう。例えばエニグマとか。


 フレンド欄を開くと、やはり全員ログインしている。

 とりあえずいつもの、エニグマとアズマに聞いてみよう。




 返事を待っている間にうさ丸を連れて錬金ラボへ移動し、昨日考えていたけど実行できなかった『分解』についての色々を、忘れない内に試してみる。



 星水から調べてみると、性質はポーション効果上昇、水、星の3つ。

 前と同じように瓶ごと割ったりスプレーで蒸発、冷却の3パターンで試したが、結果は前と似たような感じで、性質が水から粉末や氷に変化しただけだ。


 排出されたカードは性質と同じもの。

 水、氷、粉末に関しては星水からじゃなくても取れるので今は要らないが、「ポーション効果上昇」と「星」のカードは初めて手に入れた。特に「ポーション効果上昇」は使えそうなので是非とも欲しいところだ。




《『エニグマ』からフレンドメッセージが届いています》


 おっと、さすがにじっくり調べているほど返信の時間が開くことはなかったか。錬金術は後回しにして、メッセージを優先しよう。


【エニグマ:本当に色々だな。ポーションとか武器とか、称号とか。このイベント限定っぽいのは称号と1部の武具、素材とかだな】

【エニグマ:マレアとサスティク、ルグレのは内容は同じだったぞ】


 イベント限定アイテムもあるのか。ここでしか手に入らないとなると、優先はそっちかな。使えるかは別としても、限定というなら欲しくなる。

 街ごとの報酬については、最初の街とそこから何個か進んだ街で同じ。街によって交換できるアイテムが変わることはないと考えてよさそうだ。



 ついでにポイントの加算方式についても聞いてみよう。


【リン:ポイントの効率とかは?】


【エニグマ:やっぱ強いモンスターのが付与されるポイントも多いな。ルグレの兎は1ポイントだったが、サスティクのダンジョンにいるモンスターは15ポイントとかで効率が良さそうだ】


 つまり、僕が苦戦せずにそれなりのペースで狩れて、ポイントが少な過ぎないモンスターが出る場所を選ぶのが無難だろう。

 街ごとによって報酬が違うかもというのは無いだろうと先の話で分かったし、街に縛られる必要もない。


【エニグマ:パーティーを組んでるとポイントは経験値と同じ分配の仕方だな。1回の戦闘でどれだけ敵のHPを削ったかとか、バフデバフを与えたかとかが総合的に評価されて分配される】


 じゃあパーティーだけ組んでメンバーに全投げ、みたいな事はできないようになっているのか。会敵した瞬間に敵を消し飛ばすブランとは、ポイントを稼ぐ目的ではパーティーを組めないかな。



【リン:ありがと。忙しい時に送ってたらごめん】


【エニグマ:周回の区切りで休憩してる最中だったから問題ねぇよ】

【エニグマ:それより毒煙玉の追加注文していいか?】


【リン:数と納期によるかな。何個?いつまで?】


【エニグマ:作れるだけ。遅くてもイベント終了三日前程度】


【リン:えぇ…】


 多い…というか数を指定されてないから難しい。

 時間加速設定が2倍になったから時間的な問題はそこまでないけど、ある材料で作れるだけ作れとは面倒な依頼をしてくれる。


【リン:頑張るけどさ…】


 残念なことに、材料はかなりある。前々からエニグマから貰っていた煙玉の材料であるケムリの実も、毒ポーションの材料である毒草も。

 期限はかなり長いし、材料の数に支障はない。唯一気にするべきなのは、僕の精神状態だろうか。錬金術を手伝ってくれるプレイヤーでもNPCでもいいから、1人で延々とやっているのは心が死にそうだ。


【エニグマ:んじゃよろしく頼む】



 フレンド欄を閉じてアイテムメニューを開く。机は3つもあるし、経年劣化はなさそうだから素材は出しておこう。


 カスタムによって水は無限にあるので、毒ポーションも『調薬』ではなく『合成』で作製できる。

 錬金釜を設置し、水道から水を出したままにして放置する。



 うさ丸と遊んでいたら水が溜まったので、毒草を100本と水入り瓶を10本、ついでに先程手に入れた「ポーション効果上昇」のカードを1枚放り込んで混ぜる。

 いつもと変わらずに光、完成した毒ポーションに触れるとログが流れる。



《『合成』に成功しました》

《『猛毒ポーション+10×10』を作製しました》



「んぇ?」


 なんかできた。いや、カードを入れた事で変化はあると思っていたが、猛毒か。

 「毒ポーション+10×10」という表記は「毒ポーション+10」が10個という意味だ。合成で毒ポーションを作るといつもこうなるのだが、毎回毎回分かりにくい。

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