第33話 黒の剣士
ガシャッ。
ボコッ。
ズササーッ。
ワァァアア――――――――ッ!!
ティアラさんの圧勝でした。
ま、あの空島を単身で攻略していた実力者ですから、当然といえば当然です。
デート中にかっこいい姿も見せつけられて。
ティアラさん、したり顔です。
バァンッ!
空から、黒い鎧に身を包んだ剣士さんが降ってきました。
誰かな?
会場は、静まり返ります――。
「なんだ、新手の挑戦者か?」
黒い剣士さん。
巨大な剣を背中から外すと。
「オレが勝ったら、婚約の話はナシだ」
わわっ。
「受けて立とう」
ワァァアア――――――――ッ!!
大歓声です。
ティアラさん、お兄ちゃんに向けて腕を大きく振っています。
次の瞬間。
「その余裕が命取りになるぞ」
クワァンッ!
金属の重なり合う音が響いて。
ティアラさんの剣が、遠くへ飛ばされました。
「くっ、なんの!」
後ろにステップしながら光の窓を開き、魔法で剣を引き戻します。
黒の剣士さん、手練れのようです。
「いまだ光の窓は卒業できんのか。どれ、教示してやろう」
大剣を背に戻して。
懐から、火球を次々と飛ばしはじめます。
あれ、セコくない?
「まさか貴様、精霊さまと直接対話できるのか!?」
ティアラさんも人間離れした身動きで火球を避けていますが、攻めに転じる余裕はありません。そこへ重ねて。
「時間の無駄だったな。トドメだ」
ああっ、背中から大剣がひとりでに飛び出して、ティアラさんの進行方向から、ハエ叩きみたくバチィィ――ンッ!!
「ぐっふぅぁっ!!」
とんでもない勢いで壁に激突しました。
ちょっと、これ、やばいかも……。
土ぼこりが、辺りに立ち込めています。
ティノちゃん、治療おねがいできる?
「いえ、大丈夫みたいですよ?」
え? あ、ほんとだ。
客席からジャンプして、ティアラさんに駆け寄る剣士が。
あれは、お兄ちゃんです。
魔法は覚えないとか言っていましたが。
しれっと回復魔法をかけています。
すると無線イヤホンから。
『ちがうな。ティノーの技術でポンと授けられても身につかんと言っただけだ。コツさえつかめば自力でどうとでもなる』
防具が半損したティアラさんを、壁ぎわで休ませて。
剣を片手に、ホームラン予告のポーズ。
「さあ、デートを邪魔してくれたお礼だ。あんたの相手は俺ってことでいいんだな?」
「ああ、よかろう」
ワァァアア――――――――ッ!!
お兄ちゃん、勝てるの?
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